ラント帝国の医療体系と“公的機関”
この世界における医療は、以下の三つの柱で成り立っている。
① 修道院(Sanctuarium Medicum)——慈善医療、魔法治療の中心
② 王立医療機関(Imperial Medical Academy)——貴族や富裕層向けの医療
③ 帝国薬学機構(I.P.O)——薬品の研究・流通を統括する管理機関
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① 修道院(Sanctuarium Medicum)
修道院は、「神の名のもとに病を癒やす」 という理念のもと、古くから帝国の医療の要となってきた。
・「聖なる癒やし手(Sacred Healers)」 と呼ばれる修道士・修道女が治療を行う。
・医療行為のほとんどは 「聖印(Healing Sigil)」を用いた魔法治療 であり、薬草療法は補助的な手段だった。
・貧しい者や巡礼者向けに無料の治療を施すが、貴族や商人からの寄付が主な運営資金 となっている。
・一部の修道院は 「薬学研究施設」 も兼ねており、薬草の栽培や秘薬の調合を行っている。
・帝国薬学機構(I.P.O)と提携 しており、公式に認可された薬剤のみを使用するよう求められている。
☑︎ 問題点:
修道院は貧しい者を救う慈善機関でありながら、帝国薬学機構による統制を受けているため、自由な医療が制限されている。
☑︎ 対立:
オリカのような独立した医者は、修道院を介さずに治療を施すため「異端」と見なされやすい。
② 王立医療機関(Imperial Medical Academy)
帝国の王族や貴族、上級市民のために設立された医療機関。
・高度な魔法治療 と 最新の薬学 が組み合わされた先端医療を提供する。
・王宮や貴族の領地に直属の医師団が存在し、特定の血統を持つ医者のみが従事できる。
・帝国薬学機構(I.P.O)からの認可薬のみが使用され、独占販売ルートが確立されている。
・一般市民は利用できないため、貧民層の医療とは完全に切り離されている。
☑︎ 問題点:
貴族向けの医療機関であるため、帝国薬学機構との癒着が強く、医療の「金儲け主義」が進行している。
③ 帝国薬学機構(I.P.O)
薬の研究・製造・流通を完全に統括する組織。
・王立医療機関と修道院の薬品を独占供給。
・「帝国内で使用できる薬品の認可権限」を保持し、未認可の薬は違法とされる。
・一般市場に薬が流通するのを極力制限し、「認可薬品のみが安全」という認識を広める。
・貴族派の支持を受け、医療市場をコントロールし、商人ギルドの干渉を排除。
・土地や環境によって入手が困難な一部の希少な薬草を人工的に管理し、市場価格を操作。
☑︎ 問題点:
薬の価格が高騰し、庶民には手が届かない状況を作り出している。
☑︎ 対立:
オリカのような 独自の医療理論を持ち、組織に属さない医者 は、「帝国の医療秩序を乱す異端者」と見なされる。
▼ 医療の歴史と貴族派の台頭
過去(修道院主導の医療)
・かつて、医療は修道院の聖職者たちが独占 していた。
・治療は 「神の恩寵」としての魔法 が中心で、薬草療法は補助的な位置づけだった。
・「医学」はまだ発展しておらず、病は呪い、悪霊、神の罰として考えられていた。
転換期(帝国薬学機構の成立)
・近世に入り、薬草や鉱物による治療法が確立 され、医療に新たな流れが生まれる。
・しかし、貴族派が薬草市場を独占し、修道院と王立医療機関を支配する形で医療界を牛耳る ようになった。
・「帝国薬学機構」が設立され、薬の認可制度が導入 されることで、貴族派が利益を得る仕組みが完成する。
☑︎ 「帝国薬学機構(I.P.O)」 は、医療の名目で薬品市場を独占し、貴族派の資金源となっている。
☑︎ 修道院(Sanctuarium Medicum) は慈善医療の場でありながら、帝国薬学機構に依存している。
☑︎ 王立医療機関(Imperial Medical Academy) は貴族のための高度医療機関であり、庶民には利用不可能。
☑︎ 独立した医者は、既存の医療機関から異端視され、排除される危険がある。
☑︎ 貴族派は「帝国の秩序」を理由に、医療を完全支配し、庶民の医療を制限している。
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【帝国薬学機構(Imperial Pharmacological Order)】
