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英語は英語でも

 ほんと短く感じる昼休みを終えた次の授業、それは英語だった。

 ただ英語は英語でも4時間目のお堅い英語とは違って、緩い…

 英会話要素を強く含んだ英語だ。


 先生はお堅い英語を受け持っている早乙女先生と同じ性別…

 ただこっちの授業の方は、緩くて優しい雰囲気を醸し出している先生だ。


 そしてそんな先生が受け持つ授業でも…

 いや、そんな授業だからこそか…

 今も俺の目の前にいる馬鹿な生徒は、夢の中にいる。


 きっと、バイトで疲れている。

 それは分かるんだけど、この頻度で寝ていて大丈夫かと心配になってくる。

 

 今は、もう4月が終わる頃…

 5月が近いから、お早い5月病なのかもしれない。

 でも、まだ4月なんだ。

 こんな初期から寝ていて、テストとかは大丈夫なんだろうか。

 まぁ、大丈夫じゃないだろうな。


 先生が英文の解説をしている中、俺はそんなことを考えていた。

 そして先生は、キリが良いとこまでの会話調の文章の解説を終えてから…


 「では皆さん…

 身近の人とペアになって、今進んだところまでを読み聞かせ合いをしてください。

 ただその時に、ただただ文字を読むのではなく、今読んでいるところがどういう意味なのかを頭で考えながら読んでみてください。」


 どうやら、英文の音読の読み合いをしないといけないらしい。

 正直、ちょっと嫌だ。

 だって、他の人に自分の発音を聞かれる。

 それは、かなり羞恥心がくすぐられる。

 普通に嫌だ。

 でもそれ以上に嫌…

 もっと言うと、めんどくさいことがある。

 

 それは…

 俺の目の前の席のやつ、そのアホはまだやっぱり寝ている。

 なのに身近の人でペアを組まないといけない。


 そして俺たちの隣にいる、日谷さんと清家さんは既に二人でペアを作る雰囲気だ。

 つまり、やっぱり俺のペアは半強制的にこいつしかいなさそうだ。

 だからまずは、こいつを起こすことから始めないといけない。


 めんどくさい…

 ほんとめんどくさい。

 はぁ…


 「燎斗~、起きろ~。」

 俺は後ろから揺さぶる。

 でも…

 「ん~…」

 彼からは、こんなうなり声しか聞こえてこない。

 本格的に眠ってしまっているようだ。


 はぁ…

 しょうがなく、俺は揺さぶり続ける。

 でもやっぱり、彼は起きなかった。


 そして俺がこんなことをしている間にも…

 他のところではどんどんと、お誘いとそれの了承の声が聞こえてくる。

 それは朱沢さんと柴田ところでも一緒みたいで…


 「師王、一緒に…」

 ただ彼女がここまで言葉にした、そのとき…

 柴田は後ろへと振り返ってから…

 「陽介、一緒にやらないか…?」

 平然と、朱沢さんじゃない別の人を誘った。


 「「えっ!?」」

 柴田に誘われた男子生徒…

 そして誘った朱沢さんから、戸惑いの声が漏れる。

 

 でも柴田は、そんなことを気にも留めずに…

 「いいか…?」

 声はいつも通り、表情も…

 ただ…

 断るな、そういう雰囲気が今の彼にあるような気がした。


 「お、おう。いいぜ。」

 戸惑いながら、そう返事する誘われた男子生徒…

 そしてその返事に、柴田はいつもの爽やかな笑顔で…

 「あぁ、よろしくな。」

 そう返事した。

 

 こうして柴田のところでは、男二人での組が作られた。

 だから朱沢さんも、自分の後ろの女子生徒と寂しそうにペアになった。


 俺はその光景に…

 珍し、何かあったのかな…

 少し勘ぐってしまう。

 それにさっきの昼休みにも、ほんと珍しく俺と燎斗のところに来た。

 だから俺の勘ぐりが、少し拍車をかけてしまいそうになる。

 

 ただまぁ…

 言いたくないし、思いたくもないが…

 おしどり夫婦みたいな二人…

 だから期待するだけ無駄だ、無駄なんだ。

 浮足立ってしまいそうになる自分の心を、俺は無理やり沈めた。


 そして、前に視線を戻すと…

 まだやっぱり、起きもしない目の前のアホ…

 どうしようかと思っていると、教壇にいる先生から…

 「皆さん、ちゃんとペア、組めましたか?」

 そんなアナウンスが飛んでくる。


 もう、タイムリミット…

 俺はしょうがない気持ちで手を挙げて…

 先生が俺のことを視線に入れたのち、俺は目の前の男を指さす。

 先生は俺の合図に気づいてくれたらしく、苦笑を浮かべてからこっちに向かってくる。


 そして先生は、寝ている燎斗の横に立ってから…

 「矢代君、矢代君…」

 優しい声とさすりで、燎斗を起こしにかかる。

 ただそれでも、燎斗が起きる気配はしない。


 先生は、困ったように首を小さく傾げた。

 

 燎斗が起きる術、何かないかな…

 そう考えていると、俺は今日あった出来事の中から一つのことが頭に浮かんだ。

 それは…


 「先生…、耳元で早乙女先生の名前を呟いてくれませんか?」

 「早乙女先生…?なんでです?」

 「なんとなくです。」


 表向きはそう言った。

 でも、全くなんとなくではない。

 その名前を出せば、燎斗がほぼほぼ起きるであろう確信が俺の中にはあった。

 だって、4時間目の授業で…


 「はぁ…」

 先生には俺の意図が伝わってないみたく、先生は?(はてな)の意味を込めたため息をこぼす。

 でも、ダメもとで試してみようと思ってくれたらしく…

 「あっ…、早乙女先生!」

 先生がそう耳元で囁くと…


 バッ…

 燎斗が、元気よく跳ね起きた。

 そして起き上がったと思ったら、首をガッガッと振って周囲を確認し始めた。


 その姿が面白かったからか、それとも早乙女先生効果がすごかったからか…

 先生はクスッと…

 そしてクラスのみんなは、燎斗に向かって声をあげて笑う。

 声が合わさって、けっこうな声量だ。


 そして周りの状態と、周囲からの笑い声で燎斗も何が起きたのか察したらしく…

 顔を歪めて、そして頬を少し赤らめた。

 横から見える燎斗の顔で、どう見ても恥ずかしいというのが伝わってくる。

 

 だから…

 ざまぁねぇわ…

 俺は心の中で、そんなことを思ってしまった。

 

 そして先生はというと…

 残酷なことに…

 「今度から、寝ている生徒に試してみようかしら…」

 嫌な学びを得てしまったみたいだ。


 俺は、やってしまったのかもしれない。


 先生のその発言で、急にクラスが静かに…

 特に男子生徒は、顔をしかめていた。

 だから…

 「ん?どうしたのかしら…?」

 急に静かになった教室に、先生はそんな疑問を持ったものの…

 みんなが声を閉ざしていて、すぐには答えに辿りつけそうにないと思ったのか…

 答えを諦めて、さっきまでいた教壇へと帰っていった。


 そして授業は再開され、クラスで音読が開始された。

 そんな中、まず燎斗から出た言葉は…

 「今から何すんの…?」

 これで…

 俺は、頭が痛かった。


 そして俺が音読を終えて、次は燎斗の番…

 

 俺に習って音読していく燎斗…

 ただすぐに止まっては…

 「これ、何て読むんだ…?」

 これを一節ごとに、繰り返した。


 もう、俺はほんとに頭が痛かった。

 

 だから心の中で…

 くそが!寝るなや!!!

 そう強く唱えた。

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