婚約破棄騒動の結果と婚約事情
拙作をブックマークしてくださった方がいらっしゃるようで、本当にありがとうございます。すごく励みになります。
もう面倒くさくなり、これだけ自分より目上のものに対して、大勢の前で(しかも各国のお偉いさんの前で)無礼を働いたのだったら、その罪で連行して、余罪を後で吐かせようと連れて行くことにした。
実に雑な幕引きである。優秀な頭脳を集結して立てた計画が台無しである。
パーティ会場には実に微妙な雰囲気が流れる。多くの人がソフィアに非常に同情的な視線を送っていた。なかには、ホロリと涙を流す人まで…
((お気の毒に…ソフィア様。))
それにしても、
「噂が事実でないと知っていたのであれば、何で婚約破棄しようと思ったのです?」
「それは、僕の周りにいる子が、君のことを勘違いしているのを見て、僕といると、君がやることなすこと全部悪い方向に捉えられてしまうと思ったんだ。君は本当に優しい子なんだし、そんな誤解を周りにはしてほしくなかったんだ。」
まあ、実際には周りにいる子、アイラだけが勘違いさせようと頑張っていただけで、アイラ以外は誰も信じていなかったのだが。(あれ?じゃあ、実際に彼女を悪女だと思っている人はゼロなのでは、などと突っ込んではいけない。ソフィアは悪女になるべく頑張った。)
「え、あ、そうなんですね。」
予想していない返答が来て不覚にも少し照れて、返答も吃ってしまった。
「僕からも聞いていいかい?何故僕が彼女と仲良くし始めた途端、他の男性と仲良くするようになったんだい?」
「それは、先ほども申し上げたでしょう?政務をしなければならなかったからです。」
「本当にそれだけかい?僕と一緒にいた時でも政務はあったはずだけれど。」
う、無駄に鋭い。
「そ、それは、あの、」
「うん、なんだい?」
「できれば、他の男とは一緒にいてほしくないと言う、あなたの思いを叶えようと、今までは、男性には人目につかないところで相談をしていました。でも、あなたがアイラさんと一緒にいるようになり、あの、「嫉妬した?」う、そ、そうです。」
上目遣いになり、真っ赤になりながらも答えた。
「ああ、やっぱり可愛いなー!僕のお嫁さん。すぐにでも結婚したい気分だよ。」
皇太子の顔は、実に満足気であったと言う。
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この話は城下にも広まり、スパイが邪魔をしても愛を貫くお似合いの二人として、美談となったという。
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「ああ、本当に僕の婚約者は可愛い。お嫁さんになってくれるまであとちょっとかな。きっと今日で祝福ムードになって結婚も早まるだろうし、ねぇ、そう思わない?アラン。」
「そうですね。おそらく城下にまで伝わるかと。」
それにしても、自分の主人の言葉を聞いて、疑問に思うことがある。
今回の騒動では、婚約破棄をすることもなく幕引きを図れたと言うことになり、最もいい形で結果をもたらすことができたと言える。
まさか、と思わなくはない。アランは側近として近くにいる分だけ、自分の主人のことをよく理解していた。
その思考を読んだかのように、
「仮とはいえ、彼女と婚約破棄をするなどごめんだよ。ずっと前から恋焦がれて来てもうまさに手に入りそうな僕のお嫁さんだよ?
それにしても、今回は彼女の気持ちも知ることができたなぁ。外堀も埋めることができたし。その意味では、あのスパイに感謝してもいいかな。それでも、仮とはいえ、婚約破棄が目前になったことを許す気は無いのだけれど。ふふ、手筈は整えたから、よろしくね、アラン。」
そう、前述したように、皇太子は頭がいいのである。
まさか、皇太子が何も知らないとでも?
全てが彼の掌の上。彼女が彼に嫁ぐことは、彼に出会った時から、決まっていたのである————。
婚約破棄の前日譚 終
いかがでしたでしょうか。最後が少し怖かったかなと思ったので、、一応タグに「腹黒」と入れるなど工夫をしてみました。もし、足りないタグなどお気づきになりましたら、ご教授いただけますと幸いです。読んでいただきありがとうございました。
※補足を入れると、題名を前日譚にした理由は、婚約破棄自体ではなく、その前日譚に焦点を当てようと思ったからです。最後を読んでいただければわかるのですが、婚約破棄の「前日譚」とは、何もソフィアや大臣・高官だけのものではありません。
最後までお読みいただきありがとうございます。