表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/32

朝食と登校

 朝少しだけ時間が経って、今は朝食の時間…

 

 いつものようにご飯を配膳してくれる母さん…

 それをいつものように、受け取る俺を含めた他三人。

 

 いつもの穏やかな家族の時間…

 時間なんだが…

 

 なんだか気まずいのは気のせいだろうか。

 分からない。

 ただ少なくとも、俺だけは気まずさを持っていた。


 だけど、ご飯を口にした父さんから…

 「母さんのご飯はいつもおいしいな。」

 そんな言葉を口にした。


 言葉に淀みなどはなく…

 ただただ思ったことを言葉にしたようだ。


 そして母さんも…

 「急にきもいわね。」

 そう言いながらも、こっそり口元を緩める。


 あの年のおばさんのツンデレに需要があるかは知らないが、父さんの言葉が相当嬉しかったようだ。


 そしてそんな二人の様子に、ほっとしてしまう。

 どうも変に気まずさを感じていたのは、俺だけのようだ。


 ふー…


 ただ、そんな平穏に爆弾を落とす輩が存在するらしい。


 「ねぇお母さん…」

 「何?夢葵…」


 夢葵が母さんに声をかけた。

 そして…

 

 「つけたら、お兄ちゃんとしていいの?」


 ピタっ…

 時間が止まった。

 いや、正確にはそれは俺だけだった。


 父さんは驚いて、口からご飯をこぼす。

 そしてすぐに…

 「へっ?なっ!?」

 変な声を口から漏らして、取り乱す。


 でも、普通に考えたらそうだよな。

 そら、そうなるよな。


 そして尋ねられた母さんからの返答はというと…

 「つけたらいいわよ。」

 これだった。


 「「か、母さんっ!?」」

 俺と、そして父さんから声が上がる。


 でも母さんから…

 

 「何よ?うるさいわね。」

 「う、うるさい!?」


 母さんからの言葉に、父さんは目を見開かせる。

 いや、見開いているのはずっとか…


 「でも…」


 ただまだ、父さんは食い下がるみたいだ。

 いや、当たり前か。

 当たり前だよな。

 自分の子供たちの話なんだし。


 ただそんなとき、事の発端の夢葵が父さんへ…


 「お父さん、それにおにいちゃんも…」

 「ど、どうしたんだい…?」

 「な、何…?」


 俺、そして父さんで夢葵を見つめる。

 そしてすぐに夢葵から…


 「冗談だよ。」

 「「へっ…?」」

 「冗談。そんなこと、兄弟でするわけないよ。」


 冗談…

 冗談か…


 テンパっていた心に、急に安息がやってくる。

 そしてそれは父さんも同じだったようで…


 「冗談か。そうか、冗談だよな。私はてっきり本気なのかと…」


 父さんから、安堵の声が漏れる。


 「そうだよ。ほんとお父さんは騙されやすいんだから。」

 「そうよ、あなたは。」

 「ほんと、騙されちゃったよ。あははは…」


 父さんの上げた笑い声に、夢葵と母さん、それに俺も釣られる。

 そして俺も乗って、父さんに…


 「父さんは騙されやすいな。」

 「いや、幸成お前もだろ。」

 「ばれたか。」

 「それはね。」


 また、家族で笑いが起きる。


 父さんは母さんへ…

 「ほんと、騙されたよ。」

 「ホントあなたって人は…」

 そんなほのぼのとしたやりとりを始めた。

 

 そんなやり取りを見つつ、家族段々の場が過ぎて…

 過ぎて…


 急に夢葵から、服を引っ張られる。

 そして耳元で…

 「冗談だからね。」

 そう告げられた。

 

 言葉上はただの念押し。

 ただ、さっきの言葉が冗談だという念押し…

 

 だけど振り向いた時に見えた、その時の彼女の笑みは…

 いつもの可愛らしさと愛らしさはどこかへ行ってしまって…

 ただ獲物を見るような、獰猛な笑みに俺は見えた。


 その笑みはどういう笑みだったのだろうか…

 俺には分からない。

 決してわからない。

 分かりたく…


 俺は…

 「はは…」

 と、苦笑いを返すことしかできなかった。


 この後、朝食の時間は平穏に過ぎていった。

 



 そして夢葵を中学校まで送り届けた後、俺はいつものように燎斗と合流した。

 

 「よっ。」

 「おう…」

 

 燎斗からの挨拶に俺も同じように返す。

 そして学校へと歩みを進める。


 ただ何故だか、燎斗がじっと俺の顔を見てくる。

 そして…

 「どうやら今日は元気みたいだな。」

 そう言ってきた。


 一瞬何のことか、頭に?(ハテナ)が浮かぶ。

 でもすぐに、昨日の件…

 昨日の帰り、俺が朱沢さんと柴田の件で落ち込んでいたのを心配してくれていたみたいのに気づいて…


 「まぁな。」


 端的にそう返した。

 ただ、心配されるのはやっぱり嬉しいものがあった。

 だから感謝の言葉は出さないけど、感謝の念はあった。

 でも口に出すのは恥ずかしいからな。


 「そっか、何よりだな。」

 燎斗は、そう返してくる。

 そして…

 「夢葵ちゃん、か…」

 そう呟いてきた。


 図星だったからか、その言葉にピクッと反応してしまった。

 

 それを燎斗もちゃんと気づいたのか…

 一瞬ニヤッと笑ってから…

 「あーあ。俺には話してくれないのに、夢葵ちゃんには話すのかぁ…」

 そう、嫌味みたいなことを言ってきた。

 

 実際は、夢葵にも話していない。

 ただそれとは関係なく…


 「めんどくさ…。燎斗めんどくさ…」

 「お前ひどいな…」


 ついこぼれてしまった本音に、燎斗が顔を歪める。

 

 いやでも、ほんとめんどくさい。

 まるで…


 「メンヘラ…?」

 「おまっ!?心配してくれる友人にその言いようはひどくねぇか?」

 「いや、めんどくさすぎてつい…」

 「ひでぇな。」


 燎斗が、冷静に呟いてくる。

 でも…


 「確かにな。」

 そう返して、俺は笑ってしまった。


 それに燎斗は…

 「このやろう…」

 そう呟いて、俺の肩を叩いてきた。


 そんなやり取りをしつつ、今日も俺と燎斗は学校へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