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第46話



(……これは、何?)



オリカは ゆっくりと瞬きをする。


目の前には、先ほどまで暴れ狂っていた 黒いエネルギーの波動が、まるで”時間が凍結したように“静止していた。


セフィナの魔法障壁が砕け散る瞬間——その光の粒さえも、宙に浮かんだまま。



エリーゼの流れる金髪も、

ライゼンの放った矢も、

ルナティアの纏う闇も——



すべてが、完全に静止していた。



(私は……まだ生きてる?)



手を動かそうとする。


——動く。


(……私だけ?)


世界が ”止まった” のに、なぜかオリカの意識だけが動いている。


そして——


「……聞こえますか?」


再び、囁きが響いた。


オリカは、振り向く。




そこには——


巨大な樹の幻影があった。


それは、天を突くほどの巨木。

根はどこまでも広がり、

その幹には 刻まれたような紋様が走っている。


(これは……)


「世界樹……?」


オリカは、 声を漏らした。




----------------------------------------------------------------



世界樹ユグドラシルの特徴》


◆ 大地の中心に根を下ろし、“命の源” として存在する

◆ 世界のすべての生命の記憶を蓄え、見守る存在

◆ 時を超越し、選ばれた者にのみ“声” を届ける



----------------------------------------------------------------



「……あなたは、私の声を聞いた。」


囁きが オリカの意識に直接届く。


「あなたは……本当に、“世界樹” なの?」


「——私は、“記憶”。」


風がそよぐように、

水が流れるように、

世界樹は語る。


「生命が生まれ、巡り、消える……

そのすべてを見つめ続ける“記憶” の集合体。」


「そして、あなたは——」


オリカの 胸が、不思議な感覚に包まれる。


「……“選ばれた者” だ。」




「選ばれた者……?」


オリカは、息を呑む。


(私が……?)


「あなたの中には、

“命” のことわりに触れる力がある。」


世界樹の囁きは、

まるで静かに流れる水のように、

オリカの 心の奥へと溶け込んでいく。


「……命の理……?」


「あなたが見てきたものを思い出して。」




《オリカが経験したこと》


 ・転生し、異世界で医者として生きる

 ・黒死病の治療に挑み、魔法と医学の融合を模索する

 ・ “命” の救済を求めながら、治せない病に苦しむ




「あなたは、“命” を救いたいのでしょう?」


「……そう…だけど」


オリカは 迷わずに答えた。


「私は、救いたい」


「救えない命を、救いたい」


「だったら——」


世界樹の囁きは、

まるでオリカを試すように、

静かに問いかける。


「あなたは、“命の代償” を知っていますか?」



「……命の代償?」


オリカは 眉を寄せる。


「あなたは、“治癒” という力を持つ。

ただし、その力は、“対価” を求めるものです。」


「対価……?」


「この世界には、“均衡” がある。」


「傷を癒せば、どこかに“傷” を負うものがいる。」


「病を治せば、どこかに“病” が生まれる。」


「……それが、“命の代償” です。」


オリカの背筋が、凍るような感覚に襲われた。


(そんな……まさか……)


「“命” とは、ただ救うだけのものではない。」


「あなたがこれから選ぶ道——

それは、“命を紡ぐ” か、“命を奪う” かの選択に繋がる——」


(……命を奪う?)


オリカは世界樹を見上げる。


その幹には、無数の光る紋様が刻まれていた。


(これが……世界の“記憶”?)


そして——


世界樹は、最後にこう囁いた。


「あなたが、“本当の治癒者” となるために——」


「“命” の意味を知りなさい。」


オリカの視界が、ふっと暗転する。


そして——


“止まった世界” が、再び動き始めた。

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