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冒険者シーナ 1

窓の外から聞こえてくるのは朝の訪れを告げる可愛らしい鳥の声。

窓から指す光は暖かでいて、春を感じさせるような陽気さを伴っていた。


しかしベッドで寝ているシーナはそのような情緒豊かな何気ない風景に気づくことなく眠っている。

いや、眠っていた。


「んっ、ムゴっ!? ゲホッゲホッ」


咳き込むと同時にベッドから上半身を起こす。

それと同時にシーナの体の上に乗っかっていた猫たちと、猫に比べて多少体の大きな、しかし猫のようでいて猫ではない生き物がベッドの上に落ちていく。

フニャッ! フゴッ! ニャッ!

各々がシーナに非難の目を向けるがシーナにはそれは眼中になかった。

猫っぽい生き物、ケットシーが顔の上に乗っかっていたため息が出来ていなかったのだ。

シーナは二酸化炭素を体外に出し、酸素を取り入れるため大きく息を吸う。


「なんでいつもいつもお前は朝になったら俺の顔の上に来るんだ」


シーナの非難を込めた言葉にケットシーであるニャムるが返事を返す。


「そんにゃこと言われても困るにゃ。ぼくらケットシーは寝相が悪いから仕方ないにゃ」


「寝相が悪いならなんで俺のベッドで寝るんだよ、お前らの部屋作ってあるだろ!」


お前らもな! と続けてシーナは猫たちにも告げる。

だが猫たちもニャムるも全く反省した様子はなく、皆して毛繕いしていた。


「聞けよ! 人の話を!」


「ご主人、猫に人の話はわからないにゃ」


「いや、知ってるよ! お前に言ってるんだよ!」


「ご主人の側にいると楽しいにゃ! だから寝るときも側にいたいのにゃ」


突然のニャムるの言葉に思わず感動してしまったシーナ。

だがそんな気分に浸るのも一瞬だけであった。


「ってんなことではぐらかされるかよ。毎日毎日朝起きるとき息できないし、目開けたらお前のチンチン見せられる俺の気にもなれ!!」


「ぼくのチンチンは村のケットシーの中でも一番大きいと話題だったのにゃ。だから毎日見てるときっと粗チンのご主人も人並みになれるのにゃ。むしろぼくに感謝してほしいのにゃ」


「何勝手に粗チンって決めつけてんだてめぇ! ……つーかケットシーの中ではでかいかもしれないけど、お前のチンチン親指くらいしかねえじゃん」


ハッと吐き捨てるように言うシーナ。

それに対してニャムるはヤレヤレといった態度をとる。


「ぼくのチンチンは人間の大きさで言うにゃら30㎝はオーバーしてるのにゃよ」


「それはでけえ!!」



ハハーとベッドの上でニャムるに土下座するシーナと、その胸を張って精一杯偉く見せようとするニャムる。



これが世界最強と言われる冒険者シーナのいつもの朝の始まりだった。





ーーーーーーーーーーー



「あら、おはようアナタ。それにニャムるに皆」


部屋から出て、リビングにやって来たシーナとニャムるそして猫達ににそう声をかけたのはテーブルに座っている金髪緑眼の身重の女性であり、シーナの妻にして『夜会』メンバーのキャンベルである。傍らにはメイド服に身を包んだ少女達が笑みを浮かべて立っている


「おっす、おはよう。今日も相変わらずキレイだな」


「おはようにゃ」


「「「「ニャーン」」」」


椅子に座りながら挨拶を返すシーナとニャムる、そしてテーブルの近くにあるエサ入れに飛びつきながらも律儀に挨拶を返す猫達に笑顔を向けるキャンベル。

数日前まで体調不良で寝込んでいたとは思えないほど元気に溢れた笑みだった。


「朝ごはんにしましょうか。ミミ、ナナよろしくね」


「「はい奥さま」」


キャンベルの言葉を待っていたかのようにミミ、ナナと呼ばれた少女達が厨房から朝食を乗せたカートを運んでくる。

ちなみにこの二人はキャンベルの傍らにいたメイド達ではない。また別のメイドである。

キャンベルの傍らにいたメイド達はミミとナナが運んだカートがテーブルの側に来てから俊敏に動いた。

スープ、サラダ、パンにオムレツをそれぞれの椅子の前に置いていく。

その動きはさすが長年、この家のメイドを勤めているだけのことはある。


「ご苦労さん。お前らもここで食ってけよ」


小さいときは躊躇いながらも聞き入れてくれたが大きくなってからは聞き入れてくれたことのない毎日三回投げ掛ける言葉をシーナは放つ。


「いえ、私達はシーナ様に拾ってもらい、育てていただいた身でごさいます。そのような無礼なことは出来ません」


その言葉に、一応家族として育てていたシーナはムッとするが口で勝ったことがないのでなにも言わない。


そんなシーナをキャンベルやメイド達はクスクスと嬉しそうに笑う。

顔に表れやすいシーナの気持ちなど皆わかっているからだ。


そんなキャンベル達を見てさらにムッとするシーナだったが、それを見られてさらにキャンベル達に笑われたので、気まずげに顔をそらすことしか出来なかった。



【00:01:20:15】

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