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私が見たのは死後の世界ですか?心の絆が導いた、時空を超えた臨死体験

※ この作品は動画でご覧になれます

https://youtu.be/Zk2Lkkl3rfk

「イヌマケドンTV」で検索

おじいちゃんが亡くなった時、パパはとってもひどいことを言った。


「あのジジイ、ついにくたばったか」って。


なんだか、長い間我慢してたことを急に全部ぶつけたみたいな感じだった。


おじいちゃんってすごく大変な時代を生きてきたんだって。ママがそう言ってた。

だからなのか、うちの中でもずっと厳しくて、いつもパパは怒られてた。

パパは気が弱いから何も言えない。

ママも横でじっと見てるだけ。


そう、あの時のことは今でも忘れられない。

パパがほんのちょっと口答えしたとき、おじいちゃんが怒鳴ったあの一言。


「お前みたいに何にも知らないバカ者には、ちゃんと教えてやらなきゃダメなんだ!」


すごく怖い顔だった。


そんなおじいちゃんも去年の冬に体調を崩して入院。

眠ったまま、もう会えなくなっちゃったの……。


でも、パパはおじいちゃんのことを、まだ許せないみたい。

ママが「お参りくらい一緒にいこうよ」って言っても、パパは背中を向けたまま。

「いいんだよ、あんなガンコジジイの墓なんて」って吐き捨てるみたいに言ってた。


ところで、パパにとっては怖いおじいちゃんだったけど、私に対してはちょっと違ってた。

私にはすごく優しかった。


「ねえ、おじいちゃん、パパのこと、あんまりいじめないでよ」


私がそう言うと、おじいちゃんは一瞬きょとんとして、すぐにちょっと照れくさそうな顔に変わる。

そして、耳を真っ赤にして苦笑いしながら、ぽつりという。


「ごめん、ごめん、ちょっとじいさん、言いすぎたな」


その時の顔、なんだか嬉しそうだった。


「風香は、じいさんの先生だからな」


真顔でそんなこと言われたときは、もうびっくり。

どうして大人のおじいちゃんが子供の私を先生だなんて思うのか、よくわからなかった。


「じゃあ、ちゃんとパパに謝ってきてね」


そう言うと、おじいちゃんの耳はまた赤くなって、「はいはい」なんて言いながら、笑って自分の部屋に逃げていっちゃう。

照れると耳が真っ赤になるの可愛くて、私、そんなおじいちゃんのこと大好きだった。


ーーー


ある日の放課後、学校の帰り道、一人で空を見ながら歩いてた。

ちょっとしたことで友達と喧嘩しちゃって、今日はなんとなく一人で帰りたかった。


三時を過ぎたばかりなのに、空の色はなんだか夕方っぽくて、まだ明るい空に、ぼんやりと白い月が浮かんでた。

そういえば、おじいちゃんが言ってたっけ。

どこまで歩いても月はいつも同じ場所にいるんだぞって。


本当にその通りだった。

歩いても歩いても、月はちゃんとそこにいて、ずっと私のことを見てくれてるみたいだった。

おじいちゃんも子供の頃、寂しくなると、月を見て元気を出したんだって言ってた。


パパは「おじいちゃんの話は迷信ばかりだ」って馬鹿にしてたけど、私は違うと思う。

だって、月を見てると本当に元気が出てくるんだもん。



でも気がついたら、わたし、知らない道を歩いてた。

え、いつのまに?って思ったときには、そこはおじいちゃんのお墓がある霊園の森の入り口だった。

月を見ながら歩いてたら、いつのまにかこんな遠いところまで来ちゃったんだ。

ちょっと不安に思ったけど、「困ったら月を見れば帰れる」そう、おじいちゃんが言ってたのを思い出した。


それで、空を見上げたけど、お月様がいない。

空のどこを見ても月が見えなかった。

お家がどっちかもわからなくなって、急に怖くなった。

胸がギュってなって、足が動かなくなって、涙が出そうになった。

私はただ、空を見上げるしかなかった。



その時、霊園の奥から一人の男の子がこっちへ歩いてきた。

すごく険しい顔で、私を睨んでる。


「何してんだ、こんなとこで? ここはオレの領地だ、勝手に入ってくるな」


年は私と同じくらいに見えたけど、怖い顔をしていて、目はギラッとしてた。

ここはオレの領地だって、まるで秘密基地ごっこしてるみたいに言い張ってくる。

私はちょっとだけ勇気を出して聞いてみた。


「ねえ、お墓が好きなの?」

「お墓? 違う! ここはお墓なんかじゃない! ここはオレの森だ!」

「オレの森って、ここはみんなの森のはずだよ」


私がそう言い返すと、その子はちょっと驚いた顔をした。

たぶん、私が言い返してくると思ってなかったんだと思う。

そのまま、私たちは言い合いになった。


