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3-2・合流場所へ

 ホワイトアウトが晴れて、森の中に戻る。さっきは薄暗い夕暮れ時だったけど、今は明るい。現実世界で2~3分経過させて戻った場合は、異世界は真夜中になってただろう。だから、ちゃんと朝になるように時間調整をしてから戻ってきた。僕でも、そのくらいの発想はできる。


 先生が亡くなった場所に戻り、先生の剣を回収して背中に装備してベルトで固定する。放置した革の盾を持ち、大きいナイフを腰ベルトの隙間に挟む。武器だけで重くなってきたので、小さい斧は棄てていくことにした。食料袋は無かった。多分、モンスターに奪われたのだろう。

 だけど、地図だけは残っていた。拾って開いて眺めたら、一点が点滅している。僕が歩くと、地図の地形も動いた。


「この点滅・・・僕の現在地・・・かな?」


 スマホの地図アプリでも現在地は表示されるんだから特に驚かない。ただ、異世界にもGPSが有るとは思わなかった。地図の表面を操作して、近くに小屋っぽいマークを発見する。


「ここ・・・かな?」


 地図表面をピンチインしたら、比較的近くに町みたいな場所がある。小屋の位置は「町外れ」と言うには離れすぎている。なんで近くに町が在るのに、孤立した小屋を溜まり場にしているのだろう?


「まぁ・・・皆に会って聞けば解るかな?」


 地図を片手に“現在地”の動く方向を確認しながら小屋を目指す。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 進行方向は枝葉だらけ。道なんて無い。置いていくつもりだった小さい斧を回収して、枝葉を落としながら小屋を目指す。



 時計が無いからよく解らないんだけど、体感では30分以上は歩いたかな?道無き道を進んだから、距離的には1㎞くらいしか歩けてないかも。

 小川に直面して道が開けた。歩きにくいなりに枝葉を落とさずに済む川沿いを歩く。やがて、見窄らしい小屋が見えてきた。


「あれ・・・だよね」


 変な場所ばかり歩いて足が痛いけど、「やっと知ってる人に会える」と思ったら元気が出て来た。

 先生から「6人と合流済み」と聞いた時は、「智人トモ櫻花おーちゃんがいたら良いな」と思ったけど、この際、今の大変さを共有できるなら、誰でも良い。智人トモ櫻花おーちゃんなら尚更良い。櫻花おーちゃんが居てくれたら、僕、今より頑張れる気がする。

 心を弾ませながら、小走りで小屋に向かう。


「・・・ん?」 


 小屋は半壊していた。こんな住みにくい場所を溜まり場にしている?近付いて、恐る恐る中を覗き込む。


「・・・なんで?」 


 中は荒れていて誰も居ない。鞘から抜かれた剣が落ちている。嫌な予感しかしない。小屋の裏側に回ってみたら、血まみれの誰かが剣を握ったまま倒れている。


「ねぇっ!」


 隣のクラスの鰐淵くんだ。もう息をしていない。少し離れたところには同じクラスの今川くんも倒れている。2人とも、力石先生の時と同じように、白い靄に包まれて徐々に消滅をしていく。


「嘘でしょ?今川くんっ!!」


 先生との合流から今まで・・・リターンで現実世界を経由している僕の時間は半日くらいしか経っていない。だけど、異世界ではほぼ1日が経過している。その間、先生の帰りを待ち続けた今川くん達は、モンスターの襲撃を受けてしまったんだ。

 

「もう・・・イヤだ」


 昂揚の反動でショックが大きい。もう無理。もう動けない。こんなの無理ゲーだ。昨日まで平々凡々と高校生活を送ってきた僕が、こんな殺伐とした異世界で生きていけるわけがない。


「うわぁぁぁんっっ!!」


 なんで、こんなことになっちゃったの?なんで、僕が、こんな死と隣り合わせの世界にいるの?ワケが解らない。

 今まで我慢していた物が全部吐き出されて、大声を上げて泣く。



 何分くらい経過したんだろう?

 もの凄く静かだ。

 僕は、仰向けになって空を眺めていた。

 でも、空が晴れていることなんてどうでも良い。


 心が死ぬってのは、こんな感じなのかな?何の感情も沸かない。


 葉が擦れて揺れる音がした。動物っぽい鳴き声が聞こえる。足音が近付いてきた。

 ああ・・・きっと、モンスターが来たんだ。今川くん達の命を奪ったモンスターと同じヤツかな?もう、どうでも良い。逃げる気力も無い。力石先生や今川くんと同じゴールで良い。

 多数決なんて僕には関係無い。他の皆が、現実世界に戻れるように頑張ってくれれば良い。もし多数決で「戻らない」が過半数だったとしても、皆が決めたなら受け入れる。


「生きているのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「その見慣れぬ服装・・・秘境ヒキョー者か?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「怪我をして動けないのか?」


 ボケッとしていた僕の脳が、徐々に“音”ではなく“声”と認識する。

 人の声?モンスターじゃない?


 起き上がって振り返る。黒い鎧で身を包んだ銀髪の男性が、鎧を着けた馬の上から僕を見下ろしている。

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