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ライム VI

「ふざけるな!私はそんなこと知らない!帰らせてもらうぞ!」


「そうだ!これは何かの間違いだ!私達は領主なのだぞ!」


ようやく私の企みを全て悟った元領主達がとった行動、それはあまりにもお粗末なものだった。

強引に全てを無かったことにして領地、いや元領地に戻ろうとしたのだ。

先程まで私に対して尊大な態度を取っていた元領主達。

けれども今はそんな態度が信じられない程彼らは焦っていた。

当たり前だろう。

何せ国家反逆罪はかなり大きい罪で、財産没収に死罪さえあり得るのだから。

そして財産没収されればもう目の前の元領主達にはなんの力もなくなる。

そんなことを彼らは認めるわけにはいかない。

認めて仕舞えば全てを失ってしまう、そのことをわかっているのだ。


「裁判官と言ったか?私達は何もしていない!全てこの女が私達を妬んで罪を押し付けようとしているだけだ!」


「そうだ!私達には何の罪もない!よって直ぐに領地に戻らせてもらう!」


だから元領主達は必死に言葉を重ねる。

どれだけ言葉を重ねようともう手遅れなことぐらい元領主達が一番理解しているだろう。

何せ、罪を認めるようなことを裁判官の前で堂々と口にしているのだ。

今更そんなことやっていませんでしたなど、通用するはずがない。

だが、それでも元領主達は必死に言葉を重ねる。

なんとか自身の財産を守る為、必死に言葉を重ねる。


「そこを退け!私達は領地に戻ると言っているだろうが!」


その姿はただただ惨めだった。

焦燥を顔に浮かべ、なんとか領地に戻って財産を少しでも回収する為に強引にこの場を突破しようとする元領主達。

その姿には最初私と話していた時の余裕など一切存在していなかった。


「私達を誰なのか知らないはずがないだろう!痛い目に遭いたくなければそこを退け!」


本当に同じ人間だったのか、そんな疑問さえ感じる態度で、それでも元領主達は必死にもう効果がない過去の栄光を振りかざす。


「もう諦めたらどうですか……」


そしてその元領主達の態度に私は自然とそう声をかけていた。

私の言葉を聞き、元領主達の顔に隠しきれない恥辱が浮かぶ。

けれども元領主達は私の言葉が聞こえていないかのように必死に装い、急いで自身の財産が置いてある屋敷に戻ろうとする。

そしてその諦めの悪い元領主達の姿に裁判官は大きく溜息を漏らし、そして懐から一つの宝石を取り出した。


「今から戻ってももう手遅れですよ。丁度今、貴方方の屋敷ではライム嬢の婚約者様が、財産の没収を行なっている頃でしょうから」


「なっ!」


その宝石はこの世界で唯一遠距離で連絡を取り合うことのできる魔力石と呼ばれる道具。

そしてその宝石で私達は元領主達が国家反逆罪にされた時にカルバスと連絡を取って屋敷には襲い掛かって財産を没収するようことを決めていた。

そのことをを目の前に差し出された宝石で悟った元領主達は、私達の言葉が嘘でないことを知って言葉を失う。


「全てが終わった……」


そしてそう呟きながら崩れ落ちた元領主達の姿に、ようやく諦めたかと私は安堵の息を漏らした。

何せここまで来るのに準備を合わせればかなりの時間と労力をかけたのだから。

しかもどころところ危なかった場面もあったのだから、ここまで来るまでに私の疲れはかなり溜まっていた。


「あと一踏ん張りね……」


……そしてそう達成感に満ちていた私は気づいていなかった。


「……絶対に、許さない」


まるで全てを失って落ち込むかのように俯いていた元領主達。

彼らの顔は憎悪に満ちていたことに……








◇◆◇








それからカルバスが全ての元領主達が の屋敷から財産没収するまで数時間もの時を要した。

そしてそれまでに私達は元領主達をこの国から追放することを決め、カルバスからの財産没収官僚の指示とともに元領主達へと伝えることに決めた。


「そう、ですか……」


そして私たちがそのことを伝えた時、元領主達は今までの尊大さが嘘のようにおとなしかった。


「……死刑よりはマシですね。ここから私達は自分を見直して行かないと……」


そして追放という、その刑罰を聞いても全く取り乱すことはなかった。

追放刑というのは死刑という刑罰よりはもちろん軽い。

けれども死ぬ危険が高く、元貴族に課すにはかなりきつい部類なのだ。

それなのに元領主達はなんの文句を言うことなくそれを受け入れ、それどころか私を突然持ち上げ初めて……


「何がのぞみですか?」


そしてその時になって流石に元領主達の様子がおかしなことに私達は気付き始めた。


元領主達の態度、それは決しておかしなものではなかった。

今まで絶大な権力を有していたものが一度にその力を失うとまさにこんな状態になるのかもしれない、とそう思ってしまうような態度を取っていた。

それには全く違和感はなかった。


けれども、私まで持ち上げ始めたそれは明らかに異常だった。


そして全てが終わったと油断しかけていた私は気を引き締める。

何を元領主達が望んでいるのか、そんなことは私にはわからない。

けれども一手でも間違えれば逆転されかねない、そう考えられる程の力を元領主達は持っていて……


「では、一つお願いしてよろしいでしょうか?」


そして警戒心を上げる私に、元領主達は未だ消沈したような表情のまま、口を開く。


「私達を一度、それぞれの屋敷に戻させて頂けませんか?」


ーーー しかし、そう告げた時その目には未だギラギラとした光が宿っていた。

更新遅くなり申し訳ございません!

次回の更新は一週間以内にはさせて頂きたいと思っております!

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