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第16話

 しばらくして王城に到着し、ボク達は会場に通された。

 場所は王城の庭園。綺麗なバラが咲き乱れており、立食式でお菓子や軽食がテーブルに並べられている。しかし、会場に来ていた貴族のお坊ちゃんお嬢ちゃん達はお菓子に見向きもせず会話を楽しんでいるようだった。どの子どもの綺麗な衣装に身を包んでおり、特に女の子達の気合の入れ方はありありと分かる。

「みんな気合が入ってるねぇ~」


 催し物に関係のないボクはテーブルに並べられたお菓子をこっそり摘まんでいた。こんな機会じゃないと気兼ねなく他国のお菓子を食べることはないからね。

 クリスはそんなボクを一瞥した後、そっと二号に目を落としていた。


「だって、このお茶会は王子の話し相手や婚約者を見繕う為のお茶会だもの」

(おや……? なんでクリスがそんなことを知っているのかな?)


 実際にそうなのだが、クリスの父親はただのお茶会としか言ってないし、いくら知能指数が上がったとは言え、聡いで済まない察しの良さだぞ?

 しかし、空気の読める悪魔のボクはそっと流してあげるのだった。


「へぇ、じゃあ、クリスも玉の輿に乗れるかもよ?」


 まあ、君にそんな未来はこないのだけれども。もう未来は決まっているのだ。

 クリスを含め、この会場にいる少女たちは誰も婚約者に選ばれない。

 そう分かっていながら、ボクはからかい雑じりに言うと、彼女は声を落とした。


「無理よ、私は王子様の婚約者になれないわ」

(え……?)


 彼女は何かを悟っているような大人びた表情をしており、ボクはなんて言葉を繋げたらいいのか分からなくなってしまった。

 ボクが口を開くよりも先に、彼女は淑女の顔を作り、二号に笑顔を向けた。


「さて、挨拶をしてくるわよ?」

「あ、クリス。ちょっと待って」


 王子様がいるであろう場所に足を運ぼうとするクリスを引き留めた。

 これを機に新しい魔法を試してみたかったのを思い出し、彼女の顔にずいっと顔を近づけた。


「え? 何……?」


 困惑する彼女の額の髪を払い、ボクは魔法をかけて口づけを落とした。リップ音もサービスしておくと、ボクが何をしたか分かった彼女は目を見開いた。


「なっ……!」


 クリスは人前で声を上げそうになった口を塞ぐ。

 みるみる頬が熱くなっていき、ボクから顔を隠そうとすると二号を盾にする。


「あ、ちょうどいいや」


 ボクは二号の頭にも魔法をかけてキスをすると、クリスがキッとこちらを睨む。


(な、な、何がちょうどいいのよ! この悪魔―っ!)


 彼女の怒号が耳に直接届き、実験が成功したことにガッツポーズをしてしまう。


「思念通話、成功!」

(は……? 思念通話?)


 彼女の内心が駄々洩れ状態であることをしっかり確認できたボクは、おもわずほくそ笑んでしまう。


「ほら、前に君が夢の話で遠くの人と話せる『デンワ』って道具の話をしてくれただろ? それを元にちょっと魔法をかけてみたんだ。君が二号の頭に素肌で触れている間、君の考えている事がボクに伝わるんだ。すごいでしょ~」

(なぬっ⁉)


 彼女はすぐに頭に触れないように二号を抱きしめ直した。

 そして、そっと二号の頭に手を置く。


(なんで、こんなことをしたの?)

「だって、君が二号に話しかけるとこっちに視線をくれないじゃないか。それに、こっちの方が便利じゃない?」

(確かに便利だけど……)


 彼女はボクと二号を交互に目をやったあと、不服そうにこちらに目を向ける。


(こっちの考えは聞こえて、そっちの考えが聞こえないってフェアじゃないんじゃな~い?)

「ほら、クリス。王子様の所に挨拶に行こう」


 ボクは彼女の苦情を聞き流して、口笛を吹き鳴らしながら宙に浮く。

 彼女の苦情なんていちいち聞いていられない。なんせボクはこれから大仕事があるのだ。

 今日、ボクの大好きな人は初めて恋をする。



 そして、ボクはその初恋の相手との出会いを台無しにしてやるのだ。




第16話 始まった暗躍劇

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