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第22話



「まずい……!」


私は、慎重に結紮けっさつしようとした虫垂の根元が、崩れかけているのを見て、冷や汗をかいた。


(予想以上に炎症が進んでる……!

糸を結ぶ前に破裂したら、膿が腹腔全体に広がってしまう!)


膿の中の細菌が血流に感染すると、敗血症を引き起こす可能性がある。


それだけじゃない。


膿が体内に広がれば、手術を繰り返す必要があったり、回復期間が長くなったりすることもある。


「ヴィクトール! 吸引器の代わりになるものはある?」


「吸引器……? そんなものはないぞ…!?」


「……じゃあ、布で膿を拭うしかないわね!」


私は、慎重に周囲にガーゼを配置し、できるだけ虫垂の膿が広がらないように保護する。


(……まず、結紮しないと! でも、このままじゃ糸が滑る……)


「《ステイシス・ストリング》!」


私は、魔力を込めた糸を生成 し、通常の糸よりも滑りにくくする。

結び目を作りやすくなり、しっかりと虫垂の根元を固定できる。


「よし……これならいける!」


私は素早く糸を結び、虫垂の切断準備を整えた。



「オリカ、いけるのか?」


「……やるしかないっしょ!」


改めて銀製のメスを握る。

手の震えは、もうなかった。


魔法で体内を可視化したことで、どこをどう切ればいいのか、正確に見えている。


(魔法を使えば、手術の精度は上がる。)


それなら——私は、魔法と医術を融合させて手術をする!


「……いくよ!」


慎重にメスを当て、虫垂を最小限の切開で切除する。


——スッ……!


「……っ!」


血が滲むが、すぐに止血。

慎重に、確実に——。


「……切除完了!」


虫垂をガーゼに包み、汚染が広がらないように処理をした


(……よし、次は縫合!)


「…でも、このままじゃ、感染症のリスクが高い……」


私は、術後の感染症対策を考えた。



・腹腔内の膿をしっかり拭き取る

・創口を確実に縫合する

・術後の管理を徹底する



魔法だけに頼るわけにはいかない。

術後に問題が起きないよう、徹底的に管理しなければ——!


「……ヴィクトール、魔法薬店で買った抗炎症作用のあるポーションを!」


「これか?」


ヴィクトールが差し出したポーションを、私は慎重にガーゼに含ませ、腹腔内の洗浄を行う。


(よし、これで感染症のリスクを減らせるはず……!)


「次に、縫合!」


私は、慎重に糸を通し、内臓の縫合を開始する。


(……細かい作業が続くけど、焦らないで!)


「——縫合完了!」


最後に、皮膚を縫い合わせ、手術は無事に終わった。




「……終わった!」


私は、大きく息を吐いた。


「お、お父さん……娘さんは、助かりました。」


「——本当に!? ありがとう……!!」


私は、少女の手をそっと握る。


(助かった……!)


心臓の鼓動が、少しずつ落ち着いていく。


——でも、これで終わりじゃない。


術後の管理が重要だ。

感染症のリスクはゼロではないし、今後の経過観察も必要になる。


「……でも、私はやったわ。

魔法と医療を組み合わせれば、もっと多くの命を救える。」


極度の緊張から抜け出したせいか、体が熱い。


額に滲む汗をそっと拭き取りながら、新たな決意を胸に刻んだ。


“私は、魔法と医療を融合させた新しい医者になる。”


この世界にはまだない、新たな治療法を——!

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