第五部
去年の暮れから受験勉強に追われていたため、今まで次話投稿ができませんでした。長い間さぼっていて申し訳ありません(苦笑)
送れていた分を取り戻す為にも、少しずつまた書いていきたいと思います。これからもよろしくお願いします!
亮平が楓との電話で涙を流したあの日から、楓は亮平に話しかけづらくなっていた。ずっと告白するチャンスをうかがっていた亮平にとって、真美本人からの言葉はひどく亮平を傷つけてしまった。その責任は、初めに告白企画を提案した楓にあると言ってもおかしくない。
自分のせいで亮平の心を傷つけてしまった。自分さえあんな話を持ちかけなければ、亮平は真美の気持ちを知らずに済んだかもしれない・・・。
楓の心もひどく沈んでいた。亮平はあの後も会えばあいさつはするものの、前のようにところ構わず話しかけたりはしなくなった。楓に恨みがあるからなのか、それとも楓のそばにいつも真美がいるからなのか、それは楓にも分からなかった。
むしろ、その両方かな・・・・。
そんな事を考えながら楓は教室の窓から、校庭で同じクラスの男子と遊んでいる亮平を眺めていた。
「どうしたの、カエデ。」
振り返ると、紗絵が楓を見つめていた。
「なんか最近ますますボーッとしてるね。何か心配事でもあるのかな?」
「えっ、まぁ、ちょっとね・・・。」
「やっぱりね、カエデは分かりやすいよ、何考えてるのか。顔に良く出るもん。」
「そ、そうなの??」
「うん。今だって顔に、私悩んでまーすってはっきり書いてあったよ。」
やはり幼なじみは違う、と楓は思った。真美は気づいていただろうか、と気にもなった。
そして、あらためて自分のクラスを見回してみて、元気な真美の姿が見えないのに気づいた。
「あれ、マミはどこ行ったの?」
「あぁそうそう、そのことについてなんだけどね・・・」
そう言って紗絵は声をひそめて話し始めた。
「マミ、この前の期末テスト、点数やばかったらしいよ。それで今、職員室で先生とお話中。」
「お話って、そんあに悪かったの?!」
「うん、そうらしいよー。特に数学が悲惨だってさぁ。このままじゃ受験に響くからって、それで先生達が心配してるの。確かにこの間の期末の結果が高校に運ばれるからねぇ・・・。」
「打ち上げの時はあんなにニコニコしてたのに・・・。」
「マミがニコニコしてるのはいつもの事じゃん。そこなのよ問題は」
ふぅ・・・と一度肩で息をしてから紗絵は続けた。
「たとえ点数が良かろうと悪かろうと、マミは気にしないじゃん。この時期になれば、誰でも少しは高校に向けてピリピリするものなのに、マミは全っ然気にしない。このままじゃ、いわゆる普通の高校に入れるかすらも分かんないっていうんで、学校側は心配なわけ。」
「う゛・・・。うちも何も考えてないかも。ましてやピリピリなんてこれっぽっちも・・・」
「でも楓はそこまで悪くなかったでしょ?」
「そりゃ思いっきり悪いのはなかったけど。これと言って素晴らしいっていうのも無いし、平均点をうろうろしてたよ。」
「それなら平気なの!でも、でもマミはそうじゃないから言ってるんだってば。」
「みんな平均点以下、とか?」
「主要五教科の中で、二教科1ケタがあるって聞いた・・・・。」
「あちゃーーーーーー・・・。」
「ね?で、これから入試までどういう生活をしていくべきなのか、」
「それを相談中なのかぁ・・・。」
そう、と言って紗絵はため息をついた。
「マミもやっぱり勉強の事となるとだめだねぇ・・・。」
「まあね。だから楓、うちらでマミをサポートしなきゃ。」
「ちょっ、ちょっと待って、うちもサポートしていただきたいのですが・・・」
「もちろんみんなで助け合っていくよ。カエデも森岡君を見つめるのもいいけど、そろそろ自分の進路を見つめた方がいいんじゃないかな?」
「はぁ!? 何でショウ君が出てくるの?」
「だって、今見てたじゃん。」
紗絵が指差した方を見ると、亮平達がサッカーをしているすぐ側で森岡翔太郎と同じ野球部のメンバーがキャッチボールをしていた。
どうやら紗絵は、楓が亮平ではなく翔太郎の方を見ていたと思ったらしい。
いつまでものんびりしていられないのかもしれない、と楓は感じはじめていた。
楓が止まっていても、時間は、楓を置いてどんどん先を急いでいた。