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放課後と4人

 「はぁ…」

 「あ゛ぁ…」

 俺と、そして隣にいる燎斗から…

 力の抜けた、まるで抜け殻のような声が口から飛び出る。


 今は放課後…

 俺たちはあの、地獄の様に体育の時間を終え…

 そして今、食堂にいた。


 食堂にいる理由…

 それは、この前の日曜に一度みんなで集まった時に約束した…

 現国の宿題を今日この時間にするためだ。

 だから同じテーブルには、燎斗以外にも同じメンバーである日谷さんと清家さんがいる。

 ただ彼女たち…

 特に日谷さんは、なんで俺たちがぐったりしているのかと怪訝そうな表情を向けてきていた。

 

 だからか、その日谷さんから…

 「えっと二人とも、どうしたの…?」

 そんな質問が投げかけられた。


 どうしたの…

 どうしたの、か…


 日谷さんから飛んできた質問に、忘れかけていたさっきの授業での不満が蘇ってくる。

 そしてそんな不満から来る鬱憤を、言葉で発散したくなる。

 なるんだけど…

 授業での疲れが、ただただ強すぎて…

 再熱した気持ちはどこへやら、俺はぐったりモードで言葉を返した。

 

 「授業が…、えぐかった…」


 でもその言葉は、自分でもびっくりするくらい力が入ってなくて…

 しょうもないことだけど…

 逆にそれが、自分の中ではちょっとだけ面白かった。


 ただ日谷さんには、そんなのが伝わるはずもなく…

 俺の言葉に、日谷さんは苦い笑いを浮かべながら…

 「そうなんだ…」

 抑揚の少ない声で、そう返事をしてきた。

 

 そして彼女からのそんな抑揚の小さい言葉…

 その中に、困惑の色が含まれているような気がした。


 それが少し不思議だったんけど、少ししてすぐに…

 その彼女の見せた困惑…

 もしかして彼女がさっきしてきた質問は、彼女的には授業の内容について尋ねたものだったのでは…

 そんな疑念が頭に湧いてきて…

 ミスったかな…

 心の中で少しだけ悔やんでしまう。


 そして、俺のそんな予想はあたってしまっているみたいで…

 何かを迷っているように、彼女は視線を誰もいないところへ向けながら…

 ”ん-”という、うなり声を鳴らす。

 

 俺の予想が、ちゃんと当たっているかは分からない。

 でも彼女のその姿が俺には、やっぱり何かを気になっているように見えた。

 だから…

 「さっきの体育の授業なんだけどさ…」

 

 そこまでの言葉で、彼女がこっちを振り向くのを待つ。

 そして振り向いてきた彼女の表情が少し晴れているように見えたから、そのまま続けて…

 

 「今日、新しく教育実習生の先生が来たんだよ。」

 「へー、教育実習生の先生が…。そうなんだ…」 

 「そう。でさ、今日男子はシャトルランだったんだけど、その前になんでか謎に筋トレさせられたんだよね。」


 「えっ!?」

 彼女が、目を見開いてびっくりした表情を見せる。

 

 日頃はあんまり動かない彼女の表情…

 そんな彼女の表情が、大きく動いたことに俺は少しだけ嬉しさを感じてしまった。

 そして彼女の表情がもっと動いて欲しくなって、俺はついつい言葉を続けてしまう。


 「まずは腹筋で…

 その次は背筋…

 そしてその次は…」


 俺が新しいく言葉を出すたびに、彼女から…

 「えっ!?」や「やば…」

 といった…

 何度も驚くようにそんな声を上げ、または目を見開かせたりと…

 新しく、そして次々と色々な反応が飛び出てくる。

 

 「そして最後は、うさぎ跳びで…」

 「んっ!?う、うさぎ跳び…!?」


 物静かで、クール…

 少し怖い印象を受ける彼女の表情からは考えられない…

 嬉々として、そして楽しそうな反応の数々…

 それはもちろん、可愛らしさと愛らしさも兼ね備えた表情…

 まるでその姿は子供みたいで…

 日頃の彼女とのギャップも相まって、今の彼女の姿が俺としてはすごく面白かった。

 

 そしてそれは燎斗も同じみたいで…

 「くくっ…」

 横から、そんな笑い声が聞こえてきた。


 そしたらすぐに…

 「何…?」

 彼女から、戸惑いながらの質問が飛んでくる。

 

 それは、いきなりの燎斗からの笑い声に対して…

 そしてもしかすると…

 今俺も気づかないうちに笑顔を浮かべていて、それも含まれているのかもしれない。


 そして一瞬だけ燎斗を見てみると…

 燎斗は笑顔を浮かべているだけで、会話に入ってくる様子は見られなかった。

 だから俺は、日谷さんへ素直に…

 

 「笑顔が可愛いなーって…」

 

 ただ俺のその言葉には…

 楽しい気持ちが勝手に入り込んでか、少しだけ声が弾んでしまった。


 きっとそれを彼女はイジられた、そう勘違いしてしまって…

 少しだけ頬が赤くなった。

 それがますます面白くて、俺と燎斗からついつい笑い声がこぼれてしまった。

 

 そんな俺たちに対して…

 「何?」

 次は少しドスを利かしたような、彼女からの圧…

 ただどこからどう見ても、やっぱり彼女の頬は赤く…

 そして、強がっているようにしか見えなかった。

 

 だから俺はもう一度…

 次はちゃんとイジる気持ちで…

 「可愛いなーって…」


 その言葉を聞いた瞬間、彼女はさらにカッと赤くなってしまった。

 そしてその恥ずかしさを、どうにか誤魔化すためにか…

 「っるさい!!」

 彼女が、声を荒げてくる。

 

 ただ、その声は少しだけ震えてしまっていて…

 そんな彼女がやっぱり可愛らしかったからか…

 とうとう彼女の隣にいた清家さんまでもが、クスッと小さく笑った。


 その声に、ますます日谷さんは顔を赤らめ…

 恥ずかしさがどうしようもできなくなってしまったのか、プイッと顔を背けてしまった。


 ただその姿は、益々子供みたいで…

 そしてやっぱり可愛らしくて…

 

 だから日谷さんを除いた俺たちは三人で、またそんな彼女を笑ってしまった。

 

 そのせいで…

 しばらくの間彼女は、真っ赤な顔を背けたままだった。


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