「常夜の霧海(とこよのむかい)」——幽玄なる大樹の眠る森
1. 霧に沈む“もう一つの世界”
彼の地を訪れる者は、誰もがこう呼ぶ——
「そこは、この世界に在って、この世界に非ず」
「常夜の霧海」
それは絶えず霧が漂い、昼夜の概念すら曖昧な、幽玄の森。
辺境の山脈を越えた先、ロストンから西へ数百キロに渡って広がる大森林。
この森は 「生きている」とされ、訪れた者の心を映し出す鏡のような場所だという。
そして、霧の向こうに眠るのは、誰も見たことのない世界。
2. 地理と立地——“深き霧の狭間”
《位置》
・ラント帝国とヴァルキア神聖帝国の国境付近に広がる巨大な原生林。
・人間が管理する領土の外にあり、誰もが迂闊に足を踏み入れようとはしない。
・「道がない」——森そのものが生きており、気まぐれに道を変えてしまうため、地図の役に立たない。
《特徴》
・この森は 常に濃霧が立ち込め、視界が遮られている。
・時間の流れが歪んでいる とされ、森に入ると 数時間しか経っていないはずなのに数日経っていたという話が絶えない。
・夜なのか昼なのかも曖昧で、光は霧のフィルターを通してぼんやりと森を照らすのみ。
・まるで“時が止まった”かのような静寂 が支配する。
3. 霧の奥に広がる森の情景
《木々》
・常夜の霧海の森は 信じられないほどの巨木が立ち並ぶ。
・樹齢数千年を超える巨木が、地面から天を突き刺すように生えている。
・樹皮は黒みを帯び、枝葉は深い翠色。昼でも夜でも、ほとんどその色を変えない。
・木々の根が大地を這い、絡み合い、まるで森全体が一つの生命体のように息づいている。
・枝葉の間には「発光する苔」が生え、ぼんやりと緑の光が森を照らす。
・霧が濃くなると、この光が幽玄な輝きを放ち、幻想的な雰囲気を醸し出す。
《水の流れ》
・森の奥深くには清らかな小川や滝が存在する。
・水は限りなく透明で、底が見えるほど澄み渡っている。
・しかし、霧の中に消えたり現れたりするため、一定の場所に川があるとは限らない。
・ある者は、霧が水そのものを飲み込んでしまうのだと言う。
《奇妙な植物》
・音を立てる花—— 近づくと 低い振動音を発する。 何のために音を立てるのかは不明。
・吸霧草—— 霧を吸い込み、青白い光を放つ。
・夜影の樹—— 幹に触れると、影のように黒い波紋が広がる不思議な樹木。
・獣食いの花—— 幾つもの触手のような蔓を持ち、小型の魔獣を絡め取る肉食植物。
4. 霧の中の“住人”——魔獣と異形のものたち
この森には、人間の知らぬ生物が棲んでいる。
《霧鱗獣》
・霧と共に生きる魔獣。
・体は半透明で、霧の中に紛れると完全に姿を消す。
・鱗が霧を吸収し、エネルギーに変える特殊な性質を持つ。
《幽幻蛇》
・霧を泳ぐ大蛇。
・体長は10mを超え、霧に同化することでほぼ視認不可能。
・霧の温度変化を感じ取り、熱源に向かって移動する習性を持つ。
《深淵梟》
・巨大な黒いフクロウ。
・不吉な予兆とされ、その鳴き声を聞いた者は森から戻れないという伝説がある。
・しかし、実際には森の中で道案内をする役割を持つと言われている。
5. 霧海の奥に眠る「未知の遺跡」
常夜の霧海の更に奥——
そこには 「霧の民」と呼ばれる者たちがかつて住んでいた遺跡が眠っているという。
しかし、遺跡へと辿り着いた者は少なく、たどり着いた者は二度と戻らなかったと言われる。
《霧隠の神殿》
・伝説では、そこには 「星の記憶」を蓄える神殿 があるとされる。
・石造りの巨大な建造物で、至る所に 「古代語」 が刻まれているという。
・世界樹と繋がりを持つ者だけが、霧を越えてそこへ至ることができると言われる。
6. 霧の森が持つ“世界の秘密”
常夜の霧海は、ただの森ではない。
それは、「世界の記憶」 を宿す場所であり、
この世界が生まれる以前の秘密を抱えた空間 でもある。
・なぜ、この森だけが 「時間の流れ」を変えるのか?
・霧は一体、何なのか?
・この森の奥に眠る「星の記憶」とは?
未だ、その全ては 霧の奥に沈んだまま——。