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どんだけ強いんだヴァンパイア①

 小さな地方都市とは言え駅前には20階程度のオフィスビルが立ち並ぶ商業エリアのはずれの一画。


 皇成達は赤を殲滅する会から通知があったポイントから約1キロの地点に車を止めて装備の最終確認をしていた。 アンデットはその後確認された数を含め計8体となっている。賑やかな繁華街エリアで暴れ回っており犠牲者も出ているため、もはや世間に隠し通す事は出来ないかも知れない。


 綾奈も車から降りて腰の後ろ2丁差しするので入れっぱなしで車に乗っているとイタイ為に外してあった特製マシンガンをホルスター納めた時最悪な通報が入る。


 情報を聞き付けたテレビ局のスタッフが現場に降り立ったとたんに襲われヒトはもちろん惨殺、中継車など横倒しにされたらしい。


「奴らの位置が分かったと言う事だ。急ぐぞ」


「待ってえ。私も乗せてってえ」


場違い明るく、しかもわざと微妙に色っぽいさを混ぜた声と共に女が駆けよってくる。


「メイリさん?」


インカムに綾奈の声が聞こえて皇成に正体を知らせる。


「メイリ?彼女がか?」


ヴァンパイアの存在自体知らない他の班員にもインカムは聞こえる事を思い出しとっさに言葉を選ぶ。


「綾ちゃん探しちゃったよお。私も現場に行くから乗せてってん」


皇成が一瞬答えを躊躇うと


「まっ自分で走って行った方が速いんだけどねん」


「乗れ。みんな、彼女は関係者だ。作戦に同行する」


「分かった」


 「わかりました」


皇成と綾奈、メイリの3人でセダンに乗り込む。


「急げ急げえ。あっ始めまして。ヴァンパイアのメイリちゃんと申しますう」


「話しは聞いている。今は疑うも信じるも無いけどそもそも何をしに来たんだ?」


「一緒にバカアンデットを潰す為に決まってるでしょ。先にやっちゃっても良かったけど、何て言うか私のこと知って貰うのにアピール度が低いって言うかインパクトが欲しくてねえ」


恐らく彼女だけでアンデットを殲滅することは可能なのだろう。


 ヴァンパイアには勝手に戦って勝手に倒すのがヒトの被害を最小限にすると言う発想は無い。力を証明したいなら確かに戦いぶりを多角から録画でもしてアピールしなければ凄さも伝わらないかも知れない。いずれにせよ今は一刻も早く現場に行きメイリの力を借りてでもアンデットを殲滅する事だけを考えるべきだ。


「ちょっと提案と言うかお願いが有ってね。必ず私が守るから綾奈ちゃんと2人で出たいんだけどお」


「駄目だ。あなたの実力も分からなくて承諾出来ると思うか」


即座に答える皇成。


「あちゃあ冷たいお返事ね。でもお、それもそおねえ。うんうん。じゃ、まず私だけで出るわあ。遠くから牽制するのはいいけど前に出られると邪魔なねよねえ」


「ありがたい話しなのかも知れん。だが何故急に肩入れするんだ?」


「理由はあるわよん。そして嫌でもすぐ分かるの。今は時間の問題も有るし私の言う事が聞けるかどうかねえ」


 皇成は運転しながらわずかな時間考える。昨日のコムネナにしてもヴァンパイアは少なくとも敵ではない。メイリが出ると言うことは少なくともアンデットに向かって行くと言うことだろう。くるりと振り向いてこちらに銃でも撃たれない限り彼女の動きを見定める時間くらいはある。


「ヴァンパイアの力は聞いただけだが今は期待通りであって欲しい。協力姿勢も信じさせていただこう」


「はあい、信じてくださあい。綾奈ちゃんは一応スタンバッてよ。私が出てって言ったときお兄さんの許可が出ればぜひ手伝って欲しいの。ゼッタイぜえったい傷つけさせないからね。それから撃つ時は私の事は気にしないで。さすがに集弾されたらたまんないけどパラパラ当たってもどってこと無いから」


「はい。いえ当てませんよ」


数分で横倒しの放送車の現場に到着する。


「もう、移動したのかな。」


「いるんじゃなあい?あいつらあまり移動しないでしょ。まあ今日いるのは今までとは違う理由かも知れないけどね。そう言えば皇成さんと綾奈ちゃんとだけ内緒話し出来るマイクは無いの?みんな知らないんでしょ?ヴァンパイアの事?」


皇成はインカムを一つ渡す。


「指揮官用だ。俺とは直通チャンネルがある。スペアは一つしか無いから綾奈は秘匿回線を使ってリンクさせる。」


「んじゃなっか良く内緒話しい」


メイリが車を降りて素早く二振りの剣を抜刀する。


「日本では鞘を置くのは覚悟の示しらしいわね。私は違うわよお。邪魔なだけねえ」


メイリは言いながらカーボン製に見える鞘を車に放り込む。皇成が見る限り刀身はポリカーボネート製であり握りは何かの金属だ。鈍い輝きからチタンに思えた。


 ポリカーボネート製のアタックナイフは存在する。金属探知機にかからないのはともかく確かに十分な硬度を有し、特殊部隊用は鉄板でも貫く使い方が可能だが、決して切れ味が特別高い訳ではない。ましてこの刀身80センチはあろうかと言う大きさと大剣のような幅と厚みはおもちゃならともかく本物の武器なら市販品では無い。


 もちろんデパートで売っていないのは当たり前で、地下の武器マーケットで売っていないと言うことだ。中世ではあるまいし今時武器として成立していない。


 メイリはこの剣を楽器ケースの様なハードケースに入れて背負っていたのだ。


 それはいいとして、考えてみればと改めて皇成は思う。そんな物を背負っているのも不自然だが服装が上下赤いジャージだった。肩から2本の白いラインが出ている中学生や高校生が体育の授業使うやつだ。


 突然現れてばたばたと今に至っているのでそれほど気にもせず指摘もしなかったが、何か意味があるのだろうか。




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