表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/309

第69話



湖の守護者が 低く呟いた瞬間——


——ゴォッ!!


空気が震えた。


「ッ!?」


オリカたちは反射的に身構えた。


湖の水が一瞬にして荒れ狂い、巨大な水の槍となって彼らへと襲いかかる。


「話す気はねーってことか……!」


ゼファーが口元を歪めながら剣を抜く。


しかし、それよりも速く——


「エリーゼ!!」


オリカが叫ぶと、エリーゼはすでに動いていた。



「バリア展開——!」


エリーゼが杖を高く掲げると、淡い光の幕が空間に広がる。


ズシャァァァッ!!


水の槍が防壁にぶつかり、激しく弾けた。


「くっ……!!」


エリーゼが歯を食いしばる。


(この水……ただの物理攻撃じゃない!)


水は魔力を帯び、まるで意志を持っているかのように押し寄せてくる。

次々と放たれる無数の水刃が、バリアを削り取っていく。


「持ちこたえられるか!?」


ゼファーが素早く周囲を確認する。


「……長くはもたない!」


エリーゼが額に汗を滲ませながら答える。


(このままじゃ、守り切れない……!)


杖に注ぐ魔力。


その一端を意識の片隅に置きながら、腕に力を込める。


髪が靡くその傍らで、湖の守護者が、静かに足を踏み出した。



水の激流を放ち続けながらも、湖の守護者はするりと滑るように動く。


(……速い!)


オリカの脳裏に危険信号が灯る。


敵は遠距離攻撃だけではなく、近距離戦にも長けている——。


次の瞬間、湖の守護者は 一気に距離を詰めた。


「くっ……!」


(このスピードは——!)


流れるような足さばきで、守護者はゼファーやエリーゼの視線をかいくぐるように動き、オリカへと肉薄する。


「オリカ、避けて!」


エリーゼが叫ぶ。


湖の守護者の腕が 下がり——


その腕から、鋭い水流が刃のように生まれた。



「——させるかッ!!」


カイルが手を突き出し、詠唱を紡ぐ。


「氷結せよ——《フロスト・バインド》!」


バシュッ!!


冷気が一気に広がり、湖の守護者の動きをわずかに止める。


「……!」


敵の足元に凍てついた氷の鎖が絡みついた。



(よし、止まっ——)



しかし——


バキィン!!


「なっ……!?」


——氷は、一瞬で砕け散った。



「……甘い」


湖の守護者が静かに言葉を発した瞬間——


——ドォン!!


爆発的な魔力が全方位へと解き放たれた。


「ぐっ……!!」


「くぅ……ッ!」


オリカ、エリーゼ、カイルの三人は吹き飛ばされる。


体勢を崩し、地面を転がった。


「……チッ!」


ゼファーは辛うじて踏みとどまる。



(あの爆発的な魔力の波……。)


(今までのどんな敵とも違う。)



しかし、ゼファーはそれでも口元に笑みを浮かべた。


「おもしれぇ……!」


——そして、湖の守護者へと突っ込んだ。



湖の守護者が静かに腕を掲げる。


周囲の水が再び意思を持つかのように舞い上がり、ゼファーへと向かう。



だが——



「そんなもんかよ。」


ゼファーは笑みを浮かべながら、一瞬で消えた。



——シュッ!



《”影渡り”》



まるで影をすり抜けるかのように、ゼファーのステップは音すらも残さない。


湖の水が飛沫を上げる前に、彼はすでに横へと流れ、守護者の懐へと踏み込んでいた。


(流れるような……いや、“泳ぐ” ような動き……。)


オリカは目を見張った。


湖の守護者は 瞬時にゼファーの動きを捉え、水の刃を形成する。


だが——


ゼファーの剣閃が、一閃。


刹那、水流が弾かれ、霧散する。


「……!」


湖の守護者がわずかに目を細めた。



シュバッ!



湖の守護者は 滑るように空間を泳ぐ。


その動きはまるで水の流れのように淀みがなく、自然だった。


ゼファーの剣をほんの僅かに避け、同時にその背後へと回り込む。


「チッ……。」


ゼファーもすぐさま反転する。


——ギリギリの距離での、交錯する攻撃と回避。


湖の守護者の腕が鋭く水を纏いながら振り抜かれる。


ゼファーはのけぞるようにして、紙一重でそれを回避した。



(こいつ……早ぇな。)



ゼファーは地を蹴る。


守護者は再び攻撃の構えを取るが——


ゼファーの笑みが深くなった。


「……そろそろ、本気を出すぜ。」



ゼファーは腰に手を伸ばし、もう一本の短剣を引き抜いた。


「……ッ!」


湖の守護者の瞳がかすかに揺れる。


「そうだ、俺は“片手” じゃねぇ」


ゼファーがゆらりと両手の短剣を構える。


——短剣二刀流。


ゼファーは魔力を練り込んだ“魔装短剣” を用いる暗殺者でもあった。


「さぁ、もっと遊ぼうぜ」



「……面白い」


湖の守護者が静かに呟いた。


次の瞬間、空気が裂ける。


ゼファーは二刀を手に、疾風のように動く。


水流の刃が次々とゼファーを狙うが——


「甘ぇよ」



カンッ!



ゼファーは短剣の片方で弾き、もう一方の短剣で斬り込んだ。


湖の守護者もすかさず距離を詰める。


固体と流体。


ゼファーの 確実に狙いを定めた刃と、守護者の変幻自在の攻撃が絡み合い、ぶつかり合う。


ゼファーは暗殺術を応用した高速戦闘を展開する。


「おら……そっちはどうする?」


ゼファーがニヤリと笑う。


湖の守護者も、微かに目を細めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