6月1日 少女を追って
完結後のお知らせ
実は、このレイルズオブフレイジアをある方に批評していただき、この作品には何もかもが足りていない、ということを痛感しました。
半ば勢いで書いた結果、設定適当、キャラ意味不明、ヒロイン誰? と問題点しか残っていません。
そこで、この作品をもう一度設定から作り直したいと思っています。
ただ、小説家になろう、では小説の削除は推奨されていないので、残すだけは残しておこうと思っています(また訪問者の皆様の記録を消すというのも勿体無いと思ってしまったので)。
これから頑張ってリライト作業に励みたいと思います。
09/06/26(金) 姫反アロ
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「ヒスイ?」
高校からの帰路。閑静な住宅街で見つけた後姿。それは良く知った人物のものだった。
百メートル以上先にいる少女。間違いない。いや、見間違えるはずが無い。このとき、何故かそんな確信が心にあった。
コハクは、慌ててそれを追いかける。
今しがた道を曲がってしまい、翡翠の姿は見えなくなってしまった。全速力で走るも、なかなか距離は縮まらない。ようやく曲がり角を曲がる。
「ヒスイ!」
そう呼びかけるが、ヒスイは一向に気がつかない。全速力で走る。後五十メートル。ただヒスイだけを見て走った。だから気がつかなかったのだろう。
つい今しがたまでは住宅街を走っていた。だが気がつけば、追いかけていた少女の姿はなく、あるのは雨風に晒されは廃墟となった教会だった。
ようやく周囲の様子がおかしいことに気がつき立ち止まる。
鐘が鳴っていた。
後ろを振り返っても住宅街は無い。あるのは廃墟ばかりだった。
「ど、どうなってんだ……」
とこどころに見える建物。それらは全て廃墟だった。
かつては人が住んでいたマンション。
かつては人が祈りをささげていた教会。
かつては人が憩いの場所にしていた公園。
ただあるのは廃墟と木々。
コハクの住んでいる地域にはこんな廃墟街は無い。せいぜい校外に使われなくなった校舎があるくらいで、まして教会の廃墟など無かったはずだ。
それが。ここにはある。
そしてあることに気がついた。これらの廃墟には見覚えがあるということに。
あの建物は小さい頃住んでいた社宅。
あの建物は卒業した中学校。
あの公園は小さい頃遊んだ場所。
「そんな……」
そして周りをもっと良く見渡す。そう。この人の居ない街。それはコハクが住んでいる街だった。
「驚いた。こんなところに人間が居るなんて」
突然。少女の声。だがそれは聞きなれたものではなかった。
振り返ると、そこには背の低い少女。短いスカートに腰にはシャツを巻いている。茶色の髪は肩に掛かる程度の長さ。
「あ……あんた」
「な、ここはどこなんだ? なんでこんな廃墟ばっかりなんだ」
疑問をぶつける。自然と声が大きくなった。
「ここ? さぁ。あたしも知らないわよ」
そっけない返事を返しながら、歩み寄ってくる少女。そしてそのままコハクの横を通り過ぎた。
「どうする? そこに突っ立ててもいいけど、元の世界には戻れないわよ」
「あ、待って」
慌てて少女を追いかける。
…
ただ少女に付いて行く。それしかコハクにできることは無かった。ここがどこだか分からず、なぜ自分がここに居るのかも分からない。そんな状況で頼れるのは目の前の少女だけだった。
「なぁ、ここはどこなんだ?」
「さぁ。あえて表すならフレイジアってところかしら。壊れた世界」
「さっきから廃墟ばっかりだ。それに全部見覚えのある建物だ」
「行ったでしょ。ぜんぶ廃墟よ。私達の世界が廃墟と化した世界なの。どこにも人は居ないわ」
少女が立ち止まる。そこは小さな二階建ての建物だった。 かつでは来訪者が来れば自動で開閉していたドアも、今は常に開きっぱなしだった。
建物の奥に進んでいく。いくつかの部屋があったが、その中に一つだけ、土も誇りも積もっていない部屋があった。
家具は古びれたソファーと机だけだった。そのソファーにバタンと座り込む少女。
「ああ、自己紹介してなかった。私姫乃マオ。で、あんたは?」
「あ、ええっとコハクだ。弓塚コハク」
「それにしてもまぁ同情するわ。あたしは望んで着たけど、あなたは偶然来ちゃったんでしょ? 残念だけどあたしは帰る方法を知らない」
「どういうことだ? ここはそもそもどこなんだ? 帰れないって。そんなに遠いところなのか?」
「未来か過去か、それとも平行世界か。とにかく元の世界ではない別の世界よ」
どうやら。俺はいきなり普通の高校生活からSFファンタジーの世界に迷い込んでしまったらしい。
「俺……どうすればいんだ?」
「さぁ」
マオは机に置いてあったペットボトルを開けてそれに口をつけた。
「まぁ、あたしはいずれ帰れるから、そのときは一緒に連れ帰ってあげるわよ」
「いずれ帰る?」
「そう。この世界でやるべきことを成し遂げたらね」
「やることって?」
「五つの指輪を集めて、命を手に入れる」
「え?」
意味が分からない。五つの指輪? 命を手に入れる?
