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お仲間登場?③

 部屋に戻っていたメイリの携帯が鳴る。


 やはり部屋に戻っていた皇成からだった。


 「メイリ、ちょっと良く分からないんだがあれだ、組み手でもしないか?俺の格闘術を身につけるんだろ?ああ言うのは特に最初は一人じゃ出来ないものだからな。ヒト用のサンドバックも使い物にならんだろうし、でも俺がどの程度のパワーになっているのか分からないから最初は加減してくれよ」


 「ああ、うん」


 最初は意味が掴めずぼうっとしていたメイリだったが急に目に光が戻ると携帯を取り上げ綾奈の番号を押す。


 「動きやすいカッコであの広い部屋に集合!」


 はっ?と問いかける綾奈を無視して電話が切られると綾奈もとりあえず着替えて廊下に出てみる。皇成がメイリの部屋の前で所在なげに立っていた。


 「大きい部屋に集まってだってさ」


 「えっ?綾奈もか?まっいいか」


 もっさりした雰囲気で建物の奥へ向かう。綾奈はちょっと懐かしさに囚われていった。なぜなら皇成は格闘訓練に入る前は異常に動作がノロいのだ。


 もちろん遅過ぎてウザい事は無いのだがもそもそと構えて爆発的に動き始める。


 特に意識して見ていた事も無いが考えてみれば印象深い、そんな兄が思い出された。大部屋に入って少しするとメイリがイリーシャスと入ってくる。二人とも、メイリは例によって、だが、学校の体操着のような格好だ。


 「またかよ?えっとどこから持って来たんだ、その服?」


 「はっ?おかしいの?」


 彼女は聰明だ。彼女はこの疑問の回答を綾奈に視線で求めた。


 「…………」


 無言で回答する綾奈。


「動きやすいんだからイイでしょ」


 赤い顔をして蹴りかかるメイリだが興奮しているようでしっかり加減はしている。皇成がいかに強くてもヒトで有る限り一撃で蹴り殺してしまう。


 ガッ


 左腕でブロックする皇成。


 その時メイリは放った右足に異常な痛みを感じる。


 これは?


 ヴァンパイアもアンデットも肉体的にはヒトである。強い力を出せても例えば銃弾を弾き返せる訳ではない。


拳銃弾を5、6発食らったところで死ぬ事が無いどころか貫通していれば2日もあれば完治してしまうだけだ。


 ただ、ヴァンパイアとアンデットの防御力の違いにヴァンパイアは磁界で全身覆いバリアの様な使い方が出来る者がいる。


 メイリも出来るが銃弾を弾く程では無くアンデットのまともな一撃にも耐えない程度だ。


 実はヴァンパイアはあまりに強い為に痛みと言うものをあまり知らない。ヒトはもちろんアンデットにも軽く勝てるのだから当然だ。


 ヴァンパイア同士は基本的に喧嘩などしないため日常的な痛み以外感じる機会は無いのだ。


 メイリはエリコム社の武器開発の為にある程度武術を学びその過程で叩かれる痛みを知っているがあくまでも訓練なのでたかが知れている。


 皇成に受けのパッド無しでガードされたのが、打手であるメイリのダメージの方が大きい位になっていたのだ。


 「ハッハッハッ」


 それでもメイリの蹴りは美しく決まっている。その威力は本来一蹴りでヒトを20Mも吹っ飛ばすものだから相手が今の皇成で無ければ無敵と言える。


 「ハッ」


 若干角度を変えて脇腹付近にヒットさせるとようやく3M程度後退させる事が出来た。


 皇成の表情が変わり我流とは言え威圧感の有る構えをしっかりと取り直す。


 磁界バリアは受けたトルクを反作用で打消してしまうから、皇成の腕のバリアが特に強い証拠であり、しかもこれだけのバリアを展開出来る者はヴァンパイアでもあまりいないと思われた。


 皇成の攻撃が始まる。切れのよい左右の拳はメイリには当たらない。避けられているのではなくフェイントだ。自然と上半身に注意が行っているメイリの足にミドルキックを入れた。


 メイリも磁場バリアを展開しているからヒトである皇成の蹴り位ではビクともしない。足に蹴りを当てられながらも反対の足を回し蹴りで飛ばして来る。


 左手でガードした皇成は右拳をメイリの顔面に放つが軽くガードされる。


 皇成の動きの良さは所詮ヒトの力である事を別にすればいまさら当然だが、メイリも早い。もともと決して素人では無いが、動きだけ見れば皇成にも劣らないし、圧倒的なパワーを考えれば本気でやり合えばメイリの勝ちと思われる。


 その時、端で見ていたイリーシャスは皇成の目がわずかに赤くなっており、より純粋な戦闘衝動にかられてい事に気付いた。


 組み手の範疇を越えてきた本気の競り合いに興奮してきたらしい。皇成のフーッフーッと言う動物的な息づかいにイリーシャスは漠然と不安を抱き、とりあえず組み手を止めようとするが、イリーシャスが行動に移す前に態勢を整えた皇成がヒトの限界を超えたスピードでメイリの前に立ち


 「ウオッ」


 と言う短い叫びと共に猛然とメイリの側頭、肩口、脇腹に文字通り目にも止まらぬ速さで拳を叩き込む。メイリの身体が動かぬ様に左手でメイリを掴みながらだ。


 3発の直撃で完全に意識を失ったメイリが崩れ落ちる前にまた目に止まらぬ速さの回し蹴りが決まりメイリの身体はそのまま10M程離れた壁に叩き付けられた。


 壁のボードが粉々に割れ散る勢いでだ。


 「イヤッ」


 綾奈が思わず声を漏らす一瞬前、皇成が回し蹴りの挙動を始めた時にイリーシャスは飛び出している。


 飛ばされたメイリと皇成の間に立ち両手を開いて手刀をつくり顔の高さより少し高くに持ち上げて構えを取る。皇成から放たれる拳を払うように受け流し前蹴りをヒットさせた。


 が、腕で受けなくても皇成はビクともしない。


 イリーシャスは皇成が続いて放つ3段蹴りを受け流すがその後信じられ無いスピードで打ち込まれた回し蹴りをまともに食って飛ばされる。


 しかしうまく着地したイリーシャスが反撃に出ようとした時に、その間に今度は綾奈が飛込んだ。


 赤く光る眼には涙をいっぱいに浮かべ髪を白銀に輝かせて立ちはだかる。


 それでも皇成が我を失った様に戦闘態勢を崩さず綾奈にまで殴りかかろうとした時


 「止まれ!」


 と大きな声でイリーシャスが叫ぶと頭に殴られた様な衝撃を受けた皇成はもう少しで綾奈に拳を届かせようとしたところでうずくまる様に動きを止めた。








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