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第156話



「な、なんで三年生がリリーの同行者なの……?」


カレンが戸惑いの声を上げる。


「私も聞きたいのだ!」


リリーはぶんぶんと首を振り、アレクを指差した。


「どーしてなのだ!?」


「そんなに驚くことか?」


アレクは淡々とした表情のまま、リリーの騒ぎを受け流す。


「……確かに、お前みたいな予測不能な存在と二人旅なんて、俺にとっても試練だがな」


「うにゃ!? どういう意味なのだ!」


「そのままの意味だ」


アレクはため息をつき、軽く額に手を当てた。




◇ 可愛いガジェット、登場!



「……それより、お前に紹介するものがある」


アレクは軽く腕を組みながら、横目で何かを合図した。


すると——


「ぴょこんっ!」


リリーとカレンの目の前に、どこからともなく可愛らしい魔導機械が飛び出してきた。


「にゃっ!? な、なんなのだっ!?」


リリーが驚いて数歩後ずさる。


そこにいたのは、人間の子供くらいの大きさで、ぬいぐるみのような質感を持った不思議な機械だった。


丸っこい体に、短めの手足。


耳の部分は羽のような形をしており、魔導蒸気の力で微かに動いている。


目は大きく、表情が豊かに見える魔導光のディスプレイ仕様。


全体的にふんわりとしたデザインで、機械というよりも可愛いマスコット のような見た目をしていた。


「やぁ! 初めまして!」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」


リリーとカレンが同時に叫ぶ。


「コイツは“ガジェット”と呼ばれる魔導機械だ。まだ試作段階ではあるが…」


「か、かわいい……」


カレンは頬を赤らめながら、ガジェットをまじまじと見つめた。


「キミたちの名前は?」


「んにゃ!? なんだなんだ! お前、しゃべれるのかっ!?」


リリーは興奮した様子でガジェットの周りをぐるぐると回り、のようなものを触ったり、お腹をつついたりし始めた。


「わっ、くすぐったいよぉ!」


「うにゃああ! ふわふわしてるのだぁ!」


リリーは大興奮でガジェットを抱きしめる。


「ちょっとリリー、これは……なんなの?」


カレンも目を輝かせて近寄る。


「お前ら……少しは説明を聞け」


アレクが疲れたようにため息をついたが、二人はまったく耳を貸さない。


「すごい! これ、本当に機械なの!?」


カレンがガジェットの顔を覗き込みながら驚く。


「魔導蒸気を利用した自律型補助装置だ。高度な人工魔導知能を搭載していて——」


「ふわふわ~!」


「もちもち~!」


「……話を聞け!!」


アレクが声を張り上げると、リリーとカレンは「はっ」となって顔を上げた。


「……あっ、ごめん」


カレンが照れ臭そうに笑う。


「だって、あまりにも可愛かったから……」


「うにゃ~、こんな可愛いものを連れて旅できるなんて、最高なのだ!」


「……お前が言うと嫌な予感しかしないな」


アレクは眉間を押さえた。


「まぁ、改めて説明するが、こいつはガジェット。エイゼンがとある工学技師に依頼して作らせた試作型の魔導補助機械だ」


「ふぉぉぉ、天才の匂いがするのだ!」


「だろう? 俺も初めて見たときは驚いたが——」


「……というか、新手のナンパ?」


カレンがふいにアレクを疑いの目で見つめた。


「……は?」


「だって、可愛い機械を使って女の子の気を引くとか、ちょっと新手のナンパっぽくない?」


「……本気で言っているのか?」


アレクは心底呆れた表情を見せる。


「ナンパ? それって何なのだ?」


リリーがキョトンと首をかしげた。


「……え、リリー知らないの?」


「んにゃ?」


「つまり、男の人が女の人に声をかけて、ちょっといい雰囲気に持ち込もうとするやつよ」


「ふにゃ? でも、アレクは“俺にとっても試練”って言ってたのだ。だからナンパではないのだ!」


「……お前、そういう時だけ鋭いな」


アレクはため息をつきながら、改めてガジェットを指した。


「ともかく、こいつを旅の補佐役として同行させる。補助魔導演算機能を持ち、物資管理や地図の記録、状況分析までこなせる便利な代物だ」


「……なるほど、賢いのね」


カレンは興味深そうにガジェットを撫でる。


「うふふ~、ボク、役に立つよ!」


ガジェットは誇らしげに胸(?)を張った。


「ふふん、それならあたしと競争なのだ!」


リリーが腕を組む。


「……どう競争するんだ……」


アレクは頭を抱えた。


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