1-4・当日~隕石
1限目の数学が終わって休み時間になり、智人が寄って来た。
「プリント騒ぎ・・・大変だったな」
「うん・・・まぁ・・・
でも、見せても僕が損するわけじゃないから、どっちでも良かったんだけどね」
「良くないよ。あ~ゆ~奴等には、毅然と対応しないと」
「『きぜん』・・・ねぇ」
智人が遠藤くん達に毅然としているとは思えない。・・・てか、遠藤くん達に絡まれると智人の方がビビっている。智人は良いヤツなんだけど口先ばっかりになる癖はチョット苦手。
「なぁ、尊人?
昨日、ノーロピアンワールド・アクションから変なメッセージ来なかった?」
質問を喰らって焦ってしまう。僕のところに【トモロー被害者の会】の勧誘が来たことがバレてる?
「あ、あの・・・変なメッセージって?」
「なんか、人名をたくさん記入しろってメッセージ」
智人のアンチが湧いてるのとは別件みたいだ。
「???・・・なにそれ?」
「よく解らん。冗談半分で適当に解答したんだけどさ・・・。
授業中に謎のアドレスからメールが来て、
開いたら『条件達成』『1時間後に実行します』って書いてあったんだ。
なんかのイベントかな?」
「さぁ・・・僕に聞かれても・・・」
「メールが来た1時間後だと対応できないよ」
「・・・てか、放課後になるまで対応できないね。
メールが来た1時間後っていつ?」
「今から30分後。」
「諦めるしか無いね・・・何が有るのか解んないけど」
世間一般の高校生は春休み中。メッセージの送り主は、智人がログインできるのを前提にして、イベント参加かなにかの勧誘をしたのだろうか?智人は「早退しようかな?」とか「仮病使って保健室に隠れてスマホでログインしようかな」とか言って諦めきれない感じだったけど、説得して諦めてもらった。さすがに、学校よりゲーム優先なんてヤバいよ。
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2限目は英語の補習をしている。理系、文系、どちらに進んだとしても英語は付いて回る。逃げて済む教科じゃないってのは解るんだけど、中学の時から英語は苦手だ。ついでに化学もチョット苦手。僕の頭はアルファベットに対応していないのだろうか?
先程までは、メガネの吉見くんが教科書の朗読をしていた。吉見陽輔くんは運動はチョット苦手だけど、試験の成績はトップクラス。もの凄く流暢に英文の朗読を聴かせてくれた。
段落が終わったところで力石先生が「はいそこまで」と言って、次の段落からは、由井さんが朗読をする。由井優衣さんはツインテールのチビッコ。櫻花ちゃん&真田さんと並ぶクラス内の容姿トップ3の一角、且つ、真田さんと同じ理由で人気トップ3から除外されてる子。幼児体型はクラストップ。真田さんと2人で「ローティーンコンビ」と呼ばれたり、ツインテールと相まって「小坊」と呼ばれることもある。さすがに小学生には見えないけどね。
あっ!これは2人に対する僕の評価じゃなくて、クラスの男子の評価ね。まあ、智人に同意を求められると「うん」って言っちゃうから、僕も同罪だけどさ。
(ヤバい・・・眠くなってきた)
吉見くんの流暢すぎて安心して聴ける朗読の次に、由井さん甘えた感じのアニメ声での朗読。このコンボはキツい。「僕は英語が苦手」という要素まで加わって脳が麻痺してきた。
「Mr. Tokugawa
What did Kelly buy? 」
先生が、由井さんの朗読を打ち切って、智人に英語で質問をする。唐突に子守歌タイムから質問タイムに変わったので、睡魔に誘われていた僕は現実世界に戻って来た。
「えっ・・・えっ・・・あの・・・」
名指しをされた智人は、立ち上がったまま解答をできずに赤面している。どうしたんだろう?今の質問は僕でも聞き取れた。朗読していた場所を把握していれば、直ぐに答えられるはずだ。
「授業中だぞ。ボケッとしているな」
「はい・・・すみません」
智人は赤面したまま椅子に座る。今のは危なかった。先生の質問があと1分遅くて、名指しされるのが僕だったら、智人と同じ状況になっていたかもしれない。
だけど、どうしたんだろ?僕みたく昼寝タイムになっていた?それとも、授業以外のことを考えていた?智人が休み時間に「妙なメッセージに解答した」って言ってたことを思い出す。
「そろそろ指定の時間だっけ?
ゲームのことが気になって授業が上の空になってたのかな?」
黒板の上に掛けてある時計を見たら、ちょうど休み時間の30分後だった。
「うむわぁっ!なんだありゃ!?こっちに落ちてくるぞっ!」
窓際席の遠藤くんが叫んだので、クラスメイト達が一斉に窓の外を見る。
斜め上空から岩が落ちてくる。隕石だろうか?
「・・・ヤバくねーか?」
藤原くんが呟いた。クラス中の皆が「隕石がピンポイントでこの教室に直撃するわけが無い」と思っているが、方向的にはモロに直撃コースだ。
「全員、外に逃げろっっ!」
力石先生が号令をする!
だけど、逃げろったって、どう逃げれば良いのか解らない。火事と地震の避難訓練はしたことあるけど、隕石の避難訓練なんて未経験だ。しかもここは2階。廊下に出て窓から飛び出して「避難完了」ってわけにはいかない。
何人かは逃げる体勢に成ったけど、ほぼ全ての人が状況を飲み込めずに、動けないまま窓の外を見ている。
男女に関係無く悲鳴が上がる。隣の教室(追試中)からも悲鳴が聞こえてきた。
一瞬の出来事なんだろうけど、その瞬間だけは妙にゆっくりに感じられた。
隕石が窓いっぱいに迫る!窓側の席の人達が弾き飛ばされる!隣の席(窓側)の真田さんが飛んできた!慌てて受け止めたけど、諸共に弾き飛ばされる!
そこでスローモーションタイムは終わって、目の前が真っ暗になった。
1-1~1-4で登場したうちの徳川智人(友達)、織田櫻花(片想い)、真田早璃(隣の席)、藤原史弥(番長)、吉見陽輔(秀才)、由井優衣(小坊扱い)は、比較的メインに近い状態で、主人公と絡む予定です。