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友達はオタク系です

 「あふっ」


 3時間目が終わった休み時間、堪え切れない眠気で彩奈は小さくあくびする。


 「珍しく眠そうじゃん、あっやなー。」


 元気な千亜美に背中を叩かれたのは肩にかからない程度の髪に奥二重で大きめの目が印象的な少女だ。下条綾奈、日本アグレム教国立学院中等部2年生だった。


 アグレム教国はイレスシス教の総本山と言うべき宗教国家でイレアニスト共和国の都市ロムニに接して国土を持つ。国土と言っても法王の座する王宮を中心として広場や公園が存在し、それを取り巻くように2000人程度が住む街並みを持つだけの半径10キロ程度の面積しか無いが、国と定まったのが紀元200年頃とヨーロッパ最古と言える歴史を持ち世界中からイレスシス教会を通じた寄付金の上納があるので財政は豊かだ。


 もちろんその資金は貯め込むでも増やそうとするでも無く養護施設を世界中に展開したり布教活動も兼ねる各種学校の運営費に当てられる、言わば世界最大にして唯一の慈善事業を目的とした国家でもあった。


 綾奈は幼い頃から両親がおらず日本でアグレム教国が展開している養護施設で育った。2年前に綾奈がいた施設が閉鎖になって以来、やはり亡くなっている両親は日本人なのにアグレム教国籍を持ち後見人である、下条皇成を兄として名字を下条に変えてアグレムの援助を受けながら2人で暮らしている。


 生きて行く手段と言う悲壮感は無くアグレム教国に大きく感謝しつつ、アグラムの要請で兄と共に特別な訓練を積む毎日だった。イレスシス教の敬虔な信徒と言うほどでも無いが、幼い頃から親しんだ礼拝は生活の一部である一方で一神教であるレスシス教は多神教である日本の宗教にも寛容で、友達と初詣だって行っている。


 「眠そうだねぇ。どんだけ勉強したんですか~それともアニメの見すぎかなぁ。」


 いつもかなり元気がいい飯倉千亜美がからんでくる。次に聞いてくるのはいつも同じセリフだ。


 「「彼氏でもできたの~」」


 「またハモるし」


 千亜美は下唇を突き出して抗議するがすぐ気を取り直して


 「「つか、そうなの?」」


 綾奈は千亜美のセリフをお見通しで連続ハモ完遂。


 「ベソベソ~もぅイイもん。ねえねえ、昨日アリコレ見た?」


 アリコレとはアリスコレクションと言うアニメ番組だ。


 「昨日は見れなかったんだ。眠くて寝ちゃった。録画はしてあるから今日か明日見るつもり。」


 「そっかぁ。」


 だいたい疲れているからとか以前に26:15から放送というタイムテーブルに違和感は無いのだろうか。普通の中高生に対応出来る限界を超えていると綾奈思う。とは言えアニメは好きなのでいつも録画してまとめて見たりしている。千亜美ときたらお気に入りのキャラのお気に入りシーンをキャプチャして高画質紙にプリントアウトし、自作カンバッチにしてかばんにくっ付ける位なので勢いについて行く必要は無い。


 延々とキャラ名を並べ立てる千亜美は成績は中の下なので記憶力使い方が違う気がする。千亜美は深夜アニメを見る不摂生が祟るのか授業中はいつもウトウトしているが綾奈は真面目に受ける方だからいつもはなんとかノートは取っていてテスト前にノートを千亜美に見せたり写させたりするのは恒例行事だから、綾奈は罰としてコンビニコピー禁止令を出して苦労して手写しさせるのだ。もっとも貸出して一晩単位で持ち帰っているのでコピーしているかもしれない。意地悪するつもりでは無いから問い詰めたりはしないが。


 「あっ授業始まっちゃう。」


 トイレにでも行くのかパタパタと立ち去るあくまでも明るい千亜美はよく笑うし結構可愛い。ちょっと鼻が丸いけどくっきり二重でクリクリした目は愛嬌の塊だ。


 それでも彼氏どころか友達すらあまり出来ないのは極度のアニオタだからだ。主に深夜アニメ派でBLは好まないが民放コード通っていればOKとか誕プレには「魔物が倒せる剣が欲しい」とかとにかく思考がマニアックに過ぎる。


