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25 砂嵐の呼び声

挿絵(By みてみん)

 ――――ごめんね。守れなくて――――


 今だに気にかかっていることがある。

 未来の僕が雷に打たれて絶命する間近、蜃気楼のように現れた白い女性の影。

 瀕死だったから本物の人間なのか、幽霊なのか区別がつかなかった。


 脳から放たれる脳電磁波が時空を超えて、記憶と精神を過去に飛ばし、受信した中学生の僕は、この時代で総務省の極秘機関、ジーメンスから派遣された本城さんと遭遇した。


 雪原のような白いコートを着て、僕を電波怪獣ジャマーから守るという名目で、周囲をつきまとっていた電波監視官。

 ストーカーみたいだけど、それが僕には幽霊に思えていた。


 未来の白い女性の影と過去の本城さん。

 

 何かつながりがあるのかな?

 

 と言っても、未来に起こることを調べるなんて、ただの中学生には出来ないし、何もわからない。


-・-・ --・-


 区立、光ヶ丘中学校。


 昼下がり――――。

 給食を食べた終わった後の授業は拷問に等しい。

 満腹になったことで消化器官はエネルギーが必要となり、脳へ送るはずの栄養をかさらって行く。

 エネルギーが足りない脳は眠ることで力を温存するのに、授業中は居眠り厳禁。

 この眠気を並々ならぬ精神力で起こすことを、拷問と言わずしてなんと言う?


 午後の授業は理科。

 嫌いじゃないけど、睡魔が教壇の話を聞くなと誘ってくる。

 理科の先生は地震のメカニズムについて解説していた。


「このように地殻の断層は、かわらの上に瓦が重なった状態にあります。下の断層がマントルに沈んで行き上に重なる断層が、徐々に折り曲げられ、ある時を境にバネのように跳ね返ります。その跳ね返った力が地震を生むのです」


 そういや、この先生はよく授業中に話が脱線してたなぁ。


「地震と言えば、魚類のナマズは地震を余地することで有名です」


 早速、始まった。


「約五百年前の安土桃山時代には、豊臣秀吉が、伏見城の建設で『ナマズによる地震にも耐える丈夫な城を建てるように』と、家臣(かしん)に洒落を言うほどです」


 クラスメイトが隙を見いだしたのか、机の下に隠したスマホで遊んだり、教科書を立てて居眠りしていた。

 先生は興が乗ってきたのか雑談をやめない。


「ナマズは地下の揺れを感知するという仮説がありましたが、近年、大気中の電離層の異変を察知して地震を予知しているという、研究が進んでいます」


 学生の頃は退屈な話だったけど、精神年齢が二十四歳にもなると、教師の雑談も思ったより唸ってしまう内容だ。


 ナマズが地震をねぇ――――ダメ……眠い……。


 赤ベコのように降る首は、ついに落ちる――――…………。


 睡魔に誘われてまぶたが落ちると、暗く閉ざされた視界と思考に、異様な感覚が覆い被さる。


 暗闇が砂嵐に覆われ砂嵐の間に二つの亀裂が走った。

 亀裂が大きく開かれると、そこにはマグマのように赤く不気味に光る目があった。

 二つの赤い目は蛇やワニのように、鋭いナイフを思わせる狂暴さが垣間見得た。


「うわぁーー!!?」


 開口一番、奇声を上げて席を立つ。

 教室の中は突然立ち上がる僕に注目が集まった。


「万丈目。ナマズに襲われる夢でも見たか~」


 先生が注意すると生徒達から笑い声が沸く。

 恥ずかしさで顔を赤くして席に座った。


 まただ、また同じ目だ! 

 未来の引きこもる自室で、スマホから現れた砂嵐。

 灼熱のマグマに見えた赤い目玉。

 ジャマーだよな……何で? この前、退治したのに?

 僕を襲って来るジャマーは他にもいるのか?

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