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エピローグ
数年後、俺は成人式–––––正式には二十歳の集いというらしい–––––のあとの高校の同窓会に向かっていた。健斗や他の仲の良かったクラスメイトに会えるのも楽しみだったし、もしかしたら彼女の姿を見ることができるのではないかという期待もあった。
数年振りに会う同級生たちは同窓会らしく着飾っている。心なしかみんな大人になって見えた。
そんな中、彼女はいつものように、開始時間より早くやってきて姿勢を正して席に座っていた。
声をかけようかと数歩近づいたところで気がつく。彼女は“耳”を隠していなかった。本当の自分を隠すことなく、堂々と幸せそうな顔で笑っていた。
俺はそんな彼女に気がつくと、上がりかけていた腕を下ろして、そっと距離を取った。
俺があげられなかった優しさを、どこかで彼女が手に入れていることが、ただ嬉しかった。




