◆ シュナイダー工房に依頼している医療器具
この世界の医療レベルは16世紀ごろ(ルネサンス期の西洋医学)に近似しているため、以下の点が特徴として挙げられる。(※ただし一部は進んでいる部分もある)
・解剖学の発展(ヴェサリウスの『人体構造論』の時代)
・外科手術の発展(理髪外科医による処置)
・消毒・無菌概念の未発達(細菌の存在が知られていない)
・麻酔・鎮痛法の未発達(主にアルコールや薬草を使用)
・血液循環の未解明(ハーヴェイの血液循環説以前)
この環境で現代医療の医療機器を導入する場合、オリカが最優先で必要とするものは次のようなものになる。
① 手術器具(外科手術用)
この時代の手術は「素早く切ること」が重視されていたため、切断・縫合の技術向上が必要。
◆ 鉗子類(止血・把持)
必要理由:この時代、止血は焼灼(焼いて固める)か縛る方法が主流だったが、鉗子による止血があれば、より精密な手術が可能になる。
・ペアン鉗子(止血鉗子):血管を挟んで出血を防ぐ
・モスキート鉗子(微細な血管用)
・アリス鉗子(組織を掴むため)
◆ 剪刀(ハサミ類)
必要理由:現代と比べ、手術の際に使える切開手段が限られているため、より精密な剪刀が必要。
・メイヨー剪刀(硬い組織の切開用)
・眼科剪刀(微細な切開用)
◆ 持針器(縫合用)
必要理由:手術後の傷の縫合が、当時の技術では非常に雑だったため、精密な縫合を可能にする道具が必要。
・マチュー持針器(片手で開閉できる持針器)
・ヘガール持針器(頑丈な構造で、安定した縫合が可能)
② 診療器具(診察・治療用)
現代知識を用いた診察を可能にし、診断精度を向上させるために必要な道具。
◆ 聴診器(簡易型)
必要理由:16世紀の医師は、患者の胸に耳を当てる「直接聴診法」を使っていたが、聴診器があれば肺の状態をより正確に診察できる。
◆ 血圧計(簡易型)
必要理由:この時代の医師は脈拍を指で測るだけだったが、血圧計があれば循環器の診断が向上する。
◆ 体温計(アルコール式 or 水銀式)
必要理由:発熱の診断がより正確になる。(この時代は皮膚の温度を触る程度の診察)
◆ 瞳孔計(眼の診察用)
必要理由:神経系や脳の異常を診察する手段として有用。
③ 検査・消毒用具
16世紀は細菌の概念がないため、消毒と無菌環境の導入が最優先。
◆ アルコールランプ(消毒・滅菌用)
必要理由:金属器具の消毒が可能になる。
◆ ガラス器具(試験管・フラスコ・シャーレ)
必要理由:薬品の調合や血液・尿の簡易検査ができるようになる。
◆ ピンセット(無菌処置用)
必要理由:手術や処置の際に、感染を防ぐために使用。
◆ 手術用手袋(布製 or 簡易ゴム製)
必要理由:医師が直接素手で触ることを防ぎ、感染リスクを下げる。
④ 麻酔・鎮痛用具
16世紀の外科手術は「生きたまま切る」ことが基本で、痛みを和らげる手段がほとんどなかった。
◆ 麻酔器(簡易吸入器)
必要理由:クロロホルムやエーテルの麻酔を使うための器具が必要。
(この時代の麻酔は、ワインやアヘンなどが主流だった)
◆ 注射器(簡易型)
必要理由:麻酔薬や鎮痛剤を直接投与するため。
・ただし、現代の精密な注射器の技術はないため、比較的太い針とガラス製のシリンジになる。
⑤ 救急医療・応急処置用具
戦場や緊急時の治療のために必要なもの。
◆ 包帯(巻き型、圧迫止血用)
必要理由:この時代の包帯は粗雑な布を巻くだけだったが、圧迫止血や固定に特化した包帯があれば、外傷の処置が向上する。
◆ 副木(骨折固定用)
必要理由:骨折の固定をより正確に行うため。
◆ 担架(折りたたみ式)
必要理由:患者を運ぶ際に便利。戦場や緊急医療では必須。
⑥ 16世紀医学における革新的な要素
オリカが医療器具を導入することで、この世界の医学にどんな影響を与えるかも重要なポイント。何より、優れた治癒師による傷や病気の回復は、“限られた界隈の人々にのみ有用”であるため、一般の人々にも十分な医療を受けられる社会的な改革が必須である。そのために高度な魔法や高価な魔法薬を扱わない「医学の知識」を浸透させていく必要があり、この世界の医療レベルを底上げする以下のような“革新的な要素”が必要である。
1. 「出血死の減少」:鉗子と包帯の改良によって、手術や外傷の止血技術が向上。
2. 「感染症の抑制」:消毒技術(アルコール・煮沸消毒)を導入し、術後感染を減らす。
3. 「診断精度の向上」:聴診器や血圧計によって、より正確な病気の診断が可能になる。
4. 「麻酔による安全な手術」:患者が意識を失った状態での手術が可能になり、より高度な外科治療が実現。




