TSした。しかしそれよりも大切なことがある。
不定期更新になります。物書き初心者で行き当たりばったりなので優しく見守ってください。
四月一日、春休み。しかし、この中高一貫校でも他の学校と同じように、部活動は盛んに行われている。
陸上部が学校の外周を走り、グランドではサッカー部やラグビー部が練習を、体育館ではバレー部が試合をしている。また、校舎からは吹奏楽部の演奏が聞こえる。
旧校舎三階の一番端にある美術室が我々美術部の活動場所だ。
ドタバタと廊下を走り、扉をガラッと勢いよく開ける。
「それでは朝礼を始めま「皆〜、これ見てよ〜。」す。」
教室前方に集まる部員達の視線がこちらに向かう。顔にかかる髪を頭を振って落としながら、僕は黒板に向かって歩き出す。左手に持つ紙袋を投げ捨て、そして右手に持つスマホを集まっている部員皆に向ける。
スマホの画面に映るのは、昨日夜中に見た、『ダンジョンの部活動あるある』だ。スマホを皆に見えるように向けながら言葉を続ける。
「これさ、部活動あるあるなんて言いながら、美術部が入っていないんだよ。酷くない?いやさ、べつに運動部は分かるんだよ。バットやラケットで吹っ飛ばしたり、ボールを叩きつけたり。でもさ、文化部で、吹奏楽部が楽器、合唱部が自前の声の音圧でモンスターを倒すってアリなの?手芸部、華道部、書道部、サイエンス部もさ、針やハサミで戦ったり、剣山をトラップにしたり、墨を飛ばして目潰ししたり、劇薬作って攻撃するんだよ。なんでこんなのに美術部入ってないの?美術部はどの学校にも大体ある部活だよ。何、美術部はダンジョンに行かない、陰キャの集まりだってか?はーーーー、美術部を舐めてない?」
「おはよう四華ちゃん。新年度なのに初日から遅刻だね。また一つ上の学年になるからって、下級生のお手本になる為に遅刻はしないんじゃなかったの?」
僕の早口に皆が呆気に取られる中、一番に声を返してくれたのは、美術部の部長で、この中で一番真面目な青木梨花先輩だ。
「いやあ、僕は「おはようは?」オハヨウゴザイマス。」
「まずは挨拶することが大切だからね。いきなり、『これ見て〜』はおかしいでしょ。高校生なんだから、きちんとした言葉使いをしないといけないよ。後、美術部は遅刻することには厳しく無いけど、遅刻しそうな時は連絡してね。最近、突然発生したダンジョンに高校生が巻き込まれた、というニュースがあったんだから。心配したんだよ。」
「う、反省しています。」
ちょっと厳しい物言いかもしれないけど、後輩思いのとっても優しい先輩だ。
「さっすが、赤坂兄妹。双子の兄とそっくりだね。美術部が大好き過ぎない?別にダンジョンなんて、美術部とは関係ないんだから、気にしなくていいじゃない。まあ、この学校の生徒会にはムカつくけどさ。」
「もう、なんで今日は髪を結んで来なかったの?ボサボサになっているよ。はい、この櫛を使って。」
「折角の綺麗な黒髪が台無しです。私に髪を弄らせてください。」
「ダンジョンで美術部はどんな風に戦いますかね?」
先輩からのお叱りが終わった後すぐに一斉に話しかけられた。とりあえず一番言いたいことを聞いてくれた子がいるので、話を続ける。
「よくぞ聞いてくれた。」
教卓をダンッと叩いて体を乗り出す。
「例えば!油絵で使う乾性油を瓶ごと投げつけ、燃やすとか。」
「調理部がサラダ油で出来そう。」
「日本画で使う朱を燃やして水銀を発生させる、とか。」
「朱って最近売ってないよ。」
「それにここでは日本画する人がいないので、画材すらないですね。」
「もう彫刻刀で切ってやれば?」
「美術部感が少ない気がします。」
皆夢がない。元の動画だって誇張が多すぎだったのに。
負けずに答えようとするが、部長がパンと手を叩いて止められる。
「さて、お喋りもここまでにして、朝礼の続きをして活動を始めましょう。今日来る高校生は、三年は元から私だけ。二年は松村翠ちゃんと山吹明人くんと赤坂四華ちゃん。一年は橋口百ちゃん。そして中学生は…。」
「はーい。私、三木蜜柑だけで、他の皆はお休みです。」
「ありがとう蜜柑ちゃん。後は四華ちゃんのお兄ちゃんが連絡がないのだけれど。」
「ああ、それは…」
そう言葉を続けようとしたその時、ガシャンと壊れそうな勢いで扉が開いた音がする。
「おっはようございまーす。」
「あれ、四華先輩が二人⁉︎」
「やだなぁ、私が本物の四華だよ。」
開いた扉に目を向けると、そこには今の自分と同じ姿、腰まである長い黒髪の少女がいた。双子の妹の赤坂四華だ。
美術室にいる全員が僕に視線を向ける。
「実は、僕、双子の兄の凪。TSしちゃったんだ。」
「「「えーーー!」」」
「TSとは?」
美術部の戦闘方法についてより、僕の事を詳しく話して欲しいと詰められ、暫く部活を始めることが出来なくなってしまった。
プロフィール
赤坂 凪
特徴:主人公
性別:男→女?
能力:無し
この物語の主人公。何故か双子の妹そっくりの美少女になっている。ちなみに、元の姿は中性的美少年だった。身長は全く変わっていない。元から小さめ。
この物語が面白いと思った人は、ぜひ美術部に入ってください!