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自殺ツアーの行方

知的な雰囲気のある男性は銀縁のメガネをかけたイケメンで、身長は185センチはありそうだ。

 どこかで観たような記憶があるが、井村はなぜか思い出せなかった。芸能人とかではなかったような気がする。

 肩幅が広く、筋肉質の体型なので、もしかしたらスポーツ選手かもしれなかったが確証はない。




「あの茶髪の男、変じゃない?」

 那須一美は、同じ船上にいるボブヘアーの女性に話しかけた。一美は28歳だ。多分ボブヘアーの女性も、同じぐらいだと感じた。

「自殺志願者のわりには、あなたを見る目がギラギラしてた」

「男なんて、そんなもんじゃない? あなたこそ自殺志願者のくせに、エネルギッシュな雰囲気あるけど」

 ボブヘアーの女が、射るような目で、一美を視る。

「ごめんなさい。悪気はなかったの。なんだかこれからの事が不安で。昨夜那覇のホテルに泊まった時は、小さいけど地震もあったし」

「仕方ないじゃない。沖縄の近海で2ヶ月前に大きな地震があってから、このあたりでは余震が続いてるそうだから」

 ボブヘアーの女が答えた。確かに彼女の発言通り2ヶ月前に大きな地震があった。

 震源地は人の住む陸地から離れていたので大きな被害はなかったが、それ以来コンスタントに九州や沖縄では余震が続いていたのである。

 そして1ヶ月前に、一美は闇サイトを見つけたのだ。そしてそれに応募して、今はこの船にいる。

「よかったら、名前教えて。あたしは那須一美っていうの」

 一美は、名前を漢字でどう書くか説明した。

鶴岡理亜つるおか りあ

 ボブヘアーの女性も名乗り、漢字でどう書くが説明する。

 一美は甲板を見渡した。さっき理亜に声をかけた男が甲板の脇でタバコを吸っている。

 こちらに気づくと笑顔で手を振ってきたので視線をそらす。茶髪で、身長は180センチぐらいだろうか。

 どちらかといえばイケメンだが、チャラい感じが一美の気にさわった。さっき宇沢に井村と名乗ったのを思い出す。

 愛煙家は他にもいて、銀縁のメガネをかけた身長185センチぐらいの男と、茶髪の女もタバコを吸っている。

 茶髪の女のそばには、男が1人寄り添っていた。おそらく夫婦かカップルらしいが、男の方はタバコを吸っていない。

「どこへ行くのかわからないって心配じゃない?」

 一美は聞いた。今日は他に人のいない無人島に行くとしか聞いてない。

 圏外なのでスマホや携帯電話も使えないと説明されていた。

 やがて眼前に島が見えてくる。画像を撮るためスマホを出したが、すでに圏外の表示が出てる。

 チャラ男の井村スマホを出して、島の画像を撮影した。

 他の人達は黙って島をぼんやりと、見つめるだけだ。引率の宇沢が不信感に満ちた目で、一美とチャラ男の両方を視る。

 島の港のすぐ近くには崖のような地形があり、崖の上の高台の部分に黒いビルが建っているのが見えた。

 多分ビルは8階建てぐらいのようだ。やがて船は、島にある港へと接近する。

 一美と井村が先に降り、他の者達は足取りも遅く、のろのろと亀の歩みで降りてくる。

 最後に宇沢が船から降りた。船にはこれを操縦してきた船長だけが残っていた。

 港を降りたすぐの所が崖のような地形になっており、崖の下に、石造りの仏像がある。

 仏像の身長は2メートルぐらいだろうか。宇沢がそばに近づくと、仏像に向かって手を合わせた。

「こんな崖下にあって大丈夫かしら」

 一美は、引率の宇沢に話しかけた。

「そうなんです。以前にも崖崩れが起きているので、この仏像には近づかないでください。まあ、崖崩れが起きた時にこの下にいても、みなさんの亡くなる時期がちょっと早まるだけですが」

 宇沢が唇に笑みを浮かべる。

「また由緒ある仏像でもあります。今回のツアーを滞りなく行うための守護仏でもありますので、決してお手を触れないようお願いします」

「船から見えた崖の上にあるビルに行くんでしょう? ここから一体どうやって行くのさ?」

 井村が、聞いた。

「これから説明します。崖の上といっても、崖からはかなり離れてますので、万が一崖が崩れても、ビルにいれば安全です」

 宇沢がそう解説する。

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