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犯人はだれ?③

 「お詫びに血吸ってもいいよ。ダンピールになってもいいかどうかはまだ分からないけどね」


 「ん…」


 牙を覗かせたまま瞳の色消したメイリ。


 「つか、首から吸うのか?ちょっとアレだな」


 「首から吸うのは恐いからヤ。首を咬み千切ったらどうしよって」


 「オイオイ」


 「だから腕出して」


 もしかしたらしばらく使えなくなる事を考慮して左腕を出すと


 「利腕はどっち?利腕を出して。大丈夫だから」


 と促される。右腕を出すと腕の裏側の手首より少し下辺りを軽くなでる。


 次いで舌を出して軽く舐め始める。


 たまにキスするように唇を吸い付かせ腕のその辺りは唾液でペトペトな感じになっていく。


 「麻酔効果があるの」


 確かにジンとしびれてきている感じが有る。


 たっぷり5分も舐めまわした後でおもむろに牙を立てて咬み始める。


 チクッとした気がしたが気のせいかも知れない。そのくらい痛みと言うものを感じる事も無く牙が挿入されていく。


 「うっ」


 痛みどころかしびれが身体に回ってきてむしろ気持ちいい。


 トロンとした自分の目に気付かずメイリを見下ろすと瞼を少し震わせながらじっと腕をくわえ込んでいた。


 何分経ったか気にならない間皇成は恍惚感に浸っていた。


 気が付くとメイリは口を離しそのままぐったりと床に頭を付けている。皇成も少し身体をずらすと変に近づき過ぎない辺りで横になり目を閉じるとたちまち眠りに落ちていった。


 「ん、んん、、」


 綾奈は結果的に一番早く休んだ事も有り皇成より早く目覚めた。


 「んん、えっと」


 昨日はいろいろな事が起こりすぎた。寝ぼけて聞いていた話しを思い出す。


 「やだ、帰るトコ無いの?学校行けないの?」


 考えている内に悲しい気持ちが込み上げてくる。


 コンコンとノックが聞こえた瞬間返事を待たずにドアが勢い良く開け放たれる。


 「おっはよう綾奈クン。調子はどかなあ?痛いトコとかないかなあ?」


 綾奈の気分に完全に逆行するやたら元気なメイリだった。


 「おっおはようございます。てゆうか私起きたの分かったんですか?」


 「んん?勘よカン。起きて昨日の事思い返してこれからの事考えてカナシイ気持ちになってるんじゃ無いかと思ってねえ。ちょっと明るく登場してみたけど違ってた?」


 綾奈は素に驚いて


 「全くその通りです。なんか凄いってゆうか凄すぎってゆうかそのまんまでした」


 「当ったりいだね。昨日あれから皇成とも話し合った。まだ結論は何もでていないけど私にも考えがあるしなんとかするよ。ヒトは感情の動物って言うじゃない?私達も一緒。前向きな気持ちを持った方が上手くいくって」


 「私達?私もついにヴァンパイアになりっぱなしになったって事?」


 「違う。まだよ。て言うか気に触った?気にならないと思って言ってみたんだけど」


 その時綾奈はメイリがすまない気持ちと困った気持ち、どうしようと言う不安な気持ちを一気に膨らませた事を感じる。状況的には落ち着いているので冷静に考える余裕があった。「メイリさんにも不安は有るんだ。私に気遣ってわざと明るく振る舞ってくれてる。でもなんだろ?メイリさんの気持ちをダイレクトに感じる。分かる」


 「ううん、そんなところを気にしてるんじゃ無いです。ヴァンパイアになりたい、とも思って無いけど本当の状態の知りたいなって思っただけですよ」


 と素直な気持ちを伝えた。なんだか自分の気持ちもメイリに伝わってしまう気がしたのだ。


 「そう。良かったあ」


 やはり、だ。今メイリは綾奈のヴァンパイア云々に喜んだのでは無い。綾奈が素直な気持ちを口に出した事に喜んだ、そんな気持ちが伝わってくる。


 「あのね、綾奈ちゃん。夕べね、皇成の血い吸っちゃった。ごめんね」


 「ええ!衝撃!なんでまた」


 「うん。血を吸うとね、そのヒトの能力が身に付く事があるの。100パアじゃ無いんだけどね。皇成はヒトにしては強いでしょ?その力が欲しかったんだ」


 「ふうん。美味しくはないよね。おなかとかこわさ無かった?」


 「ううん。おいしかったよ。皇成、いい奴だもん」 


 「うん、まぁ、良い人だけどね。そか。お兄ちゃんの血をね……」


 綾奈に嫌悪感は全く無い。少し羨ましくさえあった。


 「そろそろねぼスケが起きる頃だ。これを着て下いこ」


 メイリがさりげなく持っていた紙袋からTシャツにスエットの休日セットが出てくる。


 「今日少し着替え買ってくる。ちょっと我慢してねえ」


「我慢なんて……。ありがとうございます」


 下着類は最初から入っていない。綾奈の気持ちをしっかり察した着替えセットだ。綾奈は少し涙目にすらなってもう一度


 「ありがとうございます」


 と小声でつぶやく。これで少なくとも汗臭い恰好で兄の前に出なくて済む。それにしてもダボダボだ。メイリはもちろん太ってはいないしむしろ痩せているように見える。


でも綾奈よりは背が高いし歳上だしダボついて当たり前だ。当たり前なのにちょっと自分が残念に感じる。


 「メイリさん、ヴァンパイアが完全に発現したら成長が止まるんですよね。発現するのはいいとしてその時期をコントロールする方法は無いんですか?」


 「例としてはあったらしいよ。でも、もともと発現可能性がとても高い血筋で何かの事情で発現時期を調整しただけ。発現して引っ込んでなんて無かったか気付かれた事無かったんじゃ無いかな」


 「そうですか……。発現するのはもっと成長してからがいいなあ。長い間ずっと子供のままはちょっとなあ。でも今この力が必要なんですよね。どうしたらいいんだろ」


 「そんなの悩むトコじゃ無いよ。多分自分ではどうしようも出来ないだろうしね。うん、じゃあ一つだけ協力するけどもし戻るとは言え発現回数が多いほど完全に発現する可能性が高まる事が分かったらもう綾奈ちゃんは戦わせないわ。約束する」


 メイリは強い。今まではヒトの生死に興味が無かったから前面に出て来なかったが、綾奈の為なら全面協力すると言う事だ。


 「気持ちは嬉しいんですけどなぜ私の為に?もちろん私達だけでは足りないと思うから私とは関係無く協力はして欲しい、って事になると思うんですけど」


 「気持ちの問題よ気持ちの。アンデットやヒト相手ならそんなに頑張らなくても勝てる。アンデットの新しい奴らは手強いと思うけど最後に逃げようと思えば逃げられる程度。でもヴァンパイア相手じゃグロウで有るだけで敵う訳ないしイルサテであっても強い奴は強いだろうからアドバンテージはゼロよ。当たり前だけどね。ヒトごときの為なら自分の事を考えるけど綾奈ちゃんの為ならとことん全力でイク、ってコトね。理由は……綾奈ちゃんが好きだからじゃダメ?」


 「ダメな訳有りませんけど……」


 「なんだか話しがシリアスになってきちゃったね。いったんおしまいにしよ?大事な事だからまた話すけど今は皇成叩き起こしてどう動くか決めないとね。あんにゃろいい加減に起きろってんだよね」






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