三階層
三階層への階段を降る。
特にこれと言った変化は無いが、相変わらずそこそこ長い。
両手に装着した鉤爪を確認する。
しっかりフィット。ヨシッ!
次の階の魔物はなんだろな〜。
暫くして、階段の終わりが見えてきて、漸く三階層の地へと立つ。
そして僕は、たぶん初めて感動した。
感動?とにかく心が震えたしワクワクした。
感動なんて使い古されて、重みが薄れて、陳腐で在り来りな表現だって僕は思ってたけど、そうとしか言えない。
階段を降りた距離よりも遥かに広大に広がる世界に鎮座した、美しく、神秘的で荘厳な雰囲気を感じる巨大な神殿。
夕暮れに照らされた世界の果ては、どこまでも続くようで。
「──綺麗だ」
いっそ畏怖すら感じるよ。
ダンジョンは凄い。どこもそうなのか?こんなに素晴らしい世界が広がっているのか?こんなもの見てしまったら。
──戻れなくなりそうだ。
明らかに普通の階層では無い、と思う。
たぶん、なんとなく、此処が最終地点。
一階層や二階層とは、感じる全てが違う。
そして恐らくこの先に在るのは、この場に見合うモノ。
気付けば、手も足も震えている。
どの感情から来る震えなのか、自分ではわからないけど。
でも、間違いなく恐怖がある。
あの神殿の中にきっと、いや。
「よし、行こう」
震える身体に鞭を打ち、足を進める。
遠いな、遥か遠い。
大自然に感じる人のちっぽけさとは、また違う。
なんて言っていいやら。わからん。諦めた。
僕は彼処に行って戦うだけだ。
絶対に楽しいに決まってる。僕の求めるものが其処にある。
神殿が近付くにつれ、プレッシャーが大きくなっていく。間違いなく居る。偉大な何か。
「クキキ」
笑っちゃうね。
神殿の前に辿り着き、巨大な両開きの扉の前に立つ。
「巨人用か?」
でけーよ。開けられるかな。
力を込めるとゆっくりと開いていく。案外すんなりいくね。
神殿の中は空っぽの空間が広がっていた。
ただ恐ろしく広く、床も、巨大な柱も、壁も恐ろしく美しい素材で作られている為か殺風景というイメージは浮かばない。
床に薄ら自分の姿が映る。埃も、汚れも無い。
そんな空の神殿の中央、巨大な柱が円状に生える中心に立っている、圧倒的な存在感を放つ存在。
それは神殿同様に美しく、神秘的で……。
「女神様」
僕の声に反応を示し、彼女の閉じられた両の瞼がゆっくりと開かれていった。
時の流れが異常に遅く感じるほどに、ゆっくりと。
その両目は黄金に、確かな光を発して輝き。
その唇は林檎の様に色付いていた。
「ようこそ」
そして瞬きの間すら無く、なんの抵抗も出来ないままに。
僕の身体は手足の先から、目に見えない程に粉々に分解されていった。
思考が加速しているのか、それがしっかりと知覚できた。
──女神様……お話くらいさせてください。
意識が強烈な光の中に、薄れていく。
女神様に勝てる訳が無いのだ。
……
糞が。