「とにかく帰れ!」


帰れと言われると帰りたくなくなる。

家に帰れなくて怖くなっていたことも忘れて、負けずに言い返した。


「嫌だ、おじいちゃんのお墓参りをしたいの」

「ここはお墓じゃないって言ってるだろう!」


男の子の目は真剣で、怒っているというより、何かを必死に止めようとしているみたいだった。

でもそんなの関係ない。


「いいから、そこ、どいてよ」


私は一歩前に出た


「どくもんか!」

「どうして、おじいちゃんのお墓参りに行くだけなのに、こんなに怒られなきゃいけないの?」


理由を聞いたら、その子の顔がまた険しくなった。


「お墓なんてない! ここから先はな、お前みたいな、弱っちい女が通れる道じゃないんだ!」


カチンと来た。


「弱っちい? 自分だって子供だし、弱っちいじゃない! お化けが怖いから、お墓に一人で行けないんでしょう?」


男の子のほっぺのあたりがピクって動いた。

私の言ったことが当たっちゃったのか、それとも別の理由で怒ったのかはよくわからない。

なんだかすごく悔しそうに見えた。


「違う、お前は何もわかってない、ここから先は地獄なんだ!」

「地獄?」

「そうだ、大人が子供みたいにわがまま言って、奪い合って、戦争だってしてるんだぞ! めちゃくちゃな世界だ! どうだ、怖いだろ?」


確かに男の子の言ってることは怖かった。

でも、私は思った。

だからって逃げるのはもっと嫌だ。


「ふーん、それがどうしたの?」

「お、お前、これだけ聞いても怖くないのか?」


その声は、さっきより少しだけ弱くなっていた。

目の奥が少し揺れてるように見えた。


「怖くないもん。そういう人がいたら、ちゃんと教えてあげればいいだけでしょ?」

「バカか! 教えたって誰も聞かないんだぞ、地獄なんだぞ、食うか食われるか、誰も他人の言葉なんて気にしないんだ!」


顔がカーッと熱くなったのを感じた。


「はあ? バカっていう方がバカなんだからね! そっちの方が頭が悪いよ! バカみたいな顔して!」

「な、なんだと、もういっぺん言ってみろ!」


今度は男の子が顔を真っ赤にして怒鳴り返してきた。


「何度でも言ってあげる、あなたのように何にも知らない人には、ちゃんと教えてあげないと、ダーメーなーの! わかった?」


私の口から、そんな言葉が出るなんて……。

これは亡くなったおじいちゃんがパパに言ってた言葉……。


「お前、子供のくせに、大人みたいなこと言うんだな……」

「おじいちゃんが言ってたんだよ」

「ちっ、その年寄りたちが地獄を作ったというのに!」


男の子の目の奥に怒りと何か悲しみみたいなものが混じって見えた。


「そんなこと言わないで! おじいちゃんは違うんだから!」


私は叫ぶように言った。

大きく息を吸い込んで、胸の中にあったものを全部外に出した。

気がついたら、私の手はその子を思いっきり突き飛ばしてた。


「うわっ!」


そんなに強く押したつもりはなかったけど、男の子の体は勢いよく吹っ飛んで、すぐ後ろにあった川へドボンと落ちた。

水しぶきが上がって、男の子は流されていってしまった。


「あ! さっきまで川なんてなかったのに! 助けなきゃ!」


私は無我夢中に走り出していた。


けれど、流されてるというのに、男の子は私の方を見て、怒鳴る。


「来るな! 早く帰れ! 戻れなくなるぞ!」

「そんなこと言われたって、溺れてる人を助けずに、このまま帰れるわけないでしょ?」


私は川沿いを走って、少し先の土手の上に回り込んだ。

斜面を転びそうになりながら、腹ばいになって腕を目いっぱい伸ばした。


「早く、捕まって!」


男の子は私の手をしっかり握ってきた。

その手はとっても力強かった。

ようやく土手まで引き上げた時、男の子はばつが悪そうに、でも、ちゃんと私の目を見ていった。


「お前、強いんだな……」


私はハーッと一息ついて、にっこりと笑いながら言った。


「うん、おじいちゃんのおかげだよ」


男の子は黙ったまま、ぽつんと空を見上げた。


そのとき、ふと足元を見ると、私たちのすぐ近くに丸くて小さな石ころが落ちているのが見えた。

私は、なんとなくそれを拾って、ちょっとふざけてみたくなった。


「ねえ、月の石をあげる」


男の子は目を丸くしていった。


「はぁ? 月の石? どう見てもただの石ころだ……」

「違うもん、この前、月に行ってもらってきたの。ほんとだよ」

「お前、月から来たのか?」


そう言いながら、男の子はその石をじーっと見つめた。

さっきまであんなにツンとしてたのに、顔がちょっと優しくなってた。


「月の石はね、お守りになるんだよ。命を守ってくれるんだから」


