表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/35

どんだけ強いんだヴァンパイア②

 皇成と綾奈が降り立った時に


「来た」


とインカムにメイリの声が聞こえた瞬間、メイリの姿が消える。通りの向こう80M程先のビル影から現れた2体のアンデットを皇成が認識した時は、既にメイリはアンデットの前にいた。と言うよりアンデットの前で止まったからメイリの姿が見えた事になる。


 そしてそれは強いとか勝てるかとかの判断を全く要しない勝負だった。


 まず1体に2本の剣を振り回しながら演舞の様な舞を見せて一瞬とさえ呼べない間でその五体をバラバラすると、塵に帰るのも見定めずに襲いかかるもう一体に向き直りやはり一瞬で塵とする。


 さらにその一瞬後には通りの中央付近に戻って辺りを警戒して見回していた。


「なんなんだ……圧倒的……じゃないか……」


皇成は思わず思った事を言葉でつぶやいてしまう。


「綾奈ちゃん、援護お願い」


いくらか真剣な声でメイリが囁く。


「はい」


綾奈がちらっと皇成を見てから前へ出る。綾奈はバイザーを上げており目は真剣に前を見つめている。


 「気をつけろ。あまり前には出るな」


 「うん」


 メイリのあまりの強さに皇成はとりあえず綾奈が出ても今まで以上の危険にさらされる訳では無いと判断する。


 綾奈はマシンガンを持った両手を前へ突き出し軽く腰を落としてゆっくり前進する。


 その様子は今まで所詮鍛えただけのヒトの女の子の筋力で支えるマシンガンが、いくら特製に軽量化していても綾奈の努力虚しく傍目から重さを感じさせるものだったのに、今日はプラスチックででも出来ているように軽々扱っている様に見える。


 その時綾奈の目がわずかに赤く色付いていた事を皇成は知らない。


タタタタタタタタ


ふいに綾奈が右手のマシンガンを撃ち始める。


 メイリをはさんで更に40M先に右肩付近から吹っ飛ばされたアンデットがいた。右肩から上半身の一部を失っても前進していたアンデットはふいに左側へ回避行動を取る。


 合わせて左側にマシンガンを振る綾奈だったがすぐに左手のマシンガンも撃ち始め右を撃ち止めた。射線がメイリと交差したためアンデットの身体が左に出るのを狙って、かつメイリには被弾させない。


 左手のマシンガンの弾が捉えてすぐアンデットの身体は塵となる。


「オッケーオッケー。その調子よ綾奈……」


言い終わる前に3方からほぼ同時の攻撃を受けるメイリ。だがやはり舞う様に乱舞すると2体が塵になり1体と対峙する。


 そこにもう1体が飛び出しさらに手前に出現した1体が綾奈に迫る。


 綾奈は自分に迫るアンデットを無視してメイリと対峙して動きの止まった1体の上半身を吹っ飛ばしてから自分に迫るアンデットに残弾を打ち込む。


 弾のトルクで少し後ろに吹っ飛ばされて立ち止まったアンデットは、最後に迫ったアンデットを塵にした後に戻って来たメイリが後ろから切り刻む。


 これで8体が殲滅された。最初にメイリが2体を塵にしてから3分と経っていない。もはやヒトの入る余地の有る戦闘では無かった。


綾奈とメイリがゆっくり無防備にこちらへ戻ってくる。 二人とも、もう付近にアンデットがいない事を確信出来る能力が有るのだ。傍観するだけだった班員達は本能的に2人に怯えて黙りこむ。皇成でさえ反応出来ずに半ば呆然としている。


「良かったわよん綾奈ちゃん。ハイハイ皇成さん、ご感想と気付いた事チェぇックのお時間ですよお」


気さくを装いながらにこやかに皇成に問いかけるメイリ。


「感想など無い」


やっと言葉を出している様だったが皇成はぶっきらぼうな声で質問を返す。


「まずアンデットはヴァンパイアを襲わないんじゃ無かったのか?どう見ても貴方を狙ってこちらには見向きもしないのは何故だ」


綾奈にも向かって行った個体があった事は無視して続ける。


「それと偶然かも知れないがメイリさんと綾奈はコンビネーションしている様に見えた。綾奈を守ってくれた事には感謝するがあれは何だ?偶然では無いのか?」


「ううん合格ごおかくう。さっすが隊長さん。ここはもう終わりだから帰ってゆっくり説明するわ。それまでに最後のキーワードも入ってくると思うし」


「最後のキーワード?そんな事は後でいいから今教えられる事は教えてくれ。コムネナもそうだったがどうしてあんたらはそう話しを延ばすんだ?」


コムネナの名にピクリと反応したメイリだったがいつもの調子で切り返してくる。


「それは時間に対する感覚の違いじゃなあい?私達はヒトの10倍近い時間が有るしそのほとんどの時間は体力知力が変わらない。そういう意味だと20倍の時間を持っているとさえ言えるわあ。あと2時間やそこら浪費してもどってことないのよねえ」


「まあ、いい。終わったのならまずは戻ろう」


「お家まで2時間位かかるかしら?」


「ああ、一般車として走るからな。なぜ気にする?時間はたっぷり有るんじゃないのか?」


「いろいろ事情が有るのよ。さ、帰りましょ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