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婚約破棄の前日譚  作者:
番外編
5/5

婚約に至るまで 後編

——————————————————————


今日は城中が騒がしい。侍女たちはてんやわんやの大騒ぎで、城に招かれた淑女たちは、ある噂に密かに色めき立っていた。




今日の皇太子の生誕祭には、今まで病弱と噂され、なかなか表舞台に出てこなかった皇太子自身も登場するというのだ。さらにそれだけではなく、婚約者もこのパーティで決めるのではないかと噂が立っていた。




あるものはまだ見ぬ皇太子の姿に胸ときめかせ、また、あるものは皇太子妃になれるかも知れないという欲望から、胸を躍らせた。




ちなみに、一人、皇太子の生誕祭に際して出てくる宝剣(本来は即位の儀式で使うもので、皇太子の健康を願い、皇太子の魔や病を断ち切るために今回特別に出てくると噂されていた)に胸を高ねらせている淑女…淑女?もいたが、これは完全なる余談である。











一方で、日頃表情があまり変わらない皇太子も、今日は嬉しそうであった。やっと、仕事の一環とはいえ、外に出ることができるのだ。



因みに仕事以外で、ほとんど人と関わっていなかったことから、女性の生態というものを知らなかった皇太子は、この後、パーティでの淑女の勢いに怯え、蛇以上に苦手なものができたという。





なお、前回のスパイ騒動から分かる通り、今は改善されているし、なんなら今では掌の上で女性をコロコロッと転がすことも、踊らせることも朝飯前らしい。




さて、話を戻そう。



そう言うわけで、皇太子は稀に見るぐらいご機嫌だったのだ。(やつ)に会うまでは。




時と場所はうつって、パーティ会場でのこと。




皇太子は初めて見る淑女という名の獣に大層怯えた。なんせ今まで自分が関わってきたのは、無償の愛を注いでくれる家族と、ほんのちょっと腹に一物を抱えた大臣や高官(タヌキ)たちだったのだ。





こんなにも真っ直ぐに、体当たりしてくるかのような激しい愛情(物理)を向けられたことなどなかったのだ。取り敢えず、その場から逃れ、状況をその優秀な頭で理解しようとした。(怖かったから逃げたのだろうなどということは言わない約束である。)





しかし、今日の皇太子は久しぶりに外出できたことに全ての運を使い切ってしまっていた。



逃れた先に(やつ)がいたのだ。シューシューと口からは理解できない音を出し、トグロを巻いた体から伸びる頭、そこについている目がこちらを見つめる。その目は「何だテメェ邪魔すんじゃねぇよ。アア゛ン?」と語っていた。(語っていない。全てが妄想の産物である。成仏しろ。)






もう、まるで、運命に惹かれて出会った男女かの如く、その蛇と目と目が合った。ちなみに胸はときめかなかったし、何なら心臓は一瞬止まり、その後は猛烈なスピードでドキドキしていた。(トキメキではない)



そうして石のようにピキリッと固まった皇太子の前に現れたのがソフィアである。



ソフィアは颯爽と現れると、蛇をハンカチで包むと、包んだ部分を掴み茂みの中にかえした。




こうして、皇太子と蛇の間に、目と目があったことによる胸の高鳴り(トキメキではない)と、吊橋効果による恋が生まれることなく、この国の平和は保たれた。


蛇から助けてくれた女性に対しては大いなる胸の高まり(トキメキ)と、少しの吊橋効果、そして勘と真心により、恋が生まれることとなった。



ちなみにこの時ソフィアは、蛇さんが騎士に見つかって殺されてしまったら可哀想、と言うヘビに対する善意の気持ちはあれども、皇太子を助けたのはついでであった。まあ、運命()の出会いを前にそんなことを言うのは野暮な話である。




——————————————————————

「あの時僕を助けてくれたソフィアは本当に格好よかったよ。あの時に運命の相手だと確信したんだ。実際にその勘は間違っていなかっただろう?だって現在まできちんと縁がつながっているんだから。」





「それは…ハァ、そうですね。素晴らしい運命の出会いだと思います。(あなたにとって)」


無理矢理あなたが運命としてソフィア様を繋ぎ止めただけでは?とは言いたくても言える雰囲気ではなかった。



具体的に言うと圧がすごかった。皇太子の。





こうして運命の出会い()を果たした皇太子とその婚約者は後世に語り継がれるほど仲の良い夫婦となる。





ちなみに後にこんな(ことわざ)がこの国では生まれる。




ヘビに睨まれる

訳:1.運命の人と出会う前兆。

 2.また、身体の弱い者の体が強くなる前兆。


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