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第一部

どうしてこんなに空は青いんだろう。


ふとそう思った時、試験終了を告げるチャイムが鳴った。

楓はどこまでも続く広く青い空から、インクの香り漂うA4の解答用紙に視線を落とした。

何も書いていない欄が1、2、……5つもある。


はぁ・・・。


今日が中学校生活最後の期末試験最終日という事もあり、放課後はカラオケだ買い物だ、と楽しいうれしい予定を話し合う声で教室はあふれかえっていて、最後の学活どころではなくなっていた。

皆最近寝不足なんじゃないの・・・・?よくそんな体力残してられるよなぁ・・・。

そう一人でボヤいていると、突然後ろから声をかけられ、楓はビクッとした。


「カエデ!今日テスト終わったしさ、ガストで打ち上げしよって話してたんだけど、カエデもおいでよ!みんなで乾杯しよ〜っ♪」

そう言って満面の笑顔を浮かべているのは、楓の大親友の真美と紗絵だった。

 

真美は中学校で初めて出会って仲良くなったが、紗絵の方は、なんと幼稚園の時からの幼なじみなのだ。真美は名前の通り、本当に笑顔がかわいくて明るくて、何度か雑誌モデルも頼まれた事があるらしく、学校中の人気者なのだ。その半面、成績の方は、あまり思わしくないが・・・。 


かわって紗絵は、真美ほど美人ではないものの、その分頭が格段に優れていて、いつも学校の中では成績上位者ベスト3をキープしているほどの実力者だ。そのおかげで先生達からの信頼も厚く、風紀委員長も務めている。


そして、楓はというと、これといって目立つ事もなく、毎日を茫漠と過ごしているのだから、他の二人と比べて情けない。一つ挙げるならば、少しパソコンオタクだと言う事だろうか。

しかしこの何の共通点もない三人が、なぜここまで仲良くなったのかについては、話すと長くなるので、また次の機会にしよう。


「えっ、打ち上げって・・・。何の?何で打ち上げるのさ。」


そう楓が聞き返すと、真美が


「だって梅中で最後のテストが終わったんだよ?記念すべき最後を祝って、クラスの皆でカンパイしなきゃじゃん!」と答えた。その横で紗絵がボソッとつぶやいた。


「まぁ、マミは最後でも最初でも取ってる点数は変わらないけどねぇ。」

「サエひどっ!うちめっちゃ傷ついたぁ!!」


真美と紗絵がそうふざけていると、ボーッとしていた楓の顔から自然と笑みがこぼれてくる。

なぜだろう。どんなにつまらない事があっても、この二人のそばにいるだけで、いつも楓は優しい気持ちになれた。


「そ・れ・に」 と、真美が楓にささやいた。

「今日の打ち上げ、ショウ君も来るんだよ。カエデが来たくないなら、まぁそれでもいいけど。」

「…!!ショウ君来るの・・・?え、マジに?」ややどもりながらカエデは真美に尋ねた。


何を隠そう、楓はショウ君こと、森岡翔太郎が好きなのだ。中一の時に同じクラスになって、一目ぼれしてしまった。少しボサボサの髪にいつもボーッと本を読んでいる翔太郎を見ただけでは、ただのネクラにしか見えないが、実は足も速く、野球部の隠れエースでもある翔太郎に楓が惚れるのに、あまり時間はかからなかった。


「カエデも来なよ。何だかんだ言って楽しいからさ。ずっと勉強して疲れたでしょ。ね?」

そう言って微笑む紗絵と、

「ほら、サエも言ってるし、ショウ君も来るし、行こう行こう!!」

とキラッキラの笑顔で笑う真美を見ていて、楓は言った。


「じゃぁ行くよ。」

「よっしゃぁ〜〜〜!!!!皆で盛り上がろう!!」


実の所、重い楓を動かした一番の理由は、森岡翔太郎が来る、という分かりやすい事だったのだが。




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