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26 自衛隊出動 Self.Defense.Force

 微かな空気の振動を受けて鼓膜が震える。

 空気の振動は大きくなるにつれ、校舎全体へ振動を伝播させた。

 大空を重く切り裂く駆動音。

 外から聞こえる物音を聞き、僕は惹き付けられるように立ち上がり、窓へ顔を出す。


 感知したクラスメイトも、さすがに無視できず机と椅子の引きずる音を一斉に響かせ、窓へ駆け寄る。

 授業中の教師までも窓へ歩みより、騒ぎの元を探した。


 校庭を巨大な黒い影が埋め尽くす。

 グラウンドの砂を波紋状に吹き飛ばし、落雷のような騒音を絶え間なく轟かせる主を見上げた。


 二つのプロペラを回転させる巨大なヘリコプターが突如現れた。

 横倒しにした大木程の大きさのヘリは、騒音が大きくなるにつれて、巨体が大きくなっていく。


 降下したヘリは屋上の高さに合わせると上空でホバリング。

 

 野太いヘリの前後に短い煙突がついており、その部分から二基のプロペラが広がる。

 胴体は緑と茶色の迷彩柄で機体の腹に『陸上自衛隊』と書かれていた。


 さすがにこの騒ぎで上と下の階から、生徒や先生が窓から顔を突きだし、騒音の元を見つめる。


 こういう時、何かのオタクというのは、専門家の役割を担ってくれるので助かる。

 早速、男子生徒の中から有識者が現れ、大声で解説を差し込む。


「あれは! CH-四七JA・チヌーク!? 五五人まで収容できる大型輸送機。全長約一五メートル。最高速度二六七キロ。後方に攻撃を撹乱するフレア弾と無線を妨害するチャフを備え。自衛隊の物資や装備を運搬する、大空の運び屋。クァッ、コイイぃ~」


 物々しいのは空だけではない。

 正門では事情を知っているであろう数名の教師が、門を通過する深緑色のトラックを手で誘導して招き入れていた。

 遊び心の無いゴテゴテしたトラックに挟まれた三台のトラックだけは、荷台の側面に白い四角のペイントに、中心は赤い十字の模様が塗られており、医療関係のトラックというのが予想できた。

 有識者中学生が続けて解説を挟む。


「あー!? あっちは一トン半トラックのキャリア! 三トン半トラックのカーゴに一トン半救急車のアンビ。七三式中型、大型トラックの後継車両だ。すごい、すごいぃ~」


 有識者中学生、お疲れ様。

 君の出番はこの先、もう無い。


 校庭に停車した車から宇宙服のような格好でヘリと同じ迷彩柄を施し、ドクロに見えるガスマスクを装着した集団が現れる。


 まるで宇宙から落下した未確認飛行物体を回収しに来る、国家の機密組織かと見まがう威圧感を放っていた。


 生徒達の目は釘づけになり、様々な憶測が飛び交う。


「何々? 映画の撮影?」「不発弾が有るとか?」「戦争だ! 日本で戦争が始まるぞ!?」


 自衛隊と思しき集団の一人が拡声器を持ち、校舎に向けて第一声を放つ。


「校内の皆さん! 落ち着いて話しを聞き隊員の誘導に従って下さい。この地域から新型ウィルスの感染が確認されました――――これより、この学校を封鎖します」

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