ライムⅦ
「っ!」
元領主達のその目を見た瞬間、私の背に悪寒が走った。
それは今までもずっと私に危機を知らせてくれた感覚。
このまま元領主達の話を聞いていれば確実に何か良くないことに巻き込まれるという確信。
「……屋敷には我が父の形見があるのです。例えこの国から追放されることになってもその形見だけは……」
……しかし、そう語る元領主達の表情は悲痛そのものだった。
その口調からは父親への親愛に、そしてその父親から引き継いだ家から追放される無念が籠っている。
そう、この元領主達の殆どが自身の父親を追い立て、領主の身分を剥奪したことを知っている私でさえ騙されてしまいそうなほどの。
「そう、ですか……」
そしてそんな元領主達の態度を見ながら私は悟る。
これが元領主達の本当の才能なのだと。
相手により自分を小さく見せ、警戒心を解かせる。
それこそが、元領主達の本当の実力で、今まで尊大に振舞っていた時活かせなかった能力。
「はい……どうか、この私めらに少しのお慈悲を……」
そして今、異常な程に卑屈になる元領主達が何を考えているのか、私は全く読み取ることができなかった。
私はその態度に、先程までの酷くわかりやすかった元領主達の姿を思い出し、苦々しい思いを胸に抱く。
確かにこんな態度を取られれば、元領主達が国王と結びつく以前に、私が彼らの不正に気づいたとしても摘発することはできなかったかもしれない。
「っ!」
しかし、元領主達が私達のを恐れ、少し程度の不正をする程度ならば決して深刻な問題ではなかった。
その際には元領主達は自身の力量を正確に判断し、私達に異常を感じさせるそんな態度をとる心配はなかっただろうから。
「どうぞ!お情けを……」
けれども今は違う。
元領主達はこの国が見逃せないとそう判断するほどの力を有している。
今ここで元領主達が屋敷に戻ることを禁じるのは容易い。
けれども問題はそれだけでは終わらない。
何せそれだけの何かを未だ元領主達が隠している可能性があるのだ。
そんな状況で見て見ぬ振りはできない。
けれども、元領主達からは何を隠そうとしているのかそんなことが全くわからなくて……
「……一応言わせて頂きますが、隠し財産はもう既に没収させて頂いておりますよ」
……そして最終的に私の口から出たのはそんな負け惜しみのような言葉だった。
元領主達が隠し財産が未だ屋敷にあるなんて流石に思えない。
状況から考えて、そんなことを考えているはずなんてなく……
「っ!」
ーーー だが、その私の予想を裏切るかのように次の瞬間、元領主達の顔が歪んだ。
「えっ?」
◇◆◇
「ふざけるな!ありえない!あれは専門の人間を雇って絶対に見つけられないように隠したんだぞ!」
……隠し財産はすでに没収された、そのことを悟った元領主達は未での態度が嘘のように怒鳴り始めた。
そしてその様子を見て、流石に私は頭を抱えたくなるような衝動に駆られる。
一瞬、私は元領主達に対して実力を認める的な考えをおぼえていたが、一点特化すぎる……
何せ私に隠し財産のことを言及された途端、全てを勝手に自白し始めたのどから。
財産は誰にもばれないような場所に隠してあるという話から始まり、それがどこに隠されているかまで。
……いや、隠し財産の件が鎌かけだったとか何故考えないのか?
そう考えた私の口から、思わず溜息が漏れだしていく。
「はぁ……」
確かに隠し財産のありか、それは専門の人間によって隠されていた。
けれども、その屋敷に隠し財産があることぐらい誰だって認識している。
何せ元領主達が自分から自慢していたという情報を私はすでに入手しているのだから。
……それも平民から。
つまり元領主達は平民にまで自慢していたと言うことだ。
なぜそんな状態で未だばれてないと思えたのか、こちらの方が聞きたいくらいだ。
さらに元領主達が隠し財産を隠すために依頼した人間、彼らは全員家族を人質に取られていた。
なんでも高額の依頼料を払うのを渋った元領主達が、平民の分際で、と家族を監禁して無料で仕事をさせたらしい。
そしてそれから味をしめた元領主達はその人間達の家族を解放することなく、度々無償で強制的に仕事を依頼していたらしい。
そしてそんな状況にある人間が元領主達を支持するわけがなかった。
というか当たり前の話だが憎んでいた。
「……えっと、カルバスに聞いたところによると、屋敷についた時にその専門の人間が駆け寄ってきて家族の解放を条件に隠し財産のありかを丁寧に教えてくれたそうですよ」
「なっ!」
喚く元領主達が流石に鬱陶しくなって、私はそう投げやりに呟く。
そしてその私の言葉にようやくほんとうに隠し財産ないことを悟り、ようやく元領主達は静かになった……




