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小学五年生

そのゲームをはじめて経験する前の日。

僕は誕生日まえだと言うのに憂鬱な気持ちだった。

僕の誕生日は11月13日。

11と13……数占い的な事を齧っている人からみたら何と言うかとてつもなく不幸な星の下に産まれた人間らしいのだ僕は。


「皆さん。明日は13日の金曜日です」


三十路を越えた新婚の女はそんな言葉を最初に僕の比較的ピュアだった心をズタボロにする話をはじめた。


「13日の金曜日はとても不吉な事がおきると言われています。特にね、先生の昔の友達は11月13日の金曜日に事故にあってなくなりました」


先生がそう言うとクラスの一部は……所謂オカルト好きな奴らから好奇心で沸き立つような悲鳴があがる。

まあ、愉しんでいるのだろうさ。小学生ってそう言う幽霊っぽいのが大好きだしね。

でも、僕と仲の良い……そうだなAと書こうか?

兎に角、僕とAは微妙な表情を浮かべていた。


「あのセンコーってやっぱ空気読めねぇんだな」


Aはそう言って渋い顔をした。

しかし、この先生。別に空気を読まなかった訳でなく……。


「だから皆さん。明日は偽道くんの誕生日です!何か悪い事が起きそうになった時は、今日は偽道くんの誕生日だぞ!! と追い返しましょう!!」


何らかの祝福のつもりだったらしいのだ。

優しそうな微笑みで僕を見た先生を嫌いになった僕に咎は無いだろうと今でも思う。


そんな訳で憂鬱な気分のまま僕は何時ものようにAの家に遊びに行った。

当時の僕らはモデルガンを使ったサバイバルゲームに嵌っていて、何時も僕はAから短機関銃のを借りて近くの墓場の近くの公園で撃ち合いをしていた。

ほんと、何時も通りにやってるつもりだったんだ。

でも、そうやって遊んでると何だか見知らぬ女の子が墓場方から歩いてきた。

Aと僕は名残惜しいけどモデルガンをバックにしまって場所を移動した。

流石に、他の人がいる所で馬鹿みたいに撃ち合うほど阿保ではなかったのだ。

それから、6時を回って僕は門限がヤバイと自転車をとばして墓場を横切っていた。

墓場は家までの近道であるから良く使っていたのだ。


「……♪」


そんな中、そんな可愛い声が聞こえた。

幽霊なんて信じていなかった僕はその歌を歌ってる子に無用心だな……と子供らしからぬ理由で歌の子を探しはじめた。

よく、父に言われていたのだ。

「暗い中で女の子を見捨ててはならない 」と「女の子見捨てる男は男ではない」。

今思うとあの親父……フェミニストだったのではなかろうか?

まあ、兎に角僕は女の子を見つける事が出来た。

というか、僕とAが遊んでた公園に女の子がいた。


「何してんの?女の子がこんな時間まで遊んでちゃだめなんだぞ」


と、僕はまるで女の子を見下すように言った。

男は女を守って当たり前。女は弱いから男が守る。

そんな、古臭い考えを本気で信じていたのだ……僕は。


「……から……の」


女の子が何かを言った。正直、女の子の声は僕には聞き取れず、何を言ったか分からなかった。

ただ、まだ遊びたい……そう、言われた気がしたのだ。


「駄目に決まってるだろ。女の子は暗くなる前に家に帰るのは当たり前なんだ!!」


「じゃあ」


その時聞いた声だけは今でも鮮明に思い出せる。

普通、記憶と言うやつは簡単に磨耗するもんだと言うのに……その言葉だけは確かに聞いたし憶えてる。


「明日、遊ぼう」


その言葉を最後に女の子は墓場の方に走って行った。

変な奴。キモい。

そんな二つの言葉を僕は頭に浮かべながら家に帰った。


その日の夜。隣の妹の部屋から永遠と鳴り続ける玩具のステッキの音で目を覚ました。


「B。玩具煩い。消せ」


しかし、妹は返事もしない。

僕は苛立ちながら妹の部屋に入った。

妹は……女の子とは思えない寝相で布団を蹴っ飛ばしていた。

玩具は……ない。

不思議に思いながら、僕は音がなる方へ足を向けた。

それは、妹のクローゼットの上。透明なケースの中にあった。

忌々しくも七色に輝くステッキが。

苛立ちながら、僕は椅子の上に足を乗せてケースを引っ張り出し、止め方も分からないステッキから電池を引き抜いて事を納めた。

ああ、やっと寝れる……と。


そして、その日がやってくる。

俺はいつも通りの通学路を一人で歩いていた。

寝坊してしまい、妹も友達も既に学校の敷地内だ。

昨晩のステッキに悪態をつきながら僕は学校へと向かっていた。

そう、いつもと違かったのは……突然…車が通ってはならない筈の時間帯に…ゆっくりと車が走ってきて……僕を跳ね飛ばしたくらいだった。






結果だけを言うなら僕は無事だった。

まあ、左足を骨折しはしたが無事ではあった。

寧ろ、始めて乗る救急車に僕は感動すらしていた。

その後、ケーキを食えない事に気付いた僕は不機嫌になる事は別の話だが。


「またやろうね」


その日の夜。

夢の中で女の子にそう言われたのも当時の僕には気にする要素は全くなかったのだ。

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