スレイヴォルグ(Slaveorg)
■ スレイヴォルグ(Slaveorg)
分類: 陸翔獣
学名: Velociservus magnus
生息地: エルドラシア大陸全域(特に草原地帯、丘陵地、乾燥地帯)
体高: 約2.5〜3.2m(肩まで)
体長: 約4.5〜5.5m(頭から尾の先まで)
体重: 約800〜1200kg
走行速度: 最大時速120km(長距離巡航時は約60km/h)
寿命: 約40〜50年
主な用途: 長距離移動、軍用騎獣、交易、農耕補助
【概要】
スレイヴォルグは、大陸全域で用いられる大型の騎乗獣であり、馬と鹿の特徴を兼ね備えた俊敏な生物である。
その特徴的な長い首と流線型の体は、優れた走行能力と持久力を持ち、広大な草原や砂漠を自在に駆け抜ける。
長距離移動に適しており、特に交易商人や遊牧民、軍隊の騎獣として重宝されている。
古来より、人間と共に歩んできた歴史を持ち、帝国や諸国において、馬よりも優れた移動手段としての地位を確立している。
【形態的特徴】
1. 骨格と筋肉
スレイヴォルグは、大型の草食獣としては異例のしなやかで軽量な骨格を持つ。
その体躯は非常に発達した四肢筋によって支えられ、馬の約3倍の速さで疾走できる。
また、長時間の走行に耐えうる強靭な腱と耐久性の高い蹄を備えており、荒野や岩場でも滑らかに走ることができる。
2. 皮膚と毛並み
短毛で滑らかな被毛は、気候に応じて適応し、夏場は薄く通気性のある毛皮、冬場は厚みを増し保温性を持つ。
毛色は砂色、黒鉄色、白銀色など地域ごとに異なるが、
最も一般的な毛色は草原の色に溶け込む褐色である。
3. 眼球と視覚
スレイヴォルグの目は、広範囲の視界を確保するため、側方に配置されている。
また、視細胞の構造が特殊であり、暗所でも視認できる「夜間視覚能力」を持つ。
このため、夜間の移動や薄明かりの中でも高い適応力を示す。
4. 蹄と脚部
スレイヴォルグの蹄は、従来の馬と異なり、半可変構造を持っており、地面の種類に応じて柔軟に形を変化させる。
また、走行時には振動吸収機構を備えた骨格により、長距離移動でも負担がかからない。
5. 魔力適応能力
スレイヴォルグの筋肉組織は、微弱な魔素を貯蔵・変換する特性を持っており、
魔導術者が適切な刺激を与えることで、一時的に走行速度や持久力を増加させることが可能。
ただし、乱用すると疲労が蓄積し、過労状態に陥る危険性がある。
【生態と行動】
1. 群れでの生活
スレイヴォルグは、元来、群れを作って生活する習性を持つ。
1つの群れは10〜30頭ほどで構成され、強力なリーダーが統率を行う。
危険を察知すると、群れ全体が協調しながら迅速に逃走する能力を持つ。
2. 食性
完全な草食性であり、栄養価の高い牧草や果実、根菜を主食とする。
また、乾燥地帯では特定のサボテン類から水分を補給する習性を持つ。
飼育下では、特製の魔導飼料を与えることで、体力の維持や魔素の補充が可能。
3. 交配と繁殖
雌は約12ヶ月の妊娠期間を経て1〜2頭の仔を産む。
生後1年ほどで親と同じ速度で走ることができ、3〜5年で完全な成獣となる。
繁殖期は春から初夏にかけてであり、繁殖期の雄は特有の鳴き声で雌を呼ぶ。
【用途と人間との関係】
1. 交易と長距離移動
スレイヴォルグは、古来より大陸を横断する交易路の主役であった。
その驚異的な走行速度と持久力は、隊商や貴族の使者たちにとって不可欠な存在であり、
特に「王道街道」では、重要な騎獣として利用され続けている。
2. 軍用騎獣
ラント帝国やカルマーン皇国などの軍隊では、
スレイヴォルグを「陸上戦術騎獣」として導入しており、
特に伝令兵や偵察部隊の移動手段として高い評価を得ている。
魔導強化されたスレイヴォルグは、戦場において機動戦力としても活用されることがある。
3. 魔導工学との融合
近年、一部の技術者によって「魔導装甲鞍」が開発され、
スレイヴォルグの走行性能をさらに向上させる実験が進められている。
この装置は、魔力駆動によって振動を軽減し、長距離移動時の騎手の疲労を抑える効果がある。
【文化と神話】
1. 伝説と信仰
スレイヴォルグは、各地の伝承において「神聖なる風の使者」として崇められてきた。
特にラント帝国では、「白銀のスレイヴォルグ」を神の祝福の証として扱い、
皇帝の親衛騎士団「王盾の騎士団」には、
選ばれた者だけが白銀の個体に騎乗することを許されるという。
2. 民間での役割
一部の農村では、スレイヴォルグを農耕用として利用する地域もあり、
荷車を引かせたり、畑を耕す手伝いをさせることもある。
【まとめ】
スレイヴォルグは、その優れた走行性能と持久力から、交易・軍事・生活に欠かせない陸翔獣として広く利用されている。
ただの騎獣ではなく、帝国の歴史や文化に根付いた象徴的な存在であり、
特に騎乗技術に長けた者にとっては、信頼できる相棒としての価値を持つ生物である。
その蹄音が刻む旅路は、今日もまた新たな物語を紡ぎ続ける——。