 それでも世の中アニメ好きで千亜美よりアニメに詳しい男の子などゴマンといるのだろうが


 「「クール・ザ・ナイト」の慧さんみたいに優しくて強くてミステリアスで……あっでも柳楽ゴウくんでもイイかもっ。」


 慧さんと言うのはアニメの主人公で柳楽ゴウくんは一番人気の実在のアイドルだ。ジャガーズ事務所のアイドル以上にカッコ良くて格闘技は全国大会レベルでなんとなく影があるアニメ好きの男の子など存在するものか。


 千亜美は痛いと言うより壊れているのかも知れず、女の子同士でもあまりつきあいが無いが、虐められる訳でも無い辺りは生まれながらの愛嬌者なのかも知れない。


 うつらうつらしながら授業を終えて放課後になると部活に入っていない綾奈はだいたい真っ直ぐ帰る。


校舎を出て校門に向かっていると


 「綾奈ぁ。一緒にかえろうよう」


 とアニオタ少女が声をかけてくる。


 「そういえば昨日お兄さんが迎えに来ていたね。」


 「うん。昨日は急な用事が入っちゃって学校には具合が悪くなった事にしてるけど本当はお兄ちゃんの仕事のお手伝いだったの。悪いけどどうしてもって。内緒にね」


 用事は依頼主がアグレム教国の様なものなのでもちろんズル休みも何もないが、一応話を合わせておく。


 「仕事?中学生なのにバイトしてるの?いっけないんだぁ、何やってるの?」


 「私にも良く分かんないんだけど。もともと教会とお付き合いがあってそのお手伝いみたいな。私がやったのは軽い荷物運びとか車の運転席でお留守番とかだよ」


 大嘘だ。綾奈の初出撃であり奴らが確認されたのが車で2時間位かかる地方都市だった為に放課後まで待て無かったのだ。


 常に全国を監視しているがあまりに遠い場合は別の班が対処する。しかし昨日の初勝利によって出番は飛躍的に増える事が予想される。会敵生存率20%以下で敵を倒せた事もないと言うほとんど死刑宣告に等しい過酷な任務。そんな戦闘とさえ呼べない闘いでも志願する元自衛隊員を始めとする班員達。


 それが綾奈の参加で負傷者こそ出したものの生存率100%でしかも対象を完全に撃破したのだから当然出撃要請が来るのは道理で有り必然だった。


 「帰りが遅かったので今日は超ネムネムなのよ。とにかく帰って寝たいんだよね」


 綾奈の住まいは学校から近く歩いて20分位だ。千亜美は電車通学なので普通はバスに乗っている。綾奈の住まいは駅と同じ方向だったから途中まで歩いてそこからバスに乗るなり歩き通すなりの下校パターンがあったのだ。綾奈が一緒にバスに乗り駅前に遊びに行く事も有る。


 「うん。じゃぁとっとといこうよ。でさぁ、今シーズンはやっぱりゲンクリだよ。原作読んで無かったからソッコー2巻まで読んだけど良く出来た設定だね、うん。可愛いモンスターと怖いモンスターが……」


 ゲンクリとは「元気な陽さんと九里の架け橋」と言ういかにもラノベなタイトルが付けられた今季放送中の深夜アニメで綾奈も千亜美の攻撃に備えて予習していたものの内容は全く分からない。千亜美はお構い無しに話しを振ってくるが答え無くても文句言う訳では無いし綾奈もアニメは好きな方だから彼女の評価で見る作品を決められるメリットは有る。


 別れる交差点で直進する良美に手を振りながら左折して5分も歩くと見えてくるのが自宅の有るアグレム教国が所有するマンションだ。


 3階と4階はファミリータイプの間取りで2階は一人暮らし用のワンルームになっていて、綾奈達の他にも班員は住んでいるがほとんどは全く関係の無い賃借人が住んでいる。敵がこちらを探し出して襲撃してくる事は無い為に家賃収入が一種の投資としてアグレム教国の資金源になっているらしい。


 1棟はまるごと買っている訳で、お金があるんだか無いんだか分からない話しだったが、綾奈にとってはどうでも良く住まわせてもらっているだけでありがたかった。





この小説は既に16万字以上のボリュームを持って結末まで書き終わっており、現在改稿中です。と、カッコつけても全くの素人であり文体、ストーリーの流れ、設定に自信が有る訳では有りません。続きが少しでも気になる方はぜひその旨コメント頂ければと思います。なにしろタイトルも決められません(泣)(募集中?)

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