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2-4・現実世界

 様子を見ていた先生が、正面に手を翳す。


富醒フセイ発動!」


 しかし、先生の特殊能力は発動しない。


「なるほど、そういうことか。・・・富醒返却!」


 途端に、僕が発動させていた1mくらいの光穴が消える。


「富醒発動!」


 続けて先生が叫んだら、先生の前に直径5mの光穴が発生した。


「だいたい解った」

「あの・・・どういうことですか?」

「オマエの富醒は、文字通り他人の富醒を借りるんだ。

 貸した者は、貸している間は富醒を使えない。

 そして、返却を求めればオマエの意思に関係無く返してもらえる」

「ああ・・なるほど、そりゃそうですよね」

「発動精度を試してみたい。

 先ずは、俺と一緒に光穴に入ってくれ」


 先生が何をしたいのか解らない。だけど、僕の為に何かを試すつもりみたいだから、頷いて応じる。


「俺のリターンで発生する光穴に入れるのは、1度の発動で1回きり。

 入る資格があるのは、俺と同時に入る者のみ。

 俺が入った時点で光穴は閉じられるから、俺の後から続く者は入れない

 ここまで、理解できたか?」

「・・・はい。『いっせーのー』で入らなきゃってことですね」


 つまり、先生と一緒に光穴の面積を通過できる人数だけが入れるってことだ。


「先に言っておくが、この先にあるのはショッキングな事実だ。

 『驚くな』とは言わないが、できる限り俯瞰で見て、冷静を保て」

「わ、わかりました」

「いくぞ!」

「はいっ!」


 先生と足並みを乱さないようにして光穴に踏み込む。



 次の瞬間、僕は通い慣れた教室にいた。だけどそこは見慣れない光景が広がっている。


「ひぃぃっっ!これって??」


 驚くに決まってる。だって・・・通い慣れた教室に巨大隕石が突っ込んでいて、クラスメイト達は、瓦礫の下敷きになったり、僕と同じように廊下側の壁に転がっていて、誰も動いていない。生きてるの?死んでるの?

 目の錯覚かな?全体に青い靄がかかっているように見える。


 僕は廊下側の壁を背凭れにして座っていた。真田さんが僕の上に覆い被さっている。心臓の鼓動を感じる。穏やかな表情で眠っているように見える。


「真田さんっ!起きてっ!!」


 声を掛けるけど真田さんは起きてくれない。

 思い出してきた。英語の補習中に、教室に隕石が突っ込んできて、隣の席の真田さんと絡みながら吹っ飛ばされたんだ。


「今まで見ていたのは・・・夢?」


 モーソーワールドでゴブリンに襲われたのは夢だった?隕石の影響で皆が意識を失って、僕が最初に目覚めた?


「半分は正解。夢と言われれば夢かもしれない。

 だが、モーソーワールドは、この隕石事故に巻き込まれた全員が、

 事実として体験している夢なんだ」


 誰も動いていない中で、1人だけ動いている人がいた。力石先生だ。寄って来て、しゃがんで、僕を見詰める。


「この光景を覚えておけ。オマエには、次は自力で此処に来てもらう。

 オマエがレンタルでリターンを発動させても同じ場所に戻ってこられるか?

 それで、オマエの富醒の真価が解る」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「立てるか?」

「・・・はい」


 申し訳ないと思いながら真田さんを退かして立ち上がる。


「見ろ」

「・・・・・・・・・・・・」


 促されて倒れている人を見る。遠藤くんだ。真田さんとは違って血の引いた顔色をしている。


「光の声は説明した。転移をした者は現実世界では仮死状態になる。

 そして、モーソーワールドで死んだ者は、死ぬ直前の仮死状態になる」

「遠藤くんは異世界で死んで、現実世界では瀕死になってるってことですか?」

「遠藤だけではない。二宮と橋本も瀕死になっている」

「ヤバいじゃないですかっ!救急車を呼ばないとっ!」


 荒れた教室内では、僕のスマホがどこに在るのか解らない。無事な人を探して連絡してらう為に、教室から出ようとする。


「待て!この青い靄の中から出た時点で時間が動き出す!」

「・・・はぁ?」


 先生の声が尋常ではないので、驚いて立ち止まった。


「青い靄はリターンが維持される有効範囲。俺達の教室と両隣の教室。

 リターン発動中は時間が停止をしている。

 靄の外に出た時点でモーソーワールドに戻れなくなり、且つ、時間が動き出す。

 それが、俺の富醒のルールなんだ」

「どういうことですか?」

「誰か1人でも青い靄の外に出た時点で、止まっている時間が動きはじめる。

 仮死が本当の死に向かう。瀕死の者なら尚更だ。

 多数決制によるリアルワールドへの帰還が難しくなる」

「えっ!?えっ!?」

「口で説明するより、実体験をした方が理解できるだろう。

 一度、モーソーワールドに戻るぞ」


 先生がフィンガースナップをした途端に、周囲がホワイトアウトをする。



 僕達は、さっきまでいた森の中に立っていた。異世界に戻ってきたみたい。

リターン

使用者:力石倫太郎

 現実世界への入口を開いて、モーソーワールドと現実世界を行き来できる。熟練度が上がれば入口が大きくなり通過できる人数が増える。ただし、現実世界に戻って、モーソーワールドの干渉区域(青い靄)の外に出ると、モーソーワールドに入れなくなる。現実世界で過ごす時間の50~60倍がモーソーワールドで経過をする(現実世界で1分を過ごせば、約1時間後のモーソーワールドに帰還する)。

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