男の子は驚いた顔をして、でも、すぐに照れくさそうに笑って、その石をそっとズボンのポケットにしまった。

それを見て、なんだかちょっと、からかいたくなった。


「ねえ、ずっと一人でこんなところにいて、本当はすっごく寂しかったんでしょ?」


男の子は何も言わなかったけど、耳がパッと赤くなった。


「あ、照れてる!」


おじいちゃんも照れると耳が赤くなってたな。

なーんてことを思い出した。


すると、男の子は突然、おかしなことを言い出した。


「オレ、戦争の時代に生まれるのが怖いんだ……」

「戦争? 今は令和だよ? とっくの昔に戦争は終わったんだよ」

「戦争が終わった? 令和? 今、外の世界は昭和10年だろ?」


私が説明すると、男の子は急に真剣な顔になって私の目を見た。


「おまえ、未来を知ってるのか? じゃあ、オレ、行ってみるよ!」

「えっ、どこに?」


その時、男の子の体が急に光り出して、とても強い風が吹いた。

私の体は風に飛ばされて、そのまま土手をコロコロと転がり落ちていった。


ーーー


すっごく長い坂を、ずーっと転がっていったみたいな気がした。

そのあと、背中に冷たい土の感触がじんわり伝わってきて、私はそのまま仰向けになって、ぽかんと空を見上げた。

まぶしい太陽が、まっすぐ私の顔を照らしていた。


目を細めたそのとき、そこは病院のベッドの上だった。

視界の隅にパパとママの顔が見えた。

私が目を開けたのを見て、二人は安心したように、ふっと力が抜けた顔をした。


話を聞くと、私は事故に遭ったらしい。

通学路で自転車に乗ってた男の子とぶつかって、倒れた時に頭を打っちゃったんだって。


「月を見ながら歩いてたら、いつの間にか不思議な場所にいたの……」


そうつぶやいたら、パパが眉をしかめていった。


「前から自転車が来てるのも気づかずに、月を見て歩いてたのか? まったく……、爺さんの変な話に感化されたんだな……」


その時、病室のドアがコンコンとなって、自転車に乗ってた男の子と、その子のお母さんが入ってきた。

そして、二人はペコリと深く頭を下げた。


「申し訳ありません、うちの子がよそ見して自転車を飛ばしてしまって……」

「いえいえ、うちの風香もボーっとしてたんです。意識も戻りましたし、怪我もなかったですから……」


しばらくして、二人が病室を出て行くのを見送りながら、ふと夢の中で出会ったあの男の子のことを思い出した。

もしかして、夢の中の男の子が私をはねた男の子?

でも顔が違う。

夢の子は、まるで、毎日外で遊び回ってるみたいに日焼けしていたし、そういえば、あの目、あの言い方、どこかおじいちゃんに似てたな……。

強がりだけど、優しくて、照れ屋で……。


「夢を見たの、同い年くらいの男の子が川のそばで、早く帰れって叫んでた……。それで私、目が覚めたんだ……」


そう話すと、ママがクスッと笑って、ちょっとふざけたように言った。


「へぇ、まるで三途の川みたいね。その男の子のおかげで戻ってこられたのかもね」


私は首を横に振って、ちゃんと説明した。


「違うよ、助けたのは私の方なんだもん。それに、いろんなことを教えてあげたんだから……」

「ずいぶん楽しい夢を見たのね」


パパとママは顔を見合わせて、困ったような感じで笑っていた。

その時、パパがぽつりとつぶやいた。


「結局、爺さんのお守りも役に立たなかったってことか……」

「おじいちゃんのお守り?」


何のことだろうと思って視線を落とすと、ベッドの横の小さなテーブルに置かれた見覚えのあるものに気づいた。

ポツンとあの石が、そこにあった。


「あれ、この石……?」


私がそうつぶやくと、ママが優しく言った。


「病院に運ばれた時も、ずっとその石を握ってたのよ。おじいちゃんにもらったお守りなんだってね」


するとパパが、その石をそっと手に取り、しばらくじっと見つめた後、ふっと笑った。


「オレが子供の頃に爺さんにもらった石だよ。月の石だなんて胡散臭いこと言ってさ。

どうせ近所で拾った石ころだろうけど、捨てるのもなんだし、テレビの横に飾っておいたんだ……。風香に渡したんだな……」


「でも、そのお守りのおかげで、風香の命が助かったのかもしれないじゃない?」


パパはちょっとだけ照れくさそうに、でも静かに頷いた。


「まあ、確かにそうかもな」


私はそっと手を伸ばして、パパの手のひらの中の石に触れた。

そしてそれを包み込むように両手でギュッと握りしめた。

窓の外を見上げると、優しい顔のお月様が私を静かに見つめていた。

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