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闇サイトへようこそ

 舞台は、南海にある孤島。集まったのは自殺願望のある20代の若者達で、美食を楽しんだ後1週間後に集団自殺することになっていた。にも関わらず、1人1人殺されてゆく。1週間後に全員死ぬのに、誰がなぜ殺人を犯すのか? 読者のみなさんに、その謎を解いていただきたいです。

 作品への感想やコメントを歓迎します。批判的な内容でもウェルカムです。

『当サイトでは、30歳以下の自死志願者を募集しています。先着8名で打ち切りますので、お早めにご応募ください』


 スマホをいじっていた時に、そんな文章が倉橋翠くらはし すいの目に飛び込んできたので、驚いた。

 彼女の職業は、女優である。いつも多忙なスケジュールに追われており、慢性的な寝不足だ。

 その翠の、眠気が一瞬にして覚めてしまう。文章は、以下のように続く。


『先着8名の皆様には某所で1週間ごゆるりと美食を楽しみながらすごしていただき、その後こちらでご用意した苦しまない方法で亡くなっていただきます。薬物を用いるやり方で、苦痛は一切ございません』


 これが事実なら、良い方法だと翠は感じる。ニュースで報じられたが、1年前に飛び降り自殺した男性がいた。

 運悪く下にたまたま別の男性が通りかかり、2人の頭が激突して、両方とも亡くなったのだ。

 薬を使えば、そんな悲劇も起きないだろうし、そもそも飛び降り自殺なんて痛そうである。

 翠は、人生に絶望していた。これ以上生きる気力がないのだ。表面上は、成功した人気女優に見えるだろう。

 が、その内容は、寒いものである。夜もまともに眠れないほどぎっしりと詰め込まれたスケジュール。

 SNSで執拗に、翠がブスだの大根役者だのと叩く心ない人達。彼女の私生活を執拗に狙うストーカーと芸能マスコミ。

 自分が亡くなったら、大々的に報道されるだろう。その時のマスメディアの見出しも予想がつく。

『人気トップ女優がなぜ自殺!?』

 そんな文章が並ぶのだろう。翠はもう有名人でいるのに疲れきっていたのだ。こんな生涯とは一刻も早くオサラバしたかった。

 早速彼女は、申し込む事にする。鬱気味なので、実際はスローリーなのだが。学歴を書く欄もあったので、正直に中卒と書いた。

 翠の父は、彼女が幼い時に亡くなり、母1人、娘1人の母子家庭だったのだ。

 生活は苦しく、とてもじゃないが、高校へは行けそうになかった。

 ただ翠は、子供の頃から人目を引く愛らしい顔立ちをしており、芸能事務所の関係者を名乗る男達から頻繁に、スカウトされていたのである。

 が、母親には芸能界は怖い場所だから行かない方がいいと言われていた。また翠自身、あまりその方面に興味がなかったのだ。

 友達と話を合わせるためにテレビや映画を観る時もあったが、そのぐらいだった。

 それでも彼女が芸能事務所入りを考えたのは、母に楽をさせたかったからである。中卒の自分にできる仕事は限られていた。

 それが初めて出たテレビコマーシャルが話題になり、あっという間にドラマや映画やバラエティ番組のオファーが来て、人気女優になったのだ。




 井村海斗いむら かいとは、沖縄に向かう飛行機の中にいた。飛行機代は、無料である。

 世界中を巻き込んだ大型感染症はすでに終息していたので、井村を含めて多くの者が、すでにマスクをつけていない。

 井村は『スーサイド・ツアー』というサイトに登録したのである。先着順に8名を募集。

 1週間後に苦痛のない自死を薬物で与えてくれるというツアーだ。

 過ごすのは沖縄にある離島で、他には誰も普段は住んでない無人島である。

 滞在費や、島に行くまでの旅費は全額支払ってくれるそうで、飛行機のチケット代も、前払いで振り込んでくれたのだ。

 1週間後に考えを変えて今後も生きる気になったら、やはり旅費を負担して、無料で家に帰してくれるとの話であった。

 井村は手鏡を取り出すと、自分の顔を観る。

(今日の俺もイケメンだ。きっと今度もメンヘラ女が俺の魅力に引っかかるだろう)

 井村自身は自殺願望は全くなく、今回のツアーに参加する若い女をナンパするのが目的だった。どうせこれから死ぬ女だ。

 やりすてちまえという気持ちでいた。仮に相手が井村とセックスする気がなくても、無理やりにでもやるつもりである。

 今まで彼は数えきれない程の女を抱いてきた。

 が、渋谷とかで普通にナンパして、相手とセックスするのには飽きていた。

 ちょっと鬱気味の女の方が燃えると考えたのである。彼にとって女とは、性欲を満たすためだけの存在に過ぎない。

 実際女の方も、多くはそれを喜んでいるはずだ。

 井村の亡くなった母親は水商売をやっていて、1人息子を女手1つで育てたが、彼の父親が一体どこの誰なのか、教えずにこの世を去った。

 いやそもそも、彼女も知らなかったのだろう。それだけ男出入りが激しかったのだ。

 女なんてみんな、母親のような奴ばかりだろう。

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