きみがいた春
懐かしい夢をみた
あの時 あの頃の
花笑むきみに春の光
幸せの時間のなかで
僕の名を呼ぶ
愛おしい その声で
微笑み合っては
きみの優しさに包まれる
手を伸ばす その瞬間
きみは桜に攫われる
いかないで いかないで
僕のそばにいて
霞んでいく きみの姿
もう見えないよ
消えないで 消えないで
おいていかないで
ずっとずっと待っていたの
きみと逢える日を
愛してた
藍色の世界 微睡みの中で
大切な言葉
たくさんもらったはずなのに
薄れてしまう
肌のぬくもり 匂い 声が
少しずつ遠くへ
消えて 忘れていってしまう
ぼやけていく思い出に
膝を抱いて こぼす涙
きみが笑う 「またね」と言う
春に溶けてゆく
夢でまた もう一度
きみに逢えたから
夜が明ける 別れを告げる
伝う涙で目が覚める
愛しさも 切なさも
忘れないよ
愛してた
揺らぐカーテン 窓の向こう
桜が揺れている
まるで手を振るきみのよう
もう隣にはいないけれど
ずっと僕の心にいる
やわらかな春風が
優しく僕を包んでいる
きみに似た優しさが漂って
思わず目を細めたよ
愛してる
──この愛しさのような優しい想いを、忘れない。