ノワール・ヴェイル──“夜色に抱かれし森の都”
【闇に溶ける幻影の村】
霧深き原生林の奥、
人の目に触れぬ深遠の森の中に、“ノワール・ヴェイル”は眠っている。
夜の帳が降りると、その姿は完全に森と一体化し、
闇に溶けるように、どこまでも静かに息づく。
ここは“影と月の民”──ダークエルフたちの隠れ里。
陽の光を忌む彼らは、昼には森の奥深くに潜み、夜になると活動を始める。
そのため、村は 常に夜を思わせる薄明の空気に包まれ、
森の天蓋に覆われた静寂の中で、ひっそりとその形を保ち続けている。
【森と調和する建築】
ノワール・ヴェイルの家々は、決して自然を侵すことなく、森と共に生きるために築かれた。
“樹上都市”
•巨大な黒檀の木々に、幾層にも重なる木造の家々が組み上げられている。
•まるで樹木そのものが村を抱くように、住居が枝の間に寄り添う。
•幹に空いた大きな洞を家とする者もおり、壁の代わりに苔やツタが生い茂る自然の家も珍しくない。
“燐光の灯る街路”
•村の通りには、光苔が敷き詰められており、夜になると淡く青白い光を放つ。
•魔法を宿した 黒曜石のランタン が点在し、炎ではなく、星屑のような光の粒 を灯す。
“空中回廊”
・ 巨木同士が 繋がるように組まれた橋 が村を巡り、まるで 蜘蛛の糸のように、天上を這う通路が張り巡らされている。
•地上にはほとんど足をつけることなく、木の間をすり抜けるように移動する。
•そのため、村の住人以外がこの地に足を踏み入れたとしても、気づかれることなく、彼らに見下ろされているのだ。
【“夜の民”の暮らし】
“太陽を避ける生き方”
•ダークエルフは太陽の光に弱く、昼間はほぼ活動しない。
•彼らは 星と月の下で生きる種族であり、昼間は休息し、夜になると市が立ち、交流が始まる。
“闇の祝祭”
•村の中央には “影の広場” があり、夜毎に黒き炎の灯る祭壇を囲み、ダークエルフたちは舞い踊る。
•ここでは “影の歌”と呼ばれる 古代語の詠唱 が響き、それがこの地に生きる者たちの誇りとなっている。
“薬と毒の調合”
•ダークエルフの多くは 薬草に精通しており、特に毒と治癒の調合に長けている。
•彼らは 森に生える特殊な植物 を用い、“生と死の境界を操る” 独自の医療を発展させてきた。
•そのため、外の世界からは “呪術師” と呼ばれることもある。
【森に息づく“守護者“】
ノワール・ヴェイルを守るのは、ただの壁や門ではない。
この村には、古の精霊たちが住んでいる。
“森の番人”
•村の周囲には、意思を持つ樹木たち が立ち並ぶ。
•彼らは 外敵が近づくと根を動かし、道を迷わせ、侵入者を絡め取る。
“影を纏う魔獣”
•村の周囲には、ダークエルフと共生する黒い魔獣たちがいる。
•彼らは 森の奥に迷い込んだ者を狩る存在 であり、ダークエルフ以外の者がこの地に入ることはほぼ不可能 だと言われている。
“影の詠唱”
•村の長老たちは、古代の魔術を受け継ぎ、森そのものを動かす力を持つ。
•彼らの詠唱が響くと、森の霧が濃くなり、外の者は決してこの地を見つけられなくなる。
この村は、どこまでも “夜の色” に染まっている。
闇の中に光る瞳たち。
静寂の中に揺らめく燐光。
夜の風が吹き抜けるたび、
影と木々のざわめきが、世界の秘密を語る。
人間の世界とは異なる、
もう一つの時間がここには流れているのだ。
——ようこそ、ノワール・ヴェイルへ。
夜の息吹と共に、影の民が君を見つめている。




