第三部
楓と話している間にも、ちらちらと真美を見ている亮平に楓は言ってやった。
「で、リョーはいつマミに告るの?」
「えっ・・・?!」
亮平の耳が一気におもしろい位赤く染まる。楓には見慣れてる現象だが。
「いや、はっきりはちょっと今のところ未定でして・・・。」
「早く告ればいいのに。リョウヘイなら、絶対うまくいくよ。」
「俺をせかす暇があんなら、カエデが告れよ。」
「いや、それは・・・。」
こんなセリフを吐くのは何回目だろうか。
このままずっとこの繰り返しをしていくのかと思うと、楓は少し憂鬱になった。
中学生ももう終わるというのに、こんな事を繰り返していくのは嫌だ。
中学に入ってからもう三年が終わる。
今まで楓の心の奥にためこんできた気持ちがどんどん膨れ上がり、そろそろ楓にも限界がきていた。
ずっといじいじしているなら、もういっその事・・・。
思いきって、覚悟を決めて、楓は口を開いた。
「あのさ………………………。」
「え?何、突然深刻な顔して。」
不思議がる亮平の顔を真剣に見つめながら、楓はゆっくり言った。
「もう卒業まで後少ししかないよね。で、うち少し考えたんだけど、最後だし、思いきって二人で告ろうよ。うちだってできればやりたくないよ?リョウヘイにだけ告ってもらいたいさ。でも、リョウヘイだってイヤでしょ?そんな風に最後までウジウジしてるの、なんかカッコ悪くない?」
「・・・・・・。」
いつになく亮平はなにやら真剣に考えていた。
しばらくして、やっと亮平はつぶやいた。楓には、何となく答えが見えていた。
「確かに長かったよな俺達。いつまでもこうしてる訳にもいかねぇって事か。まぁ、いいんじゃないの?輝かしい中学校生活の締めくくりにはピッタリかもね。よし、いっちょやりますかぁ!!」
そう言って勢いづく亮平を見ていて楓は、こいつと友達で良かったなぁ、としみじみ感じた。
「ところで。」
亮平が言った。
「どっちが先に告るんですかね。」
「えっ、そりゃリョウヘイでしょ。男なんだから度胸きめて先に。」
「何言ってんだよ。ここは最初に提案したカエデに行ってもらわなきゃ。レディーファーストって言うし、お先にどうぞお嬢様。」
「はぁ!?ヤだよ何でうちが先なのさ。うちが頑張って提案したんだから今度はリョウヘイからだよ。」
「リョウヘイもカエデも何やってんの?二人してギャ−ギャ−言ってるけど。」
突然楓の横から真美が口を出した。思わず口をつぐむ亮平を見て、楓はわざとらしく言った。
「いやあのさ、料理追加注文したいんだけど、うちがバンバン注文したら恥ずかしいじゃん。だからリョウヘイに頼んでもらおうと思ったんだけど、イヤだって言うんだよ?ねぇ、マミならどうする?」と。『マミなら』の部分を強調して。亮平があっと口を開く間もなく、真美があっさりと言った。
「そりゃリョウヘイでしょ。カエデは女の子なんだから、そんな事しちゃ恥ずかしいに決まってるよ。ここはリョウヘイがドーンと頼め頼め!」
楓はニッコリと微笑んで、呆然とする亮平の耳元でささやいた。
「それじゃドーンと頼みますよ?リョウヘイ君。」