※俗称:薬剤師組合(The Society of Apothecaries)
1. 概要
帝国薬学機構(薬剤師組合)は、ラント帝国における 薬草・薬品の流通と管理を担う公的機関 であり、貴族派の後ろ盾によって設立された。
この組織は 「医療の発展と秩序の維持」を大義名分 としながらも、実態としては 薬品市場の独占と価格操作 を目的とした利権団体となっている。
・「薬剤の安全性と品質を保証する」という名目で、市場に流通する薬品の許可・管理権限を保持。
・修道院、王立病院、貴族の私設医療機関と密接に結びつき、医療に関わる市場を統制。
・王国政府、貴族派、商人ギルドとの交渉を担い、薬品業界のルールを決定。
・一般の薬商や薬草商人が 組合の認可なしに販売できない仕組み を構築。
・貴族派の資金源の一部となり、「薬価のコントロール」によって経済的な影響力を行使。
2. 組織構造
薬剤師組合は、三つの主要部門 で構成される。
① 監査評議会(Council of Oversight)
→ 組合の最高意思決定機関。貴族派の有力者たちが席を占める。
☑︎ 組合の方針決定、価格統制、規則改定などを担当。
☑︎ 貴族派の影響が強く、王国政府と交渉する役割も持つ。
☑︎ 評議員の多くは貴族出身か、大規模な製薬会社の経営者で構成される。
主要メンバー(例)
・レオポルド・フォン・グレゴリアン(グレゴリアン公爵家・代表)
・ヴィンセント・メルクリウス(王立病院長・組合創設者)
・ラザフォード・シュトルツ(ザカリア・シュトルツの父、製薬財閥の総帥)
② 製薬開発部(Department of Pharmaceutical Development)
→ 薬品・魔導薬の研究、開発、製造を統括する部門。
☑︎ 医療機関や修道院と連携し、新薬の開発や試験を実施。
☑︎ ルーンベリーなど、希少な薬草の人工栽培・精製技術を管理。
☑︎ 研究機関を運営し、新たな治療法や魔導薬の実験を行う。
主な関連施設
・ベルナーク製薬工場(ルーンベリーを含む希少薬草の人工栽培・精製を独占)
・王立魔導薬研究院(魔法と薬学の融合研究を進める機関)
・修道院付属薬草園(伝統薬の調合を担当)
3. 組合の歴史と背景
元々、薬草商人や薬師たちは 「各々の知識と技術」に基づいて個別に活動 していた。
しかし、貴族派は 「医療の質を統一する」との名目 で、薬剤師組合を設立。
☑︎ 修道院と連携し、医療を貴族派の管理下に置くための組織として発足。
☑︎ 「薬草を安全に管理する必要がある」という名目で、薬品流通の統制を開始。
☑︎ それまで市場に流通していた ルーンベリーなどの希少薬草を人工管理し、市場から排除。
☑︎ 「組合認可品」以外は違法とし、薬の価格を自由に操作できる体制を整えた。
4. 経済圏との関係
薬剤師組合は 「商人ギルド」「王国政府」「貴族派」 の間で微妙な立ち位置を取っている。
① 商人ギルドとの対立
☑︎ 商人ギルドは本来自由経済を重視するが、薬剤師組合は市場を独占しているため、利害が対立。
☑︎ 組合は 「医療は商業ではなく、人々のために管理されるべきだ」と主張 し、商人ギルドの薬品取引を制限。
☑︎ しかし、ギルドの一部(貴族寄りの派閥)は組合と協力し、独占販売の利益を得ている。
② 王国政府との関係
☑︎ 組合は王国政府に「医療政策の協力者」として認められ、公的機関の役割を持つ。
☑︎ 王家や貴族に対して 薬の安定供給を保証する代わりに、規制の免除や資金援助を受ける。
☑︎ 貴族派が王国内の医療市場を掌握するための重要な手段となっている。
③ 貴族派の資金源
☑︎ 薬剤の販売を通じて、貴族派に莫大な利益をもたらす。
☑︎ 「薬品価格を高騰させることで、貴族や修道院が資金を得られる仕組み」 を構築。
☑︎ 王立病院や貴族の私設医療機関を通じて、薬品の流通を操作。
5. まとめ
☑︎ 薬剤師組合は、貴族派が医療と薬品市場を独占するために作られた組織。
☑︎ 修道院、王立病院、製薬会社と連携し、薬品の生産から流通までを管理。
☑︎ ルーンベリーの流通を制限し、価格を高騰させることで市場をコントロール。
☑︎ 商人ギルドとは対立関係にあり、医療の名目で市場を独占。
☑︎ 王国政府と協力し、「医療の公的機関」として影響力を拡大。