世界樹と共に歩む民『エゼル人』——忘れられた古代種の叙情詩
1. エゼル人とは——
彼らは、かつて 世界樹の加護を受けた民だった。
“エゼル”とは古語で「永遠の種」を意味し、 その名の通り、彼らは生命と大地の調和を尊ぶ民族だった。
長きに渡り森と共に生き、大地と語り、世界樹と調和する民 ——
それがエゼル人である。
しかし——
彼らは今、この世界にほとんど存在しない。
ヴァルキア帝国による侵略によって、彼らは歴史の表舞台から姿を消した。
生き残った者たちは亡命し、隠れ住み、名前を偽り、エゼル人であることを隠しながら生きるしかなかった。
彼らは “忘れられた民族” なのだ。
2. エゼル人の特徴と文化
《身体的特徴》
・瞳の色は 緑または黄金——世界樹の葉や太陽の光を宿すような色合いをしている。
・髪色は 深い黒、または樹皮のような濃い茶色。
・耳はわずかに長く尖っており、エルフと見間違われることもある。
・皮膚は白くもなく、黒くもなく、土のように温かみのある褐色を帯びている。
・世界樹との強い繋がりにより、一般の人間よりも寿命が長く、200年以上生きる者もいた。
《文化と価値観》
・“生命は巡る”という考え を持ち、決して無闇に森を破壊しない。
・「言葉」よりも「感覚」を重視 し、森や風、土、太陽の流れを読むことで未来を予測する。
・文字は持たず、「木彫りの記録」や「歌」 によって歴史を伝える。
・火を忌避 し、光は月光や生体発光する植物 を利用する。
・道具を作る際は、決して大地を傷つけない。 石や鉄ではなく、自然に落ちた木や、枯れた葉を用いる。
《魔法と精霊信仰》
・エゼル人の魔法は、“外部のエネルギーを操る”のではなく、“世界そのものと調和する” ことで発動する。
・彼らは「詠唱」ではなく、「意識と共鳴」することで魔法を使う。
・例えば、「風を呼ぶ魔法」ではなく、「風の流れを読み、それを活かす力」
・「炎の魔法」は存在せず、火を操ることを極端に嫌う。
・世界樹の根に近づくことで、「予言の夢」 を見ることができるとされている。
3. エゼル人と世界樹の関係
「エゼル人は、世界樹と共に生きる」
この思想こそが、ヴァルキア帝国にとって最も危険なものだった。
世界樹は、この星の“核”であり、“生命の流れを司る存在”。
エゼル人は、その世界樹の導きを信じ、「均衡を守ること」こそが生命の使命だと考えていた。
・世界樹の根の近くで生まれた子供は、「樹の声」を聞くと言われている。
・エゼル人の長老は、「樹の夢」を見るとされ、未来を予知する力を持つと信じられていた。
・彼らの体内には、世界樹と共鳴する「特別な魔力」が流れていた。
しかし、ヴァルキア帝国はこの思想を恐れた。
4. エゼル人迫害の歴史——“大粛清”
ヴァルキア帝国が台頭する以前、エゼル人は 大陸の至るところで暮らしていた。
森の中、川のほとり、山の麓——彼らは 土地と共に生きる民だった。
当初、ヴァルキア帝国の建国からしばらくの間は、エゼル人の知識や歴史は帝国の“発展”に大きな恩恵をもたらしていた。
しかし、ヴァルキア帝国の “拡張政策” によって、彼らの存在は危険視される。
なぜなら、エゼル人の思想は 「帝国の秩序」に反するものだったからだ。
ヴァルキア帝国が求めたのは 「完全なる支配」。
世界樹を信仰し、自然と共に生きるエゼル人は 「帝国の発展を阻害する異端」 と見なされた。
《大粛清(ヴァルキア歴410年(A.C.910年)》
・ヴァルキア帝国軍による大規模な「エゼル狩り」が開始される。
・“異端審問官”が派遣され、エゼル人の集落はことごとく破壊された。
・帝国は「エゼル人の魔力」を危険視し、捕らえた者を「監禁」する政策を取る。
・多くのエゼル人が「実験対象」として研究所へ送られた。
・生き残った者たちは森の奥深くへ逃れ、一部は偽名を使い、人間社会に紛れた。
こうして エゼル人は「表の歴史」から姿を消した。
5. 現在のエゼル人の生存状況
《生存者の行方》
・ごく一部の者が「隠れ里」にてひっそりと生き延びている。
・一部の者は「偽名」を使い、人間として生きている。
・「エゼル人を匿う者」は、帝国では重罪とされている。
《エゼル人の魔力は今も生きている》
・世界樹の魔力を受け継ぐ者たちは、今もどこかで生き続けている。
・しかし、エゼル人同士の交流は途絶え、血筋はバラバラになりつつある。
・ヴァルキア帝国は、今も密かに「エゼル人の魔力」を探し続けている。
6. ルシアン・ヴァイスとエゼル人の“未来”
「お前は“エゼル人”なのか?」
この一言を告げるだけで、人々の態度は一変する。
彼は、この言葉を聞くことが恐ろしかった。
だからこそ、彼は自分の素性を誰にも明かさない。
しかし——
(……もし、この先、世界が変わるなら。)
ルシアン・ヴァイスが、再び“エゼル人”として生きられる未来は来るのか?
それはまだ、誰にもわからない——。