おはようございます
─────永い夢をみた、気がする。
…………内容は覚えていないけれど、大事なことだった筈。
「ふぁ……ああ゛ッんぎぎ……よく寝た。……なんで僕は地べたで寝てるんだっけ?」
迷宮に潜ってたはずだよね。
三階層に降りて、どうなったんだっけ?あぁ、綺麗な景色に感動したのは覚えてるな。
その後、大きな神殿みたいな神秘的な建物に入った……僕は何か覚悟してたはず……?
中に入って、それで……。
「あぁ──」
なんにもできずに殺されたんだ。
強大な力の前に、為す術なく、無力にあっさりと。
思い出してきた、あの無力感と悔しさと、怒りを。
一瞬でも忘れるなんてね。
二度と忘れないよ。
……でもじゃあなんで、僕は生きてるんだ?
僕の身体は手足の先から、粉々に崩れていったはず?
「手足、あるよね。すべすべもちもち。クキキ」
あん?こんなんだっけ?なまっ白いな〜。
傷痕のひとつも無い赤ちゃんみたいな手足だ。
産毛も、毛穴すら無いよ。
いや、さすがにおかしいね。
僕の右手の甲は、いつ怪我したかわからない古傷があった。それが無い。
「蘇生?……女神様みたいだったし神様ならそんくらいできるか?」
身体を分解されて一から構築し直された、みたいな。
そんならまぁなんでこんなんなってるかの説明は、まぁつく?
なんでそうしたかは謎。
神のみぞ知る、ってやつ。
勝手に神様認定してるけど、たぶん似た様な存在だと思うんだよなぁ。
いや、でも三階層で出て来たし、もしかしてダンジョンってあんな存在が当たり前に居るのか?
……いやいや、それは無いね。それなら人はダンジョンから生還出来ないよ。
僕は異常事態に遭遇したんだろうね。
ただ、レベルアップを教えてくれる女神様とは、たぶん別人。
声が違う、気がする。
確証は無いけど、僕は声フェチなので自信があります。
「まぁ、結局……色々と謎すぎるね」
わからないことが多すぎる。
あ、一応ステータスはチェックしとこう。
蘇生にデメリットがあるかは謎だけど、手足の件から何かしらは僕の身体に異変が出ているはずだ。
もしかしたらレベル1からやり直しかもだね。
Name 犬飼 犬太 ♂
Lv 9
Job ■■■■■の犬
Skill 毒耐性・犬の剣術・犬の格闘術
……色々変わってるね。
まずJobが獣戦士から■■■■■の犬になってるけど、なんの犬?そもそもそれって職業なのか?
伏せられてるのはなぜ?ステータスの女神様は、それを僕に教えてくれる気は無い?教えられない?
わかんないけど、まぁ考えてもわからないから次。
skillも毒耐性以外がおかしいね。
僕が持ってたのは我流剣術【犬】だったはずなのに、それが犬の剣術になってる。
……これ変えた意味あんの?
後は犬の格闘術が新しく生えてる。
まだ鉤爪を使って戦闘した事は無いから、これはなんでだろうね。
Jobの影響だったりする?
まぁ、考えてもわからないね。
「うん、謎」
諦めよう。
まぁ、生きててレベルも下がってないってのは良かった!
つーか服とか武器とかはそのまま装備してるのね。
可哀想だから残してくれたのかな?
あの問答無用な女神様も優しい所があるんだなぁ。
いつかお礼するよ。
さて、此処はどこだ?
僕は辺りを見渡して考える。
神殿は綺麗さっぱり消え去って、周りの景色も神殿が建っていた場所の様な美しさは感じない。
なんか、普通のダンジョンの広場って感じだ。
いや、普通のダンジョンの広場ってなんだって話だけど、漫画とか小説で仕入れた知識から想像出来る一般的なダンジョンの広場って感じ。
薄暗くて暗い青色の洞窟の床と壁。
素材は知らない。
もしかしたら此処が本来の三階層なんじゃないの?なんて薄ら思う。
「あれ、なんだろ」
奥に何かある。
足を動かして、謎の物体へと近づいていく。
近寄っていくと、台座の上に球体が展示されるように乗っているのがわかる。
ダンジョンコアってやつ?
たぶんそうだろうな〜。
ってことは此処がダンジョンの最奥なんだ……。
弱いゴブリンと優しいコボルトしかいないダンジョン……すぐ攻略されちゃうんじゃないのこれじゃ。
きっと産まれたばかりのダンジョンなんだろうな……。




