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その後 プリマ Ⅱ

ライム様と王子が路地裏にいる様子、それの光景を見た時私は酷い不安を感じた。

その理由は王子の何処か歪んだライム様への愛情を私は知っていたから。

ライム様はカルバス様が去ってから少しぼんやりするようになっていたから気づいてはいなかったが、王子は常にライム様の側にいてどんよりとした酷く気持ち悪い視線をライム様に送っていた。

その王子に気を取られすぎたせいで、私達は元国王が何を企んでいたことを知るのが遅れたのだ。


だが、今元国王のあの蛮行を知っている今でも私は正直王子の方が怖いと感じていた。


「どうしよう!」


そしてだからこそ、ライム様が王子と一緒にいる姿に私は一瞬頭が真っ白になった。

直ぐ様誰か人を読んで来なければならない、そう頭はではわかっている。

だがそれでもここを動いてしまえば王子にライム様が連れ去られてしまう気がして私は動くことが出来なかったのだ。


冷静になれば、今まで勉強勉強で全く運動をして来なかった私がこんな場所にいても何の意味もないことくらい分かっただろうに……


だがその時の私は酷く焦ってまともな思考ができない状態になっていたのだ。


「えっ?」


ーーー そしてその状態から私は、躊躇なく王子に手を挙げたライム様の姿によって冷静さを取り戻すことになった。







◇◆◇







何を、してるんですかぁ!と一瞬ライム様に向かって叫びたい衝動に私は駆られる。

確かに今の王子の姿はただの不審者で、指名手配中だ。

だが、それでもまさか躊躇なく手をあげるなど想像出来るわけが無かった。

確かに今は指名手配中だが、それでも一応王子は王子なのだ。

………まぁ、捕まれば直ぐにその身分は正式に剥奪されるだろうが。

それにまぁ、ライム様の気持ちを考えれば王子に手を出してしまうのは仕方がない気がする。

正直、それくらい気持ちが悪い……

本当に何でライム様に自分が思われていると思っていたのだろう……

天地がひっくり返ることがあろうが、ライム様がカルバス様を想うのは変わらないだろうに……

って、また手を出した!?いや、今度は思いっきり蹴りましたよね!


「さすがライム様と言うべきなんでしょうか……」


見る見るうちにどんどんぼろぼろになって行く王子の姿を見て、私は思わずそう乾いた笑いを漏らしてしまう。

確かにライム様がある程度戦えることは知っていたが、それでも王子の癖に弱すぎはしないだろうか。

………よくそんな強さでカルバス様に敵うと思えたな。

そう私は最初ライム様の姿を発見した時とは打って変わって冷静に状況を見守っていた。


「っ!」


だが、突然変わった王子の纏う雰囲気に私は思わず絶句した。

今までの王子は何処か困惑というか、戸惑ったような感じでライム様を見ていたのだが、その視線の質が変わったように感じたのだ。

それは酷くどろどろとした悪寒がするような感じのもの。

憎悪とか、そう呼ぶべき感情が王子の中で膨らみつつあることに私は気づく。

正直、状況から見て王子はやっとライム様が自分のことを何とも思っていないことに気づいたということだろう。

そしてそのことに対する責任を全てライム様にぶつけようとしているのだ。


「そんな、逆恨み!」


私はその王子のあんまりな激昂の仕方に唇を噛みしめる。

勝手に自分が好かれているなんて思い込んで、そうじゃ無かったら相手のせい?

そんなの、誰だって好きになる訳がない!


……だが、その正論が今の王子に届かないことくらい私は分かっていた。


おそらく王子は何としてでもライム様に危害を加えようとするだろう。

それもライム様の全てを奪うために。

そんなことを許すわけにはいかない。


「くっ!」


だが、私にはどうすれば王子を止められるのか分からなくて思わず唇を噛みしめる。


「幾ら女の人を騙すためでも、行方不明の王子の格好を真似るのはやめた方が良いですよ」


その時だった。


「へっ?」


ラミス様が最後に本物の王子に向かって告げた言葉、それに私は目が点になった。

あれ?もしかしてあれは王子じゃ無かった?

ライム様はそれを見事に見破ったのかと一瞬考えて、私と同じように呆然とした顔をしている王子の顔にそんなことがないことを悟る。

ということは、もしかして……


ーーー ライム様が、王子の顔を覚えていなかったパターンですかぁ!


「え………」


確かにライム様がカルバス様がいなくなってから日々カルバス様のことだけを考えていたことを私は知っている。

何せ国王に手柄を奪われていることさえ全く気にしていなかった程なのだ。

どれだけカルバス様がいなくなったことがショックだったのかわかる。


だけど、まさか王子の存在さえ忘れてましたか!


「えっ、マーザス?」


と、時々それ誰みたいな反応を取っていたが、まさか本当に顔さえ覚えていなかったけ……


そして、一方の王子はこの世の終わりのような顔をしてへたり込んでいた。

まぁ……そうなるよね……

知り合いだと思っていた人間に覚えられていなかっただけでも辛いのに、自分を好きだと確信していた人間が実は自分のことを認識さえしていなかったて………うぷぷ


「あははっ!ライム様、最高ですよ!」


「えっ、プリマ?」


そしてそう考えている途中で思わず私は笑い出していた。

正直、王子に対してはライム様と強引に婚約を結ぼうとしたり、良い印象はいだいていなかった。

いや、はっきり言えば嫌いだった。

大嫌いだった。というか、気持ち悪かった。


「あはははは!」


でも、前まであれだけ嫌いだったのに今なら笑って許せる気がしてならない。

とにかく、その前に一言だけ。


ざまぁ!


「ぷ、プリマ何笑っているの……」


それから私はライム様の困惑した声を聞きながら笑い続けていた……

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