2.ハロウィンタウン
自己紹介を終えた三人はパーティ申請を終え街の中を進んでいく。
町の中心部はハロウィンの装飾で彩られ、どこもかしこもかぼちゃのランタンが灯っている。
街灯の代わりに不気味な顔を彫り込まれたジャック・オー・ランタンが並び、家々の窓には蜘蛛の巣が張られコウモリや幽霊の飾りが吊るされていた。
仮装をした子供たちが走り回り、「トリック・オア・トリート!」と叫びながらお菓子を集めている様子が見える。
「ここがハロウィンタウンか。思ったより賑やかだな」
ダンが感心したように言い、あちこちの装飾に目を奪われていた。
かぼちゃのランタンの明かりが彼の鎧に反射し、金属の光沢がオレンジ色に染まって見えた。
「見てください二人共、あちらに露店がありますよ。『ここでしか手に入らないポーション販売中!』だそうです。」
「…目的を忘れないように。何はともあれまずは手がかりを探そう。」
夜の空気には甘い香りが漂い、通りから聞こえる笑い声や音楽が場の高揚感を煽る。
歩き回るダンとカシャにアメッサは周囲の警戒をしながら後を着いていく。
馬車が止まった場所は町の広場に面しており、中央には大きな噴水がある。
その周りには露店が並び、マジックアイテムや奇妙な食べ物を売られていた。
魔女やゾンビ、吸血鬼など、さまざまな衣装をまとった住人たちが行き交い賑やかな雰囲気を醸し出している。
「しかし、こうも人だかりが多いと…近くを歩いていても気付くのは難しそうだ。」
アメッサは人混みを避けるようにして進みながら言った。
「情報によると手配書の魔女は一度としてこの町から離れた事はないそうだ。ま、メンバーで情報共有すればいずれ分かるはずだから気楽にいこうぜ」
鎧の隙間に手をいれながら露店で買った飴を取り出すダン。
その軽い言葉にカシャはため息をつきながらギルドのチャットログを開く。
「…しかし『黒鉄団』は昨年度に開かれたアリーナのpvp上位者が集まって出来たギルド。他のプライドの高い団員がそう協力をしてくれるとは思えないのです。何せ魔女の討伐者には400万Gの追加報酬があるのですから…」
「いや、それはどうかな。今回賞金稼ぎを作戦に入れたのは明確な意図があると思うぜ。『そいつらに先を越されるような有象無象は要らない』って事じゃねーかと。だから今回は皆協力するはずだ、多分。」
アメッサは二人の話を聞きながらふと思う。
(あまりギルドの結束は感じられないな…今はどこも同じ感じなのだろうか。)
懐かしい日々の光景が脳裏に浮かぶ。
いや、やめよう。
過去を振り払うように、アメッサはダンに疑問を投げかけた。
「…私と組むのは良いのか?その計画と反することになると思うが」
「強い賞金稼ぎをヘッドハントするって意図もあるはずだ。別にそんぐらい良いと思うぜ」
そんなものかと会話を交えながら魔女の探索を続ける。
この間もカシャは常にギルドのチャットを見つめており、たった今メンバーからの最新情報が入った。
「あっ皆さん魔女の目撃情報があったようです。場所は…」
「放しなさいよ!!!」
カシャの声を遮るように路地裏の方で声が聞こえる。
「私から離れなさい!ちょっと…耳触らないで!!」
「このっ…!キャシーのやつ…!今日こそぎゃふんと言わせてやるんだから…!!」