第1話 鈍感系の始まり
俺の名前は九重琥太郎どこにでもいる普通の高校生だった。
なぜ、過去形なのかというとそれは一ヶ月くらいまで遡らなければならない。
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「席替えするぞ〜」
担任教師の気だるげな声によって告げられた言葉に
クラスのバカどもが騒ぐ。
「よっしゃー席替えじゃー!!」
「うっさい、琥太郎」
そんなバカどもの一員である俺を静めたのは俺の小学校からの親友、後藤潤だ。
「でもよ、潤ちゃん。席替えってワクワクしない?
そう!オラ、ワクワクすっぞ!」
「つまんない、琥太郎」
つまんないとか言ってめっちゃ笑ってるの俺に見えてるんだよ。この声が好きなのはお見通しさ。
そして、席替えが終了し、俺は窓側1番後ろの席という最高の席を手に入れた。さらに俺の隣は桜丘春香さんっていう長い黒髪が美しい影で姫と呼ばれている、とにかく超美人さんだった。
「よろしく、桜丘さん」
「…よろしくお願いします、九重さん」
俺が挨拶すると、少し目を見開いた気がしたけど多分気のせいだろう。
気のせいではなかった。なかったよ!!
あれから、三日、桜丘さんめっちゃこっち見て来る〜〜!
そりゃね、俺も自意識過剰かなぁって思ったよ。
でもね俺が桜丘さんの方を向くと100%の確率で目が合う。そしてちょっと会釈する。それがいつものパターン。この人ノート書いてんのかなぁ。
分かった!そとの景色見てるんだこの人。多分、うんそうに決まってる。気のせいだ。
気のせいじゃなかった。なかったよ!!
体育の時も俺が帰る時も見て来る。なんていうことだ!よし、困った時は潤ちゃんに相談に限る。
「潤ちゃん、ちょいい?」
「ちょいいよ」
「これは、内緒にして欲しいんだが…」
「二人だけの秘密ってやつだね」
なんか妙に嬉しそうだな、こいつ。
「…まあ、そうだな、で本題なんだが桜丘さんって知ってるだろ」
「もちのすけ、同性からでもすごい美人だよね〜」
「その桜丘さんに、俺!めっちゃ見られてるんだ!」
俺の言葉に潤ちゃんが噴き出す。
「っぷぷぷっぷはぷはは、琥太郎面白すぎ!自意識過剰〜!」
「…潤ちゃんっ!」
ヤベェ俺のハートにヒビが…
「あっごめん琥太郎うそうそ、冗談だってば」
「っぐす、泣いてないし」
「はいはい、それで私が思うにそれは…ズバリ」
…ゴクリ
「一目惚れだっ!っぷぷ」
「な、なに〜〜⁉︎」
今、笑ってなかった?
「だがな、琥太郎よ。決して惑わされてはいけない。軽い気持ちで付き合ってはいけない。
気心の知れる、なんでも話せる相手でなければ付き合ったとして苦痛あるのみ!」
「っは!」
やはり潤ちゃんは色々知ってるな〜
「鈍感系を目指すのじゃ」
「ど、鈍感系?」
「鈍感系、それすなわちあらゆる事《誘惑》に屈せず、それに加え相手を傷つけることのない最高の奥義よ!」
「す、素晴らしい!」
「道は険しいぞ、琥太郎」
「どこまでもついて行きますとも」
ん、潤ちゃんの顔ちょっと赤い?
「……ど、どこまでもって」
「何て?」
「そ、そなたには素質がある。教えてしんぜよう
琥太郎、家に連れて参れ!」
「はっ!」
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