あなたはやっぱりアレですか?⑤
「自分達の特異な能力に気付いた人々はそれを仕事に活かす事を考えたのでしょう。能力が極端に高い為に時の支配者達も利用するようになった。忍者の活躍の記録は有っても英雄死の話しはまず聞かない。簡単には死なない存在だったのだから当然です。ヒトがどんなに鍛えても家の屋根に飛び乗る事は出来ませんよ。」
怪我を負っても自分で養生して治してしまうイメージも有る。確かに人間技では無いかも知れない。
「ヴァンパイアの身体的組成は基本的にヒトと変わりません。ちょっと健康診断を受けてもまず気づく事は無く、たまたま病原体に侵された時に血液検査でもすると恒常性維持機能が非常に高いゆえに白血球の数と働きが段違いに多い事や、脳のシナプス電位が常に高い為異常と考えられる場合が有るかも知れません。いずれにせよ精密な検査をしなければ差に気づく事は無いのです。ところで先ほど吸血は必須では無いと言いましたが、やはり血を吸うから吸血種族でしてね。我々にとって血の摂取とはヒトとは違う形で血をエネルギー源にしていると捉えて欲しい。血を接種しなくてもヒト以上の能力と長寿命、筋力活用の増大は有ります。が、電磁力を操る事は難しく動きもせいぜいオリンピック選手並と言うわけです。我々は血から一種のエネルギー、ヒトに分かりやすく、我々も呼び習わしている表現をするならエナジーを得ていると考えられてもいます。薬や酒の様なイメージで捉えてもらってもいいかも知れませんね。血を摂取する人間と言う意味でホモ・ブラッディアスと名付けだ学者もいた位ですよ。ちなみに大昔は確かに首筋などから直接吸っていたらしいですがここ100年も前からは買って来て飲んでいますよ。それこそ晩酌の様なものですね。」
コムネナの説明はいちいち分かりやすく理解しやすいものだった。いろいろ研究もされているらしい。
「なるほど、ところで度々登場する学者さんと言うのはどちら様なんですか?ずいぶん研究熱心な様ですが。」
「我々吸血種族の学者ですよ。例えば私にしてもIQ値と言う単位では計り切れない頭脳力を持っている。何百年と言う時間の間に思い立って自らを研究した者がいるのですよ。ヒト社会を含めた世界中に、と言う意味では発表の場が有りませんから、皆100年も続けると飽きて止めてしまいますけど研究を宣言した者には協力するのが習わしになっています。」
「なるほど。ではアンデット発生条件は」
「そう、ですね。アンデット化させるには致死量の血を身体から直接吸う必要が有ります。我々はむやみにヒトを襲う訳では無い事をご理解いただいたとした上で、ヒトを襲うヴァンパイアが極々希に現れるのです。」
衝撃的な内容ばかりが続いたので感覚が麻痺してきたが、本来は本題と言える話しであることに皇成は気を引き締める。
「女性が25歳でヴァンパイア化すれば若く美しいまま何百年と生きる事になります。我々の寿命としては400年以上といったところなのですが、200年位で突然老化が始まる事が有るのです。特に女性に多いです。男でも始まる事は有りますが何せイサルテからグロウになる頃だから200年以上は生きている事になります。メガリオが老化を始めるとあっという間に塵になる事も有りますが、若年期の老化はヴァンパイア化した年からヒトとして死ぬであろう期間、30年から40年は生きるんですよ。だから200年の長寿に倦んでいる者は喜ぶ事さえあるのです。しかし女性の場合は死期が早まった事よりも老いて若さを失いなお生き続ける事自体が耐えられ無いらしい。」