表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/309

第19話






「……よし!!」


私は、診療所のカウンターに座り、胸を張って 「開業初日」 を迎えていた。


役所での登記も終わり、商人ギルドで商社登録も完了。

ロストンの市場では、すでに 「街角診療所 うさぎのおうち」の噂が流れ始めている。


「ついに、正式に“医者”として仕事ができるんだ……!」


私は、診察室を見渡した。



■ 診療所の内部(開業初日バージョン)

 ・受付カウンター(患者対応用)

 ・診察用ベッド(クッション付き!)

 ・薬草棚と調合器具(魔法薬や漢方薬の調合に使用)

 ・待合用の椅子(患者が座る場所)

 ・ポーションと包帯のストック(最低限の医療道具)



「準備は万端……あとは患者さんを待つだけ!」


とはいえ、まだ街の人々が 「私の医療」を信用してくれるかは分からない。

しばらくは様子見の期間が必要だろう。


私はお茶でも淹れようと立ち上がった——その時。


「すみません! どなたか、医者はいませんか!?」


「——!!?」


突然、診療所のドアが勢いよく開かれた。



「どうしたんですか!?」


駆け込んできたのは、10歳くらいの少年を抱えた母親だった。

少年は、足から血を流し、苦しそうに顔をしかめている。


「息子が……! 市場の荷車にぶつかって、足を怪我してしまったんです!!」


「わかりました! すぐに診察します!!」


私は、少年をベッドへ寝かせ、素早く診察 を始めた。




——診察開始!




「ええと、どこが痛い?」


「……ひ、左足……」


少年のズボンを慎重にまくると、膝のあたりがパックリ裂け、血が滲んでいるのが見えた。


「これ、結構深い傷だね……」


でも、骨折ではなさそうだ。

出血は多いが、動かせるということは、関節や筋が無事な証拠。


「よし、応急処置をします!」


私は清潔な布と消毒薬を手に取り、傷口を丁寧に拭き取った。


「うぅ……しみる……!」


「ちょっとだけ我慢してね!」


傷口の汚れを取り除いたら、消毒薬(薄めたアルコール) を慎重に塗布する。


「うん、感染の兆候はないわね」


私は頷き、包帯を取り出した。


「これで傷口を保護するね」


少年の足を丁寧に包帯で巻きながら、治癒魔法を発動する。


「……《ヒール》」


淡い光が少年の足を包み込み、傷が少しずつ塞がっていく。

治癒魔法だけで完治はしないけど、回復を早めることはできる。


「ふぅ……これで大丈夫!」


私はニッコリ笑い、母親に向き直った。


「これから数日は激しい運動を避けてください。

それと、傷口を毎日消毒して、包帯を交換してね!」


「は、はい……! ありがとうございました!」


母親は、深々と頭を下げた。


「こんなに素早く治療していただいて……!

まさか、治癒魔法まで使えるなんて!」


「ふふっ、これが“うさぎのおうち”の医療です!」


私は胸を張って笑った。



治療が終わり、母親が申し訳なさそうに口を開いた。


「あ、あの……治療費は……?」


「そうですね……」


私は診療報酬のリストを確認する。



◇ 診療報酬(基本料金)

 ¥…軽傷(切り傷・打撲):5リーナ

 ¥…中等傷(骨折・深い傷):10リーナ

 ¥…重症(重度の感染症・大怪我):30リーナ以上



「今回は5リーナです」


私は、優しく微笑みながら告げた。


「えっ!? そんなに安くていいんですか?」


「ええ、“困った人を助ける”のが私の仕事だから!」


私は本当に治療が必要な人が通えるようにしたかった。


「それに、これから私の診療所を広めていくためにもね!」


母親は、感激したように 5リーナを手渡してくれた。


「本当に……本当にありがとうございます!」


「こちらこそ、来てくれてありがとう!」


私は、母親と少年を笑顔で見送った。



それから数時間後——


市場では、「新しくできた診療所の医者がすごい!」 という噂が流れ始めていた。



▼ 街の噂


  「荷車に轢かれた子供をすぐに治したらしいぞ!」

  「しかも、治療費が安い!? 本当かしら?」

  「“うさぎのおうち”って名前、かわいすぎない?」




「おや、早くも話題になっているようだな」


ヴィクトールが店の窓から外を眺めながらつぶやく。


「さすがに“商人ギルドに登録した効果”もあるな」


「うん……でも、やっぱり何よりも大事なのは実績でしょ!」


私は、ギュッと拳を握る。


——“うさぎのおうち”の開業は、順調な滑り出しを見せた。

——だけど、まだ始まったばかり。


「これから、もっとたくさんの患者を助けていくぞ!」


私の“医療”が、この街でどこまで通用するのか——。

それを確かめるために、私は“闇医者”としての第一歩を踏み出したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