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第四部

書くのが非常に遅れて本当にすみません!

できる限り急いで書きました。

テストの打ち上げから丸1週間たった。楓の部屋のカレンダーは、もう12月に入っていた。卒業までもう残りわずかとなっても、今だ亮平が真美に告白する様子はない。

それどころか悪い事に、事態は意外な方向に進んでいた。


なんと、真美に好きな人ができたのだ。相手は隣のクラスの関口航太。もう引退したが、サッカー部の元キャプテンで、さらに頭も良く、なかなか顔も悪くない。背も学年で一番高いこの男子生徒は、まるで少女マンガから飛び出したような、そんな絵に描いたような青年なので、当然の事ながら、学校中に名が知れ渡っている有名人。

真美が関口に恋してからというもの、楓は真美の相談相手となり、毎晩のように関口トークを聞かされる羽目になってしまった。亮平の事がある楓は、どう対応して良いのか困ってしまったが、とりあえず真美の恋バナの聞き役にまわっていたのだ。亮平にこの事がばれてしまう事が、今楓を悩ませていた。

関口か亮平か。真美なら、というかほとんどの女子ならたぶん前者を選ぶだろうと、楓は確信していた。亮平が告白する前に真美が付き合ってしまったら、いくらあの元気な亮平も落ち込むに決まっている。

だから楓は、真美が告白するよりも先に、亮平に告白してほしかった。

なのに亮平はちっとも腰を上げようとしない。


どうするんだよリョウヘイ・・・・・・・・・。

思わず一人で楓はつぶやいてしまった。


威勢はいいが、いざ本番になると決まって元気が無くなり、よわよわしくなってしまう。

亮平の小さい時からのクセだ。


このままじゃそのまま延ばし延ばしにして、逃げられるかも。

ふと楓はそんな気がした。今さら告白企画を取りやめるわけにもいかず、楓は亮平のケータイに電話をした。

呼び出し音が5、6回鳴ってから、ようやく亮平の眠そうな声が聞こえた。


「もしもし・・・」

「何眠そうな声出してんの?まったくのん気なんだから。」

「カエデかぁ〜。おいおいまだ10時じゃん、せっかくの休日なんだし寝させてくれよ〜。」

亮平は、週末は午後2時ごろに起きだすのを、楓はすっかり忘れていた。


「もういい加減起きなよ、夜中まで起きてるのが悪いんじゃん。それとさぁ、リョウヘイはいったいいつになったら告るの?あれからもう1週間たったじゃん。何、あの約束は無効になったの?」


少し亮平は黙ってしまい、しばらく沈黙が続いた。すると、


「オレだって努力してるさ。」と少し強気に電話口から声が響いた。

「1週間も努力が必要なのか君は。」

「違う!オレだってこの1週間のうちにイケダにメアド聞いてずっとメールしてたよ。メールのおかげでイケダにいろいろ相談とかされて、オレ聞いてあげて自分なりに少しでも努力しようと思って頑張ってさ!」叫ぶように亮平が怒鳴った。


楓は一瞬自分の耳を疑った。え、今あんた何て言った?池田・・・いや真美の相談受けてたって言わなかった・・・?真美が今悩んでる事って、それって・・・。


「・・・マミの相談・・・。」ほとんど声がかすれていた。

思いつめたように、亮平が呼吸する音が楓にもはっきり聞き取れた。


「そうだよ。カエデだって知ってるだろうけど、イケダ、セキグチの事好きなんだよな。」

はっきりと、力強い声だった。楓は頭を思いっきり殴られたような気がした。


「まさかリョウヘイ知ってたの・・・・・?」もうほとんど、声を腹からしぼりだす感じだった。


「知ってたよ。まさかオレもメールしてすぐにこんな相談されるとは思ってなかったけどね。ほら、オレってセキグチとよく遊びに行ってるし仲もイイからさ、男の相談役として超ピッタリだったみたいよ?あはははは、オレもバカだよねぇ〜、笑ってあいつに相談されてて、しかもしっかりアドバイスまであげちゃっててさ〜。ははははははは・・・・・・・・・。」


声を上げて笑っている亮平の声を聞いていると、突然ポタッと足もとに冷たいものが落ちた。

涙が、気づかないうちに、次から次へと流れていた。


「リョウヘイ・・・。う、うそでしょ・・・。なんでそんな・・・・。」楓は、もう完全に泣いていた。ボロボロと、とめどなく涙が流れていた。


「ひっく・・・ひっく・・・・」しゃくりあげる楓の耳に、突然亮平の声が響いた。


「何でカエデが泣くんだよ。せっかくもうスッキリしようとしたのにふざけんなよ。カエデが泣く必要なんて、どこにも無いんだぞ・・・・。」

悲しい、悲しい、震えていて、嗚咽が混じった声だった。

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