4.ウーサ・アプリコット
「コホン…あなた達、少しはやるみたいね!」
アメッサ達により怪物が居なくなった事を確認し、ほこりを払いながら立ち上がる。
胸を張るように腕を組み、その獣人は自信満々にその名を高らかに宣言した。
「わたしの名前はウーサ・アプリコット!」
「ねぇ、あなた達も魔女を追ってるんでしょう?わたしのお願いを聞いたら手伝ってあげても良いわよ?」
ウーサはまるで助けてもらった事など無かったかのように条件を持ち掛けた。
そんな様子を見て、ダンは軽くため息をつきぶっきらぼうに答える。
「助けてやっただろ、手伝うのに条件が必要なのか?」
「だから!あの三匹は私でもやれたんだから!貸し借りはゼロだから」
ウーサのプライドを刺激したのか声には少しの苛立ちが混じっていた。
そして指をダンに指し、何かを言おうとしたようだが言葉を飲み込む。
少しの静寂の後ウーサは言葉を続ける。
「その、お願いがあるんだけど…それを飲んだらパーティに入ってあげても良いわよ!」
ウーサはピンとした耳を振るわせながら一歩前に踏み出した。
その表情は真摯な願いが込められているようだった。
「条件…それは…」
「…それは?」
「わたしとフレンドになること!」
ウーサの頬がほんのり赤く染まる。そして彼女の言葉は次々と溢れ出した。
「わたしが強いモンスターの討伐やレアドロップを手に入れたりしたら褒めてくれて、週五で一緒にパーティを組んでダンジョンとかクエストとか終わった後にはツーショットも撮って掲示板にあげたりして…あっ、たまにはパジャマパーティなんかもしたりしてお互いの好きなところを言い合うのもいいかもしれないわね…!それからそれから寝る前にこのお揃いのリンククリスタルで通話をするの!」
ウーサはポーチからリボンの付いたクリスタルを見せる。
恥ずかしそうにしながら視線を落とし、耳をぴょこぴょこと動かせながらもじもじと足を動かす。
その後視線を再び上げ、チラチラと三人を見つめる。
「ねぇ…どうかな…?なんか言いなさいよ…!」
ダンとカシャは頭を抱え目を逸らす、二人はこの場をそそくさと離れるように踵を返す。
「…よし!カシャ、俺たちはギルドメンバーの情報を元に魔女の目撃地点まで急ごう。」
「ええ…そうですね。アメッサさん後は任せました。」
急いで声を掛けるウーサ。
「あのね、聞いて!わたし特別なスキルを持っているのよ!」
「スキル ≪ハウンドチェイサー≫ で過去一週間に会ったことのある人間を追跡することができるの!どう?すごいでしょう!」
しかしその声は届かなかったようだ。
その場を離れる二人にウーサの声は少し寂しげになる。
「…あなたはアメッサというのね?お友達になってくれる…?」
アメッサは取り残されたウーサの傍に近づき肩を叩く。
「はじめにスキルの事を言えばあの二人も友達になってくれたかもしれないな…」
そんなアメッサの一言にウーサは下を俯きながら反論する。
「……それはわたしじゃなくてキャシー目当てで友達になるみたいで嫌。」
ウーサはアメッサの腕を掴む。
しばらくしたあと顔を上げ、不満げに周囲を見渡しながら調子を取り戻す。
「…というより!こんなにも多くの人がなぜキャシーを探しているの?今日の街はいつにしても騒がしくて嫌になるのよ」
「協力するんだからギブアンドテイクよ!教えなさい!」