「いったでしょ。あたしは望んでこの世界に来た。この世界で五つの指輪を集めれ『命』を手に入れることができるの。それがあたしの目的。この世界に来た理由よ」
「命を手に入れるって?」
「そのまんまの意味よ。死人を生き返らせることもできるし、寿命を延ばすことだって可能よ。一人分の命を手に入れられるの」
「よくわかんないや。わかんないことだらけで頭がおかしくなりそうだよ」
「ま、それが当然の反応ってとこね」
マオは近くにあったバックを持って立ち上がった。
「あたしは探索の続きをしてくるから。お腹空いたら適当にその辺のもの食べてていいよ。ろくな物無いけどね」
部屋を出て行く。
それを止める言葉が見つからず、コハクは部屋に一人取り残された。
…
することが無いので、建物の中を探索してみる。
元々は塾か何かだったのだろうか、辞書や参考書がところどころに置いてある。だがほとんど読めなくなっている。案内してもらった部屋と二階の一室以外の全ての部屋の窓ガラスは割れており、雨風に晒されている。
そして、壁に一枚の紙を発見する。カレンダーのようだ。ほとんど文字は見えなくなっているが、かろうじて読める文字がある。
2■17■
上部に太字で書かれた文字。
「17?」
読めない文字はおそらく『0』と『年』。ここは2017年? 俺らの時代から十年後?
未来? ここは未来の世界なのか? いや……そう考えるのは早計だろう。このカレンダーが本物とは限らない。
「ちょっと外出てみるか」
外を見渡す。廃墟、廃墟、廃墟。あっちもこっちも廃墟。
やはりこの町並みにも見覚えがある。やはりこの風景も自分が住んでいる街に似すぎている。
「どーなってんだ……」
…
マオが建物に戻ってきたのは、それから一時間ほど経ってからだった。
「ええっと、で、これからどーするの?」
ソファに座ったマオが乾パンを食べながら言った。
「いや……どうって言ってもまだ状況がわかんないし……」
「そう。じゃぁ状況が分かるまでくらいなら面倒を見てあげてみわよ」
「ほんと?」
「まぁ」
「ありがとう。ほんと助かる」
「ただし、それなりの仕事はしてもらうから」
「仕事?」
「そう。仕事。主に荷物持ちのことだけどね」
「まぁ、いいけど。そうだ。指輪を集めるって言ってたよね? それどういう意味?」
「ああ……それ。この世界にあるといわれる五つの指輪を集めるの。それがあたしの目的。この目的を果たせば元の世界に戻れるから、最悪でもその時になれば帰れるわよ」
「五つの指輪……」
「でもさ。参ってんのよ。まだ着たばかりだけど、ここには食べ物といえば缶詰くらしかないのよ。今はまだいいけど、数日で食事が苦痛になるね……」
甲板に入ってる氷砂糖を舐めながらいうマオ。
それきり黙りこむ二人。
気がつけば太陽は沈みかけていた。
ふと時計を見ると、すでに十二時を指していた。
「あ、もうこんな時間。そっかこの世界と現世の時差は五時間。こっちでは夕方でも、現世では深夜か……」
「じゃ、おやすみ」
「って、え?」
「あ、この部屋では寝ないでよ? 二階の部屋にソファーあったからあっちで寝てね」
マオはソファーに寝転がった。
確かに、もうかなり眠い。
欠伸をしながら二階に登るコハクだった。




