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OVER WORLD 〜落ちこぼれ医学生、転生先で個人診療所を開設する。〜  作者: 平木明日香
第1章 転生したらチートヒーラーだったので闇医者やります!
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第11話



「……これで、あなたは正式にギルドに登録された」


受付の壮年の男性が、私に 小さな銀色のプレート を差し出した。

表面には “ギルド商人”の刻印 が刻まれている。


「おぉ、これが……!」


私は手のひらの上で 銀のプレート を転がしながら、しみじみと眺めた。


「これがあれば、ロストンの市場で正式に取引ができる。

あとは君自身の信用次第だな」


ヴィクトールが静かに言う。


「信用?」


「商人は、信用がすべてだ」


ギルド登録があっても、信用がなければ誰も取引してくれない。

逆に、信用を積み重ねれば、より多くの資金や物資を扱うことができる。


「……君の医療行為が、どれほどの価値を持つのか。

それを、この街の人々に証明してみせることだな」


私は深く頷いた。


「わかりました……やってみます!」




ギルドの登録が終わり、ヴィクトールと共に街を歩いていると、ふと彼が海の方角を指さした。


「ロストンの本当の“心臓”を見せてやろう」


「……心臓?」


「ロストンは貿易都市だ」


彼の言葉とともに、私は 潮の香りに気づいた。

そして、歩くたびに 喧騒が高まっていくのがわかる。


「……?」


少し歩を進めた瞬間、視界が一気に開けた。


「……えっ」


私は目の前の光景に言葉を失った。



目の前に広がるのは、果てしない大海原。

その海の上には、無数の船が浮かんでいる。


大小さまざまな 帆船や商船、帝国の軍船、異国から来たであろう異形の船まで、港の中で所狭しと行き交い、まるで生き物のようにうねっていた。


「す……すごい……」


思わず呟いた。


私の知っている港町とは、次元が違う。

ここには世界中から物資が集まり、世界中へと物資が運ばれている。


「これが、ロストンの“生命線”だ」


ヴィクトールの言葉が、潮風に乗って耳に届いた。




----------------------------------------------------------------



■ 港の特徴


広大な港湾施設

 - 6つの巨大な埠頭ドックがあり、それぞれ異なる用途で使われる

 - 商船専用の埠頭、軍用埠頭、異国商人の専用埠頭など

 - 数百隻の船が停泊できるほどの規模


交易市場ハーバーマーケット

 - 各国の商人が店を出し、貿易品を取引する市場

 - 絹、スパイス、珍しい魔道具、動物、宝石 など、異国の品々が並ぶ

 - 即決で契約が成立し、取引が行われる場でもある


造船所と修理ドック

 - 船の修理・建造を行う施設が隣接

 - 熟練の職人たちが働き、巨大な船を組み上げる光景


港の警備隊ハーバーガード

 - 密輸や海賊の侵入を防ぐため、常に武装した兵士が巡回

 - ギルドと軍が協力し、港の治安を維持



----------------------------------------------------------------




「おい、積荷は全部確認したのか!?」


「異国のワインが入荷したぞ!」


「貴族用の絹布だ! 触るなよ!」


「急げ、次の便が出るぞ!」


人々の声が交錯する。

商人、船乗り、職人、傭兵、旅人——

さまざまな立場の人間が、この港に集まっていた。


活気、熱気、勢い——

この港は、まさに ロストンの“心臓” だった。



「ふむ……そこのお嬢さん、なかなか珍しい顔をしているね」


私は、不意に 異国風の装いをした男に声をかけられた。


「えっ?」


男は カルマーン皇国風の長衣ローブを纏い、頭には金の装飾が施されたターバンを巻いていた。


「あなたは……?」


「私はジハード・アル=ラシード。

カルマーン皇国から来た商人だよ」


男は、にやりと微笑んだ。


「この港にいるということは、君も商売を始めるのかい?」


「ええ、まあ……医療関係の仕事をするつもりです」


「ほう、それは素晴らしい」


彼は 香辛料の詰まった小瓶を取り出し、私に見せた。


「このスパイスは、病を防ぐ と言われている。

興味があるなら、試してみるといい」


「……!」


私は、ここにいるだけで さまざまな異国の知識や技術に触れられることを実感した。

この港には 世界のあらゆるものが集まる。

もしかしたら、黒死病を治すヒントも、ここにあるのかもしれない——。




私は、海を見つめた。


この広大な海の向こうに、私の知らない世界が広がっている。


「……オリカ」


ヴィクトールの声で、私はハッと現実に戻った。


「お前の医療技術が、この街の人々にとってどれほどの価値を持つのか——

それは、お前がここで証明していくしかない」


私は、拳を握りしめた。


「……やりますよ、私」


この街で、私は “医師“としての第一歩を踏み出す。


この港で感じた世界の広さを、胸に刻みながら——

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